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光触媒粒子の電荷移動が明らかに

太陽光を電気へと変換する太陽電池のように、太陽光を水素などの燃料に直接変換する実用的な技術が確立されれば、化石燃料への依 存からの脱却に大きく貢献するだろう。 Credit: YAORUSHENG/MOMENT/GETTY

化石燃料依存からの脱却において、再生可能エネルギー源は非常に重要である。中でも、光によって活性化される「光触媒」は、太陽エネルギーを化学エネルギーに変換して燃料分子の結合に蓄えられることから特に有望だ。この分野の進展には新たな光触媒材料の開発が必要だが、同様に重要なのが、光触媒粒子内で電荷がどのように生成され、どのように移動するかをよりよく理解することであり、それによって、太陽光を燃料へと変換するのに適した触媒粒子の調整が可能になる。ところが、電荷の生成・移動に関わる時間や長さのスケールは材料によって大きく異なるため、知見を得るのはこれまで困難だった。このたび、中国科学院のRuotian Chenら1は、単一の光触媒粒子において、励起電荷キャリアが移動する様子をフェムト秒(10−15秒)から秒の時間スケールで捉えることに成功し、Nature 2022年10月13日号296ページで報告した。これは、電荷移動の時空間的モニタリングにおける大きな進展であり、光触媒過程に関して詳細な情報をもたらすと期待される。

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翻訳:藤野正美

Nature ダイジェスト Vol. 20 No. 1

DOI: 10.1038/ndigest.2023.230136

原文

Charge transfer observed in light-activated catalyst particles
  • Nature (2022-10-13) | DOI: 10.1038/d41586-022-03178-6
  • Ulrich Aschauer
  • ベルン大学(スイス)に所属

参考文献

  1. Chen, R. et al. Nature 610, 296–301 (2022).
  2. Lewis, N. S. & Nocera, D. G. Proc. Natl Acad. Sci. USA 103, 15729–15735 (2006).
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