アドレナリンがサイトカインストームを促進する
最近開発された強力ながん治療法の多くは、腫瘍を標的とする免疫応答を利用している1。しかし、こうした免疫療法では、サイトカインストーム2,3と呼ばれる重篤な炎症応答が引き起こされるという問題がある。この応答では、サイトカインと呼ばれるタンパク質のレベルが異常に高くなり、その結果、発熱、低血圧、心臓の障害が引き起こされ、一部の症例では臓器不全や死亡につながる。従って、抗がん治療の効果を保ちつつサイトカインストームを防ぐ方法を開発するために、サイトカインストームを引き起こす機構を理解することに大きな関心が集まっている。このほどジョンズホプキンス大学(米国メリーランド州ボルティモア)のVerena Staedtkeらは、サイトカインストームを、心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)と呼ばれるホルモンによって阻止できること、また、アドレナリン(別名エピネフリン)などのカテコールアミンと総称されるホルモンを作り出す免疫細胞にはカテコールアミンやサイトカインの自己増幅的な産生ループが存在していて、このカテコールアミン産生がサイトカインストームの開始や維持を助けていることをを明らかにし、Nature 2018年12月13日号273ページに報告した4。
全文を読むには購読する必要があります。既に購読されている方は下記よりログインしてください。
本サービスでは、サイトご利用時の利便性を向上させるためにCookiesを使用しています。詳しくは、シュプリンガーネイチャー・ジャパン株式会社の「プライバシー規約」をご覧下さい。
翻訳:三谷祐貴子
Nature ダイジェスト Vol. 16 No. 3
DOI: 10.1038/ndigest.2019.190333
原文
Adrenaline fuels a cytokine storm during immunotherapy- Nature (2018-12-13) | DOI: 10.1038/d41586-018-07581-w
- Stanley R. Riddell
- Stanley R. Riddellは、フレッド・ハッチンソンがん研究センター (米国ワシントン州シアトル)に所属。
参考文献
- Rosenberg, S. A. Nature 411, 380–384 (2001).
- Gangadhar, T. C. & Vonderheide, R. H. Nature Rev. Clin. Oncol. 11, 91–99 (2014).
- Hay, K. A. et al. Blood 130, 2295–2306 (2017).
- Staedtke, V. et al. Nature 564, 273–277 (2018).
- Medzhitov, R. Nature 454, 428–435 (2008).
- Roberts, N. J. et al. Sci. Transl. Med. 6, 249ra111 (2014).
- Flierl, M. A. et al. Nature 449, 721–725 (2007).
- Bergquist, J., Tarkowski, A., Ekman, R. & Ewing, A. Proc. Natl Acad. Sci. USA 91, 12912–12916 (1994).
- Chatenoud, L. et al. Transplantation 49, 697–702 (1990).
- Sadelain, M., Riviere, I. & Riddell, S. Nature 545, 423–431 (2017).
- Ladetzki-Baehs, K. et al. Endocrinology 148, 332–336 (2007).
- Norelli, M. et al. Nature Med. 24, 739–748 (2018).
- Giavridis, T. et al. Nature Med. 24, 731–738 (2018).
- Kammertoens, T. et al. Nature 545, 98–102 (2017).