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アスガルドアーキア内部の秘密が明らかに

核を持つ動植物や真菌類の細胞(真核細胞と呼ばれる)は、進化の過程で、アーキアおよび細菌という2種類の微生物の細胞が融合することによって生まれた。この過程は「eukaryogenesis(真核生物発生)」と呼ばれる。それが厳密にどう起こったのかは、今なお謎に包まれている。これまでの研究で、アスガルド群に属するアーキアのDNA塩基配列が明らかにされ、アスガルドアーキアが、真核生物発生に関与したアーキアの近縁系統の最有力候補であることが分かった1。しかし、アスガルドアーキアは、実験室での培養が極めて困難であることが知られている。このほど、ウィーン大学(オーストリア)のThiago Rodrigues-Olivieraとチューリヒ工科大学(スイス・バーゼル)のFlorian Wollweberら2は、実験室での培養に成功した2例目となるアスガルドアーキアについて発表し、その内部構造の詳細をNature 2023年1月12日号の332ページで報告した。日本の研究チームによって最初に培養に成功したPrometheoarchaeum syntrophicum(プロメテオアーカエウム・シントロフィカム)というアスガルドアーキア3では、細胞内構造の確かな詳細について明らかになっていなかった。

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翻訳:小林盛方

Nature ダイジェスト Vol. 20 No. 4

DOI: 10.1038/ndigest.2023.230440

原文

Mysterious Asgard archaea microbes reveal their inner secrets
  • Nature (2023-01-12) | DOI: 10.1038/d41586-022-04450-5
  • Jan Löwe
  • MRC分子生物学研究所(英国ケンブリッジ)に所属

参考文献

  1. Spang, A. et al. Nature 521, 173–179 (2015).
  2. Rodrigues-Oliviera, T. et al. Nature 613, 332–339 (2023).
  3. Imachi, H. et al. Nature 577, 519–525 (2020).
  4. Baum, D. A. & Baum, B. BMC Biol. 12, 76 (2014).
  5. Spang, A. et al. PLoS Genet. 14, e1007080 (2018).
  6. Schwartz, R. M. & Dayhoff, M. O. Science 199, 395–403 (1978).
  7. Williams, T., Foster, P., Cox, C. & Embley, T. M. Nature 504, 231–236 (2013).
  8. Wagstaff, J. & Löwe, J. Nature Rev. Microbiol. 16, 187–201 (2018).
  9. MacLeod, F., Kindler, G. S., Wong, H. L., Chen, R. & Burns, B. P. AIMS Microbiol. 5, 48–61 (2019).
  10. Nickell, S., Kofler, C., Leis, A. P. & Baumeister, W. Nature Rev. Mol. Cell Biol. 7, 225–230 (2006).