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Nature Ecology & Evolution に掲載された一次研究論文(Articles および Letters)について、その概要を日本語で紹介しています。

2018年8月

  • Perspective: タックスヘイブンと世界の環境悪化

    Tax havens and global environmental degradation

    doi: 10.1038/s41559-018-0497-3

    世界の漁業とブラジル・アマゾンの解析結果から、タックスヘイブンを介した資金の流れと環境悪化との関連性が詳細に示された。

  • Review Article: 左右相称動物の口と肛門の進化

    Evolution of the bilaterian mouth and anus

    doi: 10.1038/s41559-018-0641-0

    左右相称動物の口と肛門は、開口部が1つの単純な腸から進化した。今回、いくつかの動物の比較解析データが再検討され、単一の開口部が口と肛門の両方に進化した(amphistomy〔両口型〕)可能性が高いという結論が得られた。

  • Brief Communication: 促進作用の進化には多様性のある群落が必要である

    Evolution of facilitation requires diverse communities

    doi: 10.1038/s41559-018-0623-2

    多様性の高い植物群落では時間経過に伴って生産力の増大が見られる。今回、促進的相互作用に対する進化的選択は複数種からなる混合系でしか起こらないが、競争緩和に対する選択は単一種の系でも混合系でも起こることが明らかになった。

  • Article: 新属新種のCaelestiventus hanseniの化石により砂漠に生息した翼竜の記録が6500万年さかのぼった

    Caelestiventus hanseni gen. et sp. nov. extends the desert-dwelling pterosaur record back 65 million years

    doi: 10.1038/s41559-018-0627-y

    後期三畳紀の新種の翼竜Caelestiventus hanseniの年代は、砂漠に生息した翼竜のこれまでの記録より6500万年古く、このことから、翼竜類がその進化の初期時点から地理的に広く分布し、過酷な環境に生息できたことが分かる。

  • Article: 生態学的データの対数目盛表示は誤った解釈を招きかねない

    Logarithmic scales in ecological data presentation may cause misinterpretation

    doi: 10.1038/s41559-018-0610-7

    生態学的データの表示には対数目盛が使われることが多いが、そのように表示されたデータがどの程度理解されているのかは不明である。今回、米国生態学会の会員を対象に調査したところ、両対数軸で示されたデータを正しく解釈したのは回答者のわずか56%だった。

  • Article: 頻度依存的フィードバックが植物群落の種の共存を制約する

    Frequency-dependent feedback constrains plant community coexistence

    doi: 10.1038/s41559-018-0622-3

    植物–土壌フィードバックの一般化されたモデルに基づく枠組みを描くことにより、植物群落全体の存続には負の頻度依存的フィードバックが必要であることが示され、種の共存に必要なフィードバックの強度に関する定量的な数値が確認された。

  • Article: 植物–送粉者ネットワークおよび寄主–捕食寄生者ネットワークの構造と安定性に生息地分断が与えた過去の影響と今後見込まれる影響

    Past and potential future effects of habitat fragmentation on structure and stability of plant–pollinator and host–parasitoid networks

    doi: 10.1038/s41559-018-0631-2

    石灰質草原の植物–送粉者ネットワークと寄主–捕食寄生者ネットワークの両方に関して構造の分析が行われ、異なる種類のネットワークの構造と安定性に関して生息地分断に対する規模依存的な応答が明らかになった。

  • Article: チョウとその寄主植物の間の草食性に関する分子遺伝学的基盤 OPEN

    The molecular genetic basis of herbivory between butterflies and their host plants

    doi: 10.1038/s41559-018-0629-9

    寄主植物シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)と草食性昆虫モンシロチョウ(Pieris rapae)の両方の観点から行った並行的な全ゲノム関連解析に、多様なチョウ/植物系の比較解析を組み合わせることにより、草食性に関与するコア遺伝子が同定された。

  • Article: 衛星で観測された生態系規模の植物貯水量と葉のフェノロジーとの連動

    Coupling of ecosystem-scale plant water storage and leaf phenology observed by satellite

    doi: 10.1038/s41559-018-0630-3

    L-VOD(低周波での植生の光学的深さ)センシングにより、生態系規模の植物貯水量の全球的季節変動パターン、およびそれと葉のフェノロジーとの関係が明らかになったが、その結果は熱帯と温帯–北方帯とで異なっていた。

