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Nature Video活用事例

エボラウイルスと人間社会との戦い

Ebola in a war zone

The Democratic Republic of the Congo is experiencing the second largest Ebola outbreak in history. But the humanitarian response has been mired by conflicts. Nature reporter Amy Maxmen was invited by WHO director general Dr Tedros Adhanom Ghebreyesus to visit Butembo in North Kivu and see the challenges for herself.

This story was supported by the Pulitzer Center on Crisis Reporting.

その他の Nature Video

Amy Maxmen(Nature誌リポーター)は、世界保健機関(WHO)事務局長Tedros Adhanom Ghebreyesusから、2019年のはじめにTwitterで連絡を受けた。それは、コンゴ民主共和国で発生しているエボラ出血熱の感染拡大をコントロールすることがいかに難しいか、自分の目で見て欲しい、ということだった。エボラ出血熱はエボラウイルスによって引き起こされる重篤な感染症である。

Maxmenは東コンゴへ飛び立ち、その状況をリポートしている。現地で目についたものは戦車と兵士だった。この地域は、数十年にわたって紛争が起こっており、政治的に不安定だ。このことが、エボラ出血熱の流行を収束できない理由でもある。

エボラ出血熱の先端治療

映像ではエボラ治療センターの外観が紹介されている。センター入口には土嚢の後ろに兵士が見える。エボラ治療センターがすでに2回襲撃され、全焼したことがあったためだ。しかし同時に、一部の人々にとっては兵士の存在を脅威に感じるかもしれない。

エボラ出血熱が恐れられている病気であることは事実だ。家族のだれかがエボラ出血熱と診断されると、白い不気味なタイベックスーツ(感染を防ぐためのポリエチレン製使い捨て防護服)を着た担当者がやってきて、家族の持ち物に塩素剤を振りかけて消毒していく。

人々に提供される医療は、以前の大発生時に比べると向上している。エボラ治療センターで患者は隔離されるが、透明なプラスチックの覆いのおかげで家族が中の様子を見ることができ、患者は外の様子を確かめることもできる。ここでは、すべての患者に点滴で輸液が行われるだけでなく、エボラ出血熱に対する治験薬を試すこともできる。これらの治験薬のうち2種類は、早い段階であれば90パーセントの患者に効果のあることが確認されている。

ほかの朗報といえば、今回の大流行ではじめて広範囲にエボラウイルスのワクチンが配備されたことだ。

近代医療を選ばない患者

こう説明すると、今頃は大流行が収束されたと思うかもしれないが、そうではない。それにはいくつかの理由がある。

ワクチン接種を広めている担当者は、希望しない人々に接種を受けさせることができないし、エボラ治療センターに来なければ、治験薬を入手することはできない。感染した患者はまず、宗教指導者のもとへ行ったり、民間療法に頼ったり、小さな薬局あるいはクリニックに出向いたりしてしまう。これらの施設はあちこちに数百件もある。

このような施設には「聖杯に巻きついたヘビ」のサインが掲げられていて、映像ではある医療施設の内部の写真が示されている。この女性は熱があり、ほかの患者と一緒に収容されている。別の写真に写っているのは、この施設で子どもの隣に母親が座っているものだ。医師は子どもがエボラ治療センターに行く必要があると考えているのだが、母親はそれを望んでいない。母親の身になれば、エボラ治療センターまでおよそ1時間かかり、子どもと離ればなれにされ、子どもを抱くことやそばにいることはできなくなってしまう。治療センターに行かないという理由は、愛情と心配から生じる不信感と抵抗であり、必ずしも紛争のせいではない。

映像では、エボラ・チェックポイントの写真も示されている。ここを通過するときは、体温を測らなければならない。もし熱があれば、チェックポイントを超えて移動することは許されない。このようなチェックポイントは大いに役立ったが完全なものではなく、エボラ出血熱は南に700キロメートル離れた北キヴ州の国際都市ゴマまで広がった。

四半世紀の間、世界はコンゴでの人道的危機を完全に無視してきた。このため、エボラ出血熱の大流行で2,000人以上が死に追いやられたのだ。私たちが引き続き無視し続けるとすれば、ウイルスの感染拡大を助長するだけだ。

学生との議論

Credit: Lisa-Blue/E+/Getty

エボラ出血熱のほか、人類にとって脅威となる感染症で代表的なものとして、マールブルグ病、ラッサ熱、南米出血熱、クリミア・コンゴ出血熱などがあげられる。これらのウイルスの研究を行うためには、周辺環境にウイルスが流出しないように厳重な管理がされていなければならない。一般に、微生物や病原体を扱う研究施設には、WHOが定めた「実験室生物安全指針」に基づいて設計された実験室が必要となり、その管理レベルは危険度に応じて4段階に区分されている。この区分をBSL(バイオセーフティーレベル)と呼び、日本では例えばインフルエンザウイルスはBSL-2、エボラウイルスについてはBSL-4の基準を満たした実験室で扱わなければならない。

日本で現在稼働しているBSL-4の実験施設が国立感染症研究所村山庁舎にある。2019年9月に上記の5種類のウイルスが輸入されている。一方で地域住民にはウイルス流出のリスクを心配する声もある。研究機関が安全性について地域住民の理解を得る取り組みは、いかなる研究を進める上でも重要であることが示唆される。

学生からのコメント

エボラ出血熱の現地での状況や具体的な治療などについてはほとんど知らなかった。また、罹患した人々が宗教的指導者のところへ行ったり民間医療に頼ったりする人が多いことを知り驚いた。現地の人々が、エボラ出血熱についてどのような認識をしているかを知りたいと思った。(加藤 遼)

エボラ出血熱の病気の治療法が思った以上に進んでいて、ワクチンも開発されていたことを知ったし、さらに患者に寄り添った医療が提供されていることも今回の映像ではじめて理解した。そんな中で紛争に巻き込まれて治療センターが襲撃される事実があることは、衝撃だった。(北原 亮佑)

Nature ダイジェスト で詳しく読む

日本が致死性ウイルスを輸入した理由
  • Nature ダイジェスト Vol. 17 No. 1 | doi : 10.1038/ndigest.2020.200122

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Nature ダイジェストISSN 2424-0702 (online) ISSN 2189-7778 (print)