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原子干渉計で地下のトンネルを検出
論文の要点
- 重力の垂直方向の勾配(変化率)の精密な測定によって、地下の密度の不均一性を検出できる。
- バーミンガム大学(英国)のBen Strayらは、重力勾配の実用的な量子センサーを開発したことをNature 2022年2月24日号590ページで報告した1。このセンサーは原子干渉計を使い、重力勾配を素早く、高感度で測定できた。
- このセンサーは、都市部の2つの多層階建物の間の道路下にある、断面が正方形(一辺2m)の地下トンネルを検出できた。
量子センサーで地中を探る
Nicola Poli
天文学の観測は、電磁気信号と重力信号2を捉えることにより、私たちの頭上に何があるかについて幅広い知識をもたらしてくれた。天文学観測は、地球から10億km離れた天体が発する信号も捉えている。しかし、私たちは、自分たちの足の下に何があるかについては、天体と同じくらい詳細な知識を持っていない。たとえ地面の数m下でさえよく分からない。地球物理学的なモニタリング技術はいくつか存在するが、多くの場合、地面の下の小さな特徴について知るには、いまだに掘ってみることが最も良い方法だ。しかし、量子センサーは、古典的な地球物理学センサーの実用的な代替として注目されつつある。
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翻訳:新庄直樹
Nature ダイジェスト Vol. 19 No. 5
DOI: 10.1038/ndigest.2022.220534
原文
Atomic changes can map subterranean structures- Nature (2022-02-24) | DOI: 10.1038/d41586-022-00464-1
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Nicola Poliはフィレンツェ大学および欧州非線形分光学研究所 (いずれもイタリア・セストフィオレンティーノ)に所属。
Roman Paštekaはコメニウス大学(スロバキア・ブラチスラバ)に所属。
Pavol Zahorecはスロバキア科学アカデミー地球科学研究所(スロバキア・バンスカービストリツァ)に所属。
参考文献
- Stray, B. et al. Nature 602, 590–594 (2022).
- Abbott, B. P. et al. Phys. Rev. Lett. 116, 061102 (2016).
- Kasevich, M. & Chu, S. Phys. Rev. Lett. 67, 181–184 (1991).
- Bongs, K. et al. Nature Rev. Phys. 1, 731–739 (2019).
- Wu, X. et al. Sci. Adv. 5, eaax0800 (2019).
- Asenbaum, P. et al. Phys. Rev. Lett. 118, 183602 (2017).
- Howarth, R. Earth Sci. Hist. 26, 201–228 (2007).
- Tino, G. M. et al. Eur. Phys. J. D 73, 228 (2019).
- Boddice, D., Metje, N. & Tuckwell, G. J. Appl. Geophys. 146, 149–159 (2017).
- Zahorec, P., Papčo, J.,Mikolaj, M., Pašteka, R. & Szalaiová, R. First Break 32, 65–71 (2014).
- Pašteka, R. et al. Archaeol. Prospect 27, 415–431 (2020).