  • Article: 熱帯樹木における気候に敏感でサイズに依存する生存率

    Climate sensitive size-dependent survival in tropical trees

    doi: 10.1038/s41559-018-0626-z

    1,781種の計200万本の樹木のデータから、熱帯林が4つのサイズ依存的生活史生存様式に分類できることが明らかになり、それを個体群統計学的シミュレーションに用いることでバイオマスの変化が予測された。

  • Article: まだら状の野外サンプリングは北極圏全体への気候変動の影響に関する理解を偏らせる

    Patchy field sampling biases understanding of climate change impacts across the Arctic

    doi: 10.1038/s41559-018-0612-5

    北極圏の陸地で行われた1,800件を超える野外調査のデータベースを解析したところ、サンプリングに大きな空間的偏りが見つかり、全引用の3分の1近くは2つの調査基地から50 km以内の調査地点に由来するものであることが分かった。

  • Article: アフリカ東部における口蹄疫流行の波は先を見越したワクチン接種という手法の実行可能性を示唆する

    Waves of endemic foot-and-mouth disease in eastern Africa suggest feasibility of proactive vaccination approaches

    doi: 10.1038/s41559-018-0636-x

    タンザニアの家畜およびスイギュウ個体群の口蹄疫に関する研究から、この地域の畜牛の群れに広がる口蹄疫流行の波と、農村社会への経済的影響が明らかになった。そうした影響は、的を絞ったワクチン接種によって緩和できるかもしれない。

  • Article: 地質時代を通じた細菌の多様化

    Bacterial diversification through geological time

    doi: 10.1038/s41559-018-0625-0

    細菌の多様性の動態を系統発生から再構築することにより、現生の細菌系統は約140万~190万あると見積もられた。また、多様性は過去10億年にわたって持続的に増大してきたが、これまで地球上に生息した細菌系統の大半が現在は絶滅していると推定された。

  • Article: 遺伝子交換が多宿主性病原菌の生態学的繁栄を助長する

    Gene exchange drives the ecological success of a multi-host bacterial pathogen

    doi: 10.1038/s41559-018-0617-0

    黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)に関して、宿主動物種の幅広い多様性に対応する800株以上の分離株の集団ゲノミクス解析が行われ、動物の家畜化や抗生物質の使用によってどのような影響を受けたかなど、この病原菌の進化の軌跡が詳細に明らかになった。

  • Article: アカギツネのゲノムアセンブリーで従順および攻撃的な行動と関連するゲノム領域が特定された OPEN

    Red fox genome assembly identifies genomic regions associated with tame and aggressive behaviours

    doi: 10.1038/s41559-018-0611-6

    長期の選択的な繁殖プログラムによって、異なる行動を示すアカギツネ(Vulpes vulpes)の系統が作り出されている。今回、従順な系統と攻撃的な系統のゲノム塩基配列が解析され、行動の選択に対応した遺伝子領域が明らかになった。

  • Article: 鳥類と哺乳類における脳–体アロメトリーの崩壊と大脳化

    Breakdown of brain–body allometry and the encephalization of birds and mammals

    doi: 10.1038/s41559-018-0632-1

    4,500種以上の計2万点を超える有顎脊椎動物標本を分析することにより、脳–体アロメトリーの例外的なパターンが鳥類と哺乳類に見いだされた。このことは、鳥類と哺乳類では他の有顎脊椎動物と比較してアロメトリー的な制約が緩和されているという仮説と一致する。

  • Article: アスピディンの性質と骨の進化的起源

    The nature of aspidin and the evolutionary origin of bone

    doi: 10.1038/s41559-018-0624-1

    最も原始的な骨様組織アスピディンの性質に関しては議論が多い。今回、アスピディンが非細胞性の皮骨であることが明らかにされ、初期の脊椎動物があらゆる種類の骨格組織を有していたことが示唆された。

  • Article: ショウジョウバエの性的二型性の進化中に見られる性特異的適応の停止

    Arrest of sex-specific adaptation during the evolution of sexual dimorphism in Drosophila

    doi: 10.1038/s41559-018-0613-4

    雌雄で一致しない選択(sex-discordant selection)では、それぞれの性で異なるアレルが有利となるため、座位内の性的対立が生じる。今回、ショウジョウバエ(Drosophila)において、座位内の性的対立のために、体サイズの二型性(雌雄間で相関が強い形質の1つ)の進化が何世代にもわたって停止したことが明らかになった。

2018年8月

  • Perspective: 生物多様性データを公表するリスクとメリットを評価するための決定木

    A decision tree for assessing the risks and benefits of publishing biodiversity data

    doi: 10.1038/s41559-018-0608-1

    種の個体数と分布に関する情報は、保全政策の立案と変化の評価に不可欠である。しかし、データを公開すると営利のために利用される可能性が高まる。このPerspective論文では、生物多様性データを一般に公開するリスクとメリットを評価するための意思決定の枠組みを提示する。

