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太陽系外から来た初めての塵?

Nature ダイジェスト Vol. 11 No. 10 | doi : 10.1038/ndigest.2014.141002

原文:Nature (2014-08-14) | doi: 10.1038/nature.2014.15720 | First dust grains from outside the Solar System

Nicole Skinner

NASAの探査機が捕らえた微粒子サンプルに星間塵候補粒子が含まれていたことが、市民科学プロジェクトで明らかになった。

NASA/JPL-CALTECH

2006年1月、米航空宇宙局(NASA)の探査機「スターダスト」が7年間に及ぶミッションで採取した惑星間や彗星周辺の微粒子サンプルが、カプセルに収められて無事地球に帰還した。この貴重なサンプルは、その後8年間の歳月をかけ、総勢65人の科学者チームを中心に世界中の市民科学者たちの手で調べられ、そのうち7個が太陽系外由来の星間塵である可能性が判明した。これが確認されれば、地球に初めて星間塵がもたらされたことになる。

星間塵は太陽系内に絶えず流れ込んできているが、その量は非常に少なく、まばらにしか存在しないため、塵粒子の捕捉は決して容易ではない。そのため、星間塵に関する我々の知識はこれまで、星間物質による光の散乱・吸収スペクトルの分析という間接的な手段に頼るしかなく、個々の星間塵粒子の性質に関する情報までは得ることができなかった。

ところが今回、スターダストの採取装置(超軽量材料であるエアロゲル製のタイルが並んだもの)に残された微小な塵粒子衝突痕という直接的なサンプルが調べられ、その成果が2014年8月15日、Scienceに掲載された1。またその翌週には、Meteoritics & Planetary Scienceに12編の論文が掲載された。

史上初の快挙

カリフォルニア大学バークレー校(米国)の物理学者でScience掲載論文の筆頭著者であるAndrew Westphalは、「それまで誰も目にしたことがない星間塵を見つけて、それを太陽系内の惑星間塵と区別するのは困難でした」と言う。ただ、太陽圏という、太陽風の影響が及ぶ領域を星間塵粒子がどういった軌道で進むかは予想できたという。つまり研究者たちは、宇宙の特定の方向からやって来る塵粒子を探していたのだ。

7個の星間塵候補粒子のうち、直径2µm前後と比較的大きい3個はスターダストの採取装置のエアロゲルタイル上で見つかった。残りの4個は直径が0.1µm台と小さく、タイル同士をつなぐアルミホイル中で見つかった。未調査のタイルはまだ半分近く残っているが、Westphalは最終的な候補粒子の数が12個を超えることはないだろうと推測する。

星間塵候補粒子のうちの2個については2010年の学会で存在が明かされていたが(Nature 2010年3月3日オンライン記事 doi: 10.1038/news.2010.106参照)、研究チームがこれらの分析結果を論文として発表したのは今回が初めてだ。

ワシントン大学(米国シアトル)の天文学者でスターダスト・ミッションの主任研究者であるDon Brownleeによると、ミッションチームの面々はこの結果に大満足だという。「星間塵の捕捉はこれまで一度も成功していないので、エアロゲルタイルやアルミホイルを使った採取方法でうまくいくのかどうかも分からなかったのです」。

分析の結果、7個の星間塵候補粒子の全てが、構造の点でも組成の点でも互いに異なっていることが判明した。「当初の予想よりはるかに価値の高い多様な粒子を採取できたことが明らかになり、とてもうれしいです」とWestphalは言う。

大当たり

今回の発見が重大なブレイクスルーになるかもしれないと考える天文学者は少なくない。シカゴ大学(米国イリノイ州)の天文学者Priscilla Frischもその1人だ。「今回の結果を考慮に入れて、塵粒子モデルを改良する必要があります」と彼女は言う。「星間塵粒子は、微視的表面の物理現象を研究するための宇宙実験室と見なすことができるだけでなく、その分析結果は、星間塵の帯電や、これによる放射の散乱を評価するための現実的な基礎となるでしょう」。

今回のプロジェクトでは、3万714人のボランティアが非常に重要な役割を果たした。Stardust@homeは最も初期のオンライン市民科学イニシアチブであり、参加者たちは、エアロゲルの拡大画像を計1億枚以上も見て、星間塵による微小な衝突痕を探したのだ。

英国バッキンガムシャーに住むNaomi Wordsworthは、BBC放送でプロジェクトの広告を目にし参加を決意した。4年間の活動の末に自分が星間塵候補粒子の発見者だと連絡を受けた時は、「まるで宝くじに当選したような気分」だったという。発見の褒賞として名前を選ぶ権利を獲得した彼女は、実家の屋号にちなんでこの粒子を「ハイラブルック」と名付けた。

次の重要なステップは、質量分析法で塵粒子の酸素同位体比を測定し、今回得られた予備的な結果を確認することだ。しかし、サンプル数が極めて少なく貴重なため、取り扱いには細心の注意が必要になってくる。「これから3年ほどかけて技術を磨き上げる予定です」とWestphalは言う。

(翻訳:三枝小夜子、要約:編集部)

編集部註:探査機スターダストは、当該ミッション終了後も2007年より彗星探査の延長ミッションを遂行、2011年3月に残存推進剤の最終噴射を行い、その運用を終了した。

参考文献

  1. Westphal, A. J. et al. Science 345, 786-791(2014).

キーワード

Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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