Nature Video活用事例

光合成から物質合成を、葉の形から環境変化を学ぶ

二酸化炭素と水から糖(デンプン)を合成する植物の光合成のしくみをまねて、産業的な物質合成の新たな手法をもたらすと期待される「人工」光合成を紹介する。また、光合成を行う主要器官である葉の形を分類したデータベースが完成した。葉の形がどのような情報を秘めているのかを探ろう。

光合成をまねてみる

空気中から二酸化炭素を取り出すことができ、なにか役に立つものに変えられるとしたら、世界はどう変わるだろうか? 現在、科学者は、この問題となる気体を重要な化学物質へと効率的に変換できることを示している。大量の二酸化炭素が大気中に含まれており、化石燃料を燃やすことで年間300億トン以上の二酸化炭素が放出され、地球温暖化を引き起こす。

植物は、地球温暖化に一つの解決策を提示する。光合成は二酸化炭素を吸収し、日光を使って糖に変えるはたらきだ。そこで研究者は、人工的な光合成を開発するための研究を行ってきた。はじめのうちは光合成の鍵となる段階のそれぞれを再現していたが、現在ではこれらの段階を組み合わせ、一つのまとまったシステムをつくり上げることができるようになった。

ここでいう人工光合成のシステムは、バクテリアと太陽電池パネルを組み合わせたもので、私たちに役立つアルコールをつくり出す。太陽電池パネルは日光を電気に変え、電流は簡単な化学物質に分解するために使われる。化学的に安定な二酸化炭素と水の分子は、より活性のある一酸化炭素と水素に分解される。その後、これらの気体分子はバクテリアを含んだタンクに通される。バクテリアは、それらの化学物質を結びつけ、ブタノールとヘキサノールというアルコール類をつくりだす。

これらのアルコール類は飲むことはできないが、工業用溶剤から人工香料まで幅広く利用でき、燃料としても活用できる。それらのアルコールは二酸化炭素からつくられるので、化石燃料を燃やすよりもカーボンフットプリントはかなり低い。さらに、この人工光合成のタンク内のバクテリアの種類を変えることで、別の化学物質をつくり出すこともできる。

このことは、これらの化学物質を生産するための一般的な方法になりうることを意味する。二酸化炭素をより複雑な化学物質に変えるという光合成のしくみをまねて、私たちの生活に役立つ物質を生成する可能性があるのだ。

葉の形は多くを語る

植物にとってエネルギー源をつくり出す光合成は、おもに「葉」で行われており、植物にとって重要な器官である。植物分類学者にとって、葉の形は植物の種を同定する大きな手がかりだ。しかし、葉がもたらす情報はそれだけではないらしい。

同じ種の葉であってもその生育環境で形や大きさが違っているという。一般に植物は、水が豊富で低温な環境では鋸歯(葉の縁のぎざぎざ)をもった大きな葉になり、乾燥した温暖な環境では滑らかで小さな葉をもつ。そのため、その植物がどのような状況で育ってきたかを知るには最適なツールのひとつだ。世界中の75か所で観察された植物141科の葉182,000点の形状を記録したデータベースが2017年に完成した。

Dan Chitwood(アメリカ)らが構築した、このデータベースは、現在の植物の環境を知るためだけではなく、化石となった植物の形状から、その当時の気候を知ることにも活用できるのではないかと期待されている。地層が堆積した環境を推定するために活用できる化石を示相化石と呼ぶ。たとえば水温や塩分などの環境によって分布が制限されるプランクトンや、気温によって植生が制限される植物の花粉などがある。

このようなデータベースの公開は、多くの研究者による新しい研究テーマの発想をもたらし、さまざまな分野との融合による研究が進んでいくかもしれない。

Nature ダイジェスト で詳しく読む!

「葉の形」の巨大データベースが完成

Nature ダイジェスト Vol. 14 No. 10 | doi : 10.1038/ndigest.2017.171011

学生との議論

Lisa-Blue/E+/Getty

本文中に書かれている「カーボンフットプリント」という語が、環境問題の議論で話題になることがあるが、学生にはほとんど知られていないようだ。英・仏・独などの欧州、韓国やタイ、米国などでも、カーボンフットプリント制度の取り組みが行われている。

商品やサービスについて、原材料の調達から、生産、流通・販売、使用、そして廃棄・リサイクルの間に排出される温室効果ガスの排出量を二酸化炭素に換算したものが、カーボンフットプリントである。生産者から消費者まで商品やサービスに携わるすべての人々に、環境に対する取り組みを意識させる方法の一つとして注目されている。たとえば、食品のベーコン1パックあたりのカーボンフットプリントが示されている製品などがある。

このような表示は確かに諸費者の商品選択のきっかけになることが期待されているが、まだまだ普及していないことや、製品やサービスのカーボンフットプリントの算出が複雑であるなどの課題も抱えている。この制度を実のあるものにするには、消費者と産業界の両方の環境に対する意識の高まりが必要かもしれない。

学生からのコメント

齋藤 唯央

現在、植林活動が行われているが、人間が住む場所やそのほかの活動に利用する土地面積を考えれば、いずれ限界がくるのではないかと思っている。そのようなことを考えれば、人工光合成でカーボンフットプリントを低くすることは非常に効果的だと思う。(齋藤 唯央)

渡邊 航

光合成は植物の「専売特許」だと思っていた。人類は人工的な光合成を開発し、燃料として活用することができる物質を合成できるようになったという。いろいろな物質を思いどおりに合成することができるようになれば、植物の光合成よりもさらに進化したことになるのかもしれない。(渡邊 航)

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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