  • Brief Communication: ミステイクン・ポイントのエディアカラ生物群にとっての高さの効用

    The utility of height for the Ediacaran organisms of Mistaken Point

    doi: 10.1038/s41559-018-0591-6

    ミステイクン・ポイント(カナダ・ニューファンドランド島)のエディアカラ化石産地では、資源をめぐる競争によってではなく分散によって標本生物の高さが増していったことが、空間解析で明らかになった。

  • Brief Communication: 噴出するCO2は農業を営むスズメダイ科魚類の作物生産の利益を増大させる

    CO2 emissions boost the benefits of crop production by farming damselfish

    doi: 10.1038/s41559-018-0607-2

    スズメダイ科魚類(クマノミ亜科を除く)は、藻類の生息する場所で除草やなわばり防衛、施肥を行うことにより「農業」を営んでいる。今回、一部のスズメダイ科魚類の個体群が、自然に噴出するCO2を利用して作物の生産性を高め、個体数を増加させていることが分かった。

  • Article: 三畳紀の竜脚形類恐竜には巨大化に向かう初期の傾向が見られる

    An early trend towards gigantism in Triassic sauropodomorph dinosaurs

    doi: 10.1038/s41559-018-0599-y

    アルゼンチンで見つかった後期三畳紀の新種の竜脚形類恐竜Ingentia primaと新たなレッセムサウルス類化石から、最初の真竜脚類が出現する3000万年前に、巨大化へ向かう特徴的な初期経路が現れたことが明らかになった。

  • Article: アンデス–アマゾン回廊地帯におけるコロンブス到来後の先住民人口減少の生態学的影響

    Ecological consequences of post-Columbian indigenous depopulation in the Andean–Amazonian corridor

    doi: 10.1038/s41559-018-0602-7

    古環境解析によってアンデス–アマゾン回廊地帯の生態学的歴史が明らかになった。それによると、欧州人の入植が先住民の人口減少や土地利用の衰退、森林の遷移を招き、19世紀にはこの地域が手付かずの自然環境だと見なされるまでになったという。

  • Article: ランダムな生態系での多種共存

    Coexistence of many species in random ecosystems

    doi: 10.1038/s41559-018-0603-6

    ランダムに相互作用する種のモデルを解析することにより、ネットワーク構造の影響がほとんどない場合でも、安定で生物学的に多様な群集が生じ得ることが明らかになった。

  • Article: 全球海洋にわたる非優占プランクトンの普遍的な個体数分布

    Ubiquitous abundance distribution of non-dominant plankton across the global ocean

    doi: 10.1038/s41559-018-0587-2

    科学探査船タラ号による海洋探査のデータを解析した結果、非優占海洋真核微生物の個体数分布はべき乗則的な減衰を特徴とし、その指数の変動は全球海洋で10%に満たないことが分かった。

  • Article: カリフォルニアシオダマリミジンコの複数個体群でのミトコンドリア–核共進化を示すゲノムのシグネチャー OPEN

    Genomic signatures of mitonuclear coevolution across populations of Tigriopus californicus

    doi: 10.1038/s41559-018-0588-1

    カリフォルニアシオダマリミジンコ(Tigriopus californicus)の8個体群の比較ゲノム解析の結果、mtDNAの極端な分岐や急速なタンパク質進化が明らかになっただけでなく、mtDNAとの相互作用が予測される遺伝子に対する正の選択も明らかになり、ミトコンドリア–核の共進化が示唆された。

  • Article: 異なる気候環境に生息する鳥類系統におけるミトコンドリアゲノムとミトコンドリア–核遺伝子クラスターの調和的分岐

    Concordant divergence of mitogenomes and a mitonuclear gene cluster in bird lineages inhabiting different climates

    doi: 10.1038/s41559-018-0606-3

    ミトコンドリア–核相互作用は個体群の分岐を促進する場合がある。今回、鳴禽類で、ミトコンドリア遺伝子と相互作用する核遺伝子が過剰に認められる領域に、ゲノム分化のクラスターと選択のシグネチャーが見つかった。

  • Article: 野生のガから家畜であるカイコへの進化の道筋

    The evolutionary road from wild moth to domestic silkworm

    doi: 10.1038/s41559-018-0593-4

    カイコ137系統の遺伝学的塩基配列解読により、カイコの家畜化の歴史が再構築され、絹糸の生成および概日リズムに関与する重要な遺伝子とともに、育種形質に関係すると考えられる遺伝子が見つかった。

  • Article: 多重ヌクレオチド変異は系統特異的な正の選択の推測を誤らせる

    Multinucleotide mutations cause false inferences of lineage-specific positive selection

    doi: 10.1038/s41559-018-0584-5

    正の選択を受けている遺伝子の同定には、分岐部位検定法(branch-site test)が広く利用されている。今回、この検定法を用いた場合に多重ヌクレオチド変異が正の選択に関する誤ったシグネチャーの原因となり得ることが明らかになり、この問題を改善するモデルが開発された。

  • Article: 形態的新奇性は既存の表現型可塑性から生じる

    Morphological novelty emerges from pre-existing phenotypic plasticity

    doi: 10.1038/s41559-018-0601-8

    表現型可塑性は新奇性の創出に関わっている可能性がある。今回、トウブスキアシガエル類において、新たなニッチへの侵入を可能にした肉食型オタマジャクシの進化につながる表現型可塑性の選択を裏付ける証拠が得られた。

  • Article: 高温ストレスに応じた動物社会の社会的転換点

    Social tipping points in animal societies in response to heat stress

    doi: 10.1038/s41559-018-0592-5

    動物社会において行動がどのように社会の状態を変化させ得るのかに関するモデルが、社会性のクモで検証された。集団がそうした状態変化から元に戻る時期と能力は、コロニーサイズとパーソナリティー構成によって決まる。

  • Article: 個体が経験した刺激と継代的な刺激は表現型および分子のレベルで非相加的である

    Personal and transgenerational cues are nonadditive at the phenotypic and molecular level

    doi: 10.1038/s41559-018-0605-4

    イトヨ稚魚での実験的研究の結果、単一クラッチ由来の稚魚は、捕食リスクの情報が父親からの刺激によって伝えられた場合でも、それが個体の経験である場合でも、その情報に対して表現型および分子のレベルで同一の反応を示すことが明らかになった。

  • Article: 異種混合群集において薬物が介在する抗生物質耐性状態間の代謝的転換

    Drug-mediated metabolic tipping between antibiotic resistant states in a mixed-species community

    doi: 10.1038/s41559-018-0582-7

    単一種の抗生物質用量反応関係から多種群集の動態を予測するのは困難だが、その理由は、投与を停止しても持続する非可逆的な耐性変化を引き起こす転換点を予見することができないためである。

  • Article: バクテリオファージの酵素は細菌の代謝摂動を誘導して基質特異性の低い新たな機能をもたらす

    A bacteriophage enzyme induces bacterial metabolic perturbation that confers a novel promiscuous function

    doi: 10.1038/s41559-018-0568-5

    バクテリオファージの遺伝子がコードする酵素S-アデノシルメチオニン(SAM)ヒドロラーゼは、イソロイシン欠損大腸菌においてSAMレベルを低下させることで、基質特異性の低い大腸菌酵素MetBの抑制を解除して菌を救済することが、スクリーニングで明らかになった。

2018年7月

  • Perspective: カリフォルニアシオダマリミジンコの複数個体群でのミトコンドリア–核共進化を示すゲノムのシグネチャー

    Human activities might influence oncogenic processes in wild animal populations

    doi: 10.1038/s41559-018-0558-7

    環境因子はヒトのがん発生率に影響を与える。著者らは、環境の人為的撹乱も同様に、さまざまなメカニズムによって野生動物個体群のがんの原因になり得ると論じている。

  • Brief Communication: 生物多様性を低下させる要因に関する政策と研究の全球的ミスマッチ

    Global mismatch of policy and research on drivers of biodiversity loss

    doi: 10.1038/s41559-018-0563-x

    世界全体の生物多様性低下に関する過去10年間の研究を総合して得られたエビデンスマップから、予測される深刻さや影響と研究の焦点が合致していないことや、研究と政策の再調整が必要なことが示唆された。

  • Brief Communication: 高温で誘発された白化に対するサンゴの復元力を局所的管理活動によって高めることができる

    Local management actions can increase coral resilience to thermally-induced bleaching

    doi: 10.1038/s41559-018-0589-0

    カリブ海のサンゴからサンゴ食巻き貝を除去する実験が行われ、こうした局所的管理活動が白化の重症度と白化後の組織の死滅率を低下させて、深刻な温暖化に対するサンゴの復元力を向上させられることが明らかになった。

  • Article: アフリカ南部のオルドバイ–アシュール文化期の古生態学的背景

    The palaeoecological context of the Oldowan–Acheulean in southern Africa

    doi: 10.1038/s41559-018-0560-0

    ワンダーウェーク洞窟の多重代理指標データから、前期更新世のアフリカ南部では、C3草本およびC4草本と長期にわたる湿地がヒト族古環境の主要な構成要素となっており、同時期のアフリカ東部とは地域的傾向が異なっていたことが明らかになった。

  • Article: 最終間氷期のネアンデルタール人による近距離狩猟の証拠

    Evidence for close-range hunting by last interglacial Neanderthals

    doi: 10.1038/s41559-018-0596-1

    考古学的条痕のモデリング実験により、ノイマルク・ノルト遺跡(ドイツ)で出土した12万年前のシカ骨格にある傷が、近距離からネアンデルタール人が突き刺した槍によって付けられたものであることが示唆された。

  • Article: 野生個体群における遺伝率と選択の環境的連結はまれであって進化的にはあまり重要ではない

    Environmental coupling of heritability and selection is rare and of minor evolutionary significance in wild populations

    doi: 10.1038/s41559-018-0577-4

    環境変化は遺伝率と選択の両方に影響を及ぼすが、この両者がどのように共変化するのかはよく分かっていない。オープンリポジトリーの多重分類群データセットを収集した研究からは、野生個体群の中で遺伝率と選択の連結を示す証拠がわずかしか見つからなかった。

  • Article: 新熱帯区森林の遷移および降雨量の勾配に沿ったマメ科植物の数度

    Legume abundance along successional and rainfall gradients in Neotropical forests

    doi: 10.1038/s41559-018-0559-6

    新熱帯区森林の42地点の時系列的なデータから、湿潤林よりも季節性乾燥林の方がマメ科植物の数度が高く、これは二次遷移の初期に特に顕著であることが明らかになった。おそらくこれは、マメ科植物の窒素固定能と小葉の小型化によるものと考えられる。

  • Article: 鳥類種共存のマクロ生態学的な動態

    The macroecological dynamics of species coexistence in birds

    doi: 10.1038/s41559-018-0572-9

    鳥類種ペア1,115組の生息域の重なりに関する系統、形態および環境のデータを組み合わせることにより、種の共存は、分散集合とニッチ集合の両過程を統合するモデルによって最もよく説明できることが示された。

  • Article: 鳥類の種分化における生態形質分岐の速度とタイミング

    Tempo and timing of ecological trait divergence in bird speciation

    doi: 10.1038/s41559-018-0570-y

    生物多様性は徐々に発達するのか、それとも種分化に伴って爆発的に発達するのかは明らかになっていない。今回、鳥類の形質分岐パターンが漸進的ではないことや、初期の突発的な形質分岐がその後の同所性への移行を促進することが分かった。

  • Article: 適応放散において新たなニッチへの急速なゲノム適応が起こることを裏付ける実験的証拠

    Experimental evidence for rapid genomic adaptation to a new niche in an adaptive radiation

    doi: 10.1038/s41559-018-0581-8

    新たなニッチへの適応は遺伝的多様性の低下をもたらし、また、派生的個体群が新たな環境に適応する能力については不明である。今回、イトヨの適応放散において、派生的生態型でゲノムの急速な適応的変化が起こっていることが明らかになった。

  • Article: ウシ属種複合体では広範な移入交雑が家畜化と適応を促進した

    Pervasive introgression facilitated domestication and adaptation in the Bos species complex

    doi: 10.1038/s41559-018-0562-y

    ウシ属(Bos)種のゲノム塩基配列を解読して比較することにより、その系統発生と進化史が明らかになり、家畜化の選択下における遺伝子の移入交雑経路が特定された。

  • Article: 英国のバングラデシュ系移民男性の唾液中テストステロン値、思春期および身長には小児期の環境が影響している

    Childhood ecology influences salivary testosterone, pubertal age and stature of Bangladeshi UK migrant men

    doi: 10.1038/s41559-018-0567-6

    小児期または成人期に英国へ移住したバングラデシュ人男性と、欧州系の英国人男性を比較した研究から、男性の生殖機能は民族的起源と無関係であるが、小児期の後期に入るまでは可塑的であり、小児期初期の環境条件に影響を受けることが明らかになった。

  • Article: 洞窟魚の眼の退化に関わるエピジェネティックな機構

    An epigenetic mechanism for cavefish eye degeneration

    doi: 10.1038/s41559-018-0569-4

    眼の消失は、メキシカンテトラ(Astyanax mexicanus)の盲目の洞窟型など、洞窟に適応した動物によく見られる特徴である。今回、メキシカンテトラの地上型(眼がある)および洞窟型とゼブラフィッシュの並行解析から、DNAのメチル化が眼に特異的な遺伝子の抑制に関わっており、眼の初期発生を包括的に調節していることが示された。

  • Article: 分業と極度の専門化の進化

    Division of labour and the evolution of extreme specialization

    doi: 10.1038/s41559-018-0564-9

    微生物から動物まで、社会的集団には分業がよく見られる。今回、自然選択は極度の専門化に有利に働くことが明らかになり、分業が大きな進化的移行を促進する可能性が示唆された。

  • Article: 同型配偶子で生殖する種では条件的な有性生殖の比率が交配型の数を左右する

    The rate of facultative sex governs the number of expected mating types in isogamous species

    doi: 10.1038/s41559-018-0580-9

    配偶子の形態が類似している有性生殖生物の大半は交配型が2種類だが、交配型が多種類ある種も存在する。今回、理論モデルを用いて、交配型の数の分布が変異率、個体群サイズおよび有性生殖の比率によって説明できることが明らかになった。

  • Article: 初期の後生動物の細胞型多様性と多細胞性の遺伝子調節の進化

    Early metazoan cell type diversity and the evolution of multicellular gene regulation

    doi: 10.1038/s41559-018-0575-6

    非左右相称動物の細胞型特異的な転写を解析することにより、後生動物の細胞型の基盤となる遺伝子調節ネットワークの進化に関する手掛かりが得られた。

2018年6月

  • Perspective: 微生物系の機能と機能的冗長性

    Function and functional redundancy in microbial systems

    doi: 10.1038/s41559-018-0519-1

    微生物群集は、類似の機能を発揮する多様な分類群によって構成されていることも多い。今回、微生物群集の組み立てと共存に機能や機能的冗長性、および分類学的特徴が果たす役割が考察された。

  • Review Article: 行動において再現性のある個体差を行動生態学者が理解するためのゲノムツール

    Genomic tools for behavioural ecologists to understand repeatable individual differences in behaviour

    doi: 10.1038/s41559-017-0411-4

    近年、行動遺伝学では行動の個体差に大きな関心が集まっている。このReview論文は、そうした個体差を調べるために利用できるゲノムツールや、避けるべき落とし穴について検討している。

  • Article: ヒトの進化における眼窩上の形態と社会的動態

    Supraorbital morphology and social dynamics in human evolution

    doi: 10.1038/s41559-018-0528-0

    古いヒト族の標本Kabwe 1の眉弓をコンピューター上で操作して咀嚼をシミュレーションした結果、空間的および生体力学的な役割が限定的であることが分かり、ヒト族の眼窩上領域は、顔面の小型化と前頭骨の形態変化の後に社会的情報伝達に用いられるようになった可能性が浮かび上がった。

  • Article: 世界の鳥類の季節的分布はエネルギー効率によって作り出される

    Energy efficiency drives the global seasonal distribution of birds

    doi: 10.1038/s41559-018-0556-9

    空間的に明確な機構モデルを利用することにより、世界中の全陸上鳥類種の分布が、エネルギー獲得とエネルギー消費の最適なバランスによって作り出されていることが明らかになった。

  • Article: 3つの栄養段階のフェノロジーの時間的・空間的なマッチとミスマッチ

    Tritrophic phenological match–mismatch in space and time

    doi: 10.1038/s41559-018-0543-1

    フェノロジーのミスマッチに関する研究の多くは、時間的な傾向のみに注目している。今回、英国における樹木、芋虫や毛虫、鳥類の間の時間的・空間的なミスマッチの傾向が解析され、高い緯度では全ての種のフェノロジーが遅延することや、芋虫や毛虫と鳥類とのミスマッチの程度には空間的変動がほとんどないことが明らかになった。

  • Article: 植物の分光的多様性は生物多様性の機能的要素と系統的要素を統合して生態系機能を予測する

    Plant spectral diversity integrates functional and phylogenetic components of biodiversity and predicts ecosystem function

    doi: 10.1038/s41559-018-0551-1

    分光反射プロファイルに基づいて植物の生物多様性を測定する新たな手法により、分類学的、機能的および系統的な多様性と同程度に生産力の変動が捉えられた。

  • Article: 種数の多い熱帯樹木系統の化学的多様性の起源と維持

    Origin and maintenance of chemical diversity in a species-rich tropical tree lineage

    doi: 10.1038/s41559-018-0552-0

    アマゾンのカンラン科樹木では、230種以上の草食性昆虫への防御と関係する二次代謝産物の頻度が高く量も多いことから、これらの樹木の植物化学的な多様性が形成される上で広食性の草食性昆虫が極めて重要な役割を果たしたと考えられる。

  • Article: 遺伝的順応による侵入性の進化

    Evolution of invasiveness by genetic accommodation

    doi: 10.1038/s41559-018-0553-z

    ヒマワリ属の多年生植物キクイモ(Helianthus tuberosus)による新たな環境への侵入は、利用可能な水の量に対する可塑的なクローン性応答によって促進されており、これは遺伝的順応の理論と一致する。

  • Article: トネリコ立ち枯れ病の欧州侵入は遺伝的に分岐した2個体が起源である OPEN

    The ash dieback invasion of Europe was founded by two genetically divergent individuals

    doi: 10.1038/s41559-018-0548-9

    病原性真菌Hymenoscyphus fraxineusが欧州のセイヨウトネリコを枯死させている。今回、H. fraxineusのゲノム塩基配列が解析され、アジアから持ち込まれた2つの分岐した半数体個体が欧州個体群の創始者となったことが示された。

  • Article: 長命なキクイムシの単婚的精子貯蔵とワーカーの永久的不妊

    Monogamous sperm storage and permanent worker sterility in a long-lived ambrosia beetle

    doi: 10.1038/s41559-018-0533-3

    キクイムシの一種Austroplatypus incompertusの生活史と生息地を分析した結果、この甲虫種では完全な単婚と生涯にわたる精子貯蔵が真社会性の前兆となったことが明らかになった。

  • Article: 自然鉄がCO2を還元してアセチルCoA経路の中間体と最終産物を生じる

    Native iron reduces CO2 to intermediates and end-products of the acetyl-CoA pathway

    doi: 10.1038/s41559-018-0542-2

    アセチルCoA経路は、自然界で最も古くからあるCO2固定経路である。今回、金属がCO2を選択的に還元してアセチルCoA経路の中間体と最終産物を生じることが示された。これは、アセチルCoA経路が前生物的起源であることと一致する。

  • Article: 複数環境におけるtRNA遺伝子の適応度景観

    Multi-environment fitness landscapes of a tRNA gene

    doi: 10.1038/s41559-018-0549-8

    適応度景観は、ある任意の環境における各遺伝子型の適応度を記述する。今回、4つの環境における酵母tRNA遺伝子の適応度景観が明らかにされ、新たな環境に容易に外挿することができる単純な遺伝子型・環境パターンが示された。

  • Article: 抗生物質耐性の進化を促進する遺伝子の同定と利用

    Identifying and exploiting genes that potentiate the evolution of antibiotic resistance

    doi: 10.1038/s41559-018-0547-x

    細菌のPseudomonas属では、包括的転写調節因子AmpRが進化を促進するため、抗生物質セフタジジムに対する耐性を進化させる能力が属内でさまざまに異なることが明らかになった。この進化経路を遮断することで、耐性が進化する前に病原性株を排除できる。

2018年5月

  • Perspective: 「生物多様性の危機の階層性」を用いて保全指標を評価し改善する

    A biodiversity-crisis hierarchy to evaluate and refine conservation indicators

    doi: 10.1038/s41559-018-0504-8

    変化の促進要因と生物多様性の低下とを結び付ける「生物多様性の危機の階層性(biodiversity-crisis hierarchy)」の概念モデルは、生物多様性条約の愛知目標の主要な欠落部分を明らかにし、新たな指標を作り上げるための仕組みを提供する。

  • Perspective: 種間相互作用ネットワークの空間的スケーリング

    The spatial scaling of species interaction networks

    doi: 10.1038/s41559-018-0517-3

    生物の相互作用が空間的スケールによってどのように変化するのかは、あまり明らかになっていない。今回、多栄養段階群集の空間的スケーリングを探るための理論的枠組みが概説され、ネットワーク–面積関係(network-area relationship;NAR)に関する検証可能な予測が提示された。

  • Perspective: 古代タンパク質研究の手引き

    A guide to ancient protein studies

    doi: 10.1038/s41559-018-0510-x

    古プロテオミクスは、進化生物学と考古学と人類学が交差する部分に新しく生まれた研究領域である。このPerspective論文は、研究者や査読者、編集者が古代タンパク質研究を実践・評価するための最良の入門書の1つとなる。

  • Article: ホモ・サピエンスは8万5000年前までにアラビアに来ていた

    Homo sapiens in Arabia by 85,000 years ago

    doi: 10.1038/s41559-018-0518-2

    ネフド砂漠で見つかり、年代が直接測定されたホモ・サピエンスの指骨から、8万5000年以上前のアラビア半島にヒトがいたことが明らかになった。これは、アフリカおよびレバント地方以外で年代が最も古いホモ・サピエンスとなる。

  • Article: 後氷期の狩猟採集民の急激な気候変動に対する復元力

    The resilience of postglacial hunter-gatherers to abrupt climate change

    doi: 10.1038/s41559-018-0508-4

    英国の中石器時代のスターカー遺跡に関して、高分解能の局所的古気候記録と前期完新世のヒトの行動記録とを相関させる研究が行われた。その結果、この時代には種々の環境ストレスがあったにもかかわらず、活発な人間活動が数世紀にわたって持続していたことが明らかになり、ヒト集団が気候変動に対して復元力を持っていたことが示唆された。

  • Article: 現代生態学の空間的・時間的領域

    The spatial and temporal domains of modern ecology

    doi: 10.1038/s41559-018-0524-4

    2004~2014年の間に発表された生態学研究論文348編の空間的・時間的な広がりを分析した結果、分解能と観察期間はほとんど変化していないが、観察の時間的間隔は狭まり、空間的範囲は広がったことが分かった。

  • Article: 衛星で捉えた受動型マイクロ波からアフリカの乾燥地での気候に起因する最近の炭素損失が明らかになる

    Satellite passive microwaves reveal recent climate-induced carbon losses in African drylands

    doi: 10.1038/s41559-018-0530-6

    衛星で捉えた低周波受動型マイクロ波から得られる「植生の光学的深さ(VOD)」に関するデータ(L-VOD)によって、2010~2016年のサブサハラアフリカ地域のバイオマス変化が定量化され、特に乾燥地での気候に起因する炭素損失が明らかになった。

  • Article: 海洋酸性化の下での食物網の変化はニシン仔魚の生存率を高める

    Food web changes under ocean acidification promote herring larvae survival

    doi: 10.1038/s41559-018-0514-6

    今世紀末に予測される海洋酸性化の条件下ではタイセイヨウニシンの仔魚の生存率が上昇することが、in situのメソコスム実験で示された。これは、CO2濃度の上昇で一次生産量が増加するためと考えられる。

  • Article: 移住や渡りと関連する免疫の進化

    The evolution of immunity in relation to colonization and migration

    doi: 10.1038/s41559-018-0509-3

    アフリカ・旧北区の鳴禽類1,311種の移住史を再構築し、MHC-Iの遺伝的多様性の比較解析も行った結果、移住や渡りの間に起こった病原体圧の変化が免疫を形作ったことが示唆された。

  • Article: 両生類の系統樹全体における過去の多様化および進化的隔離と現在の危機的状況との相互関係

    The interplay of past diversification and evolutionary isolation with present imperilment across the amphibian tree of life

    doi: 10.1038/s41559-018-0515-5

    ほぼ全ての現生両生類種の系統発生解析によって、進化的固有性(evolutionary distinctiveness;ED)の生物地理学パターンと現在の絶滅危機への直面状況が明らかになった。この情報は、両生類の保全戦略に役立つだろう。

  • Article: ヌタウナギとヤツメウナギのHox遺伝子から脊椎動物における時間的共線性の保存が明らかになる

    Hagfish and lamprey Hox genes reveal conservation of temporal colinearity in vertebrates

    doi: 10.1038/s41559-018-0526-2

    Hox遺伝子群は脊椎動物の発生で極めて重要な役割を果たしている。今回、有顎脊椎動物と同様に、円口類でもHox遺伝子の発現開始がHox遺伝子クラスター内の位置によって決まることが明らかになった。

  • Article: 生物の生態学的自殺

    Ecological suicide in microbes

    doi: 10.1038/s41559-018-0535-1

    自らの利益のために生息地を変化させることができる生物は多いが、中には利益にならないような方向に生息地を変化させてしまう生物もある。今回、その極端な例が土壌細菌で報告された。個体群密度が高くなると環境pHを著しく変化させて個体群の消滅を招くのである。

  • Article: 多コピープラスミドは細菌が進化的新機軸を得る際に適応度のトレードオフから逃れるのを可能にする

    Multicopy plasmids allow bacteria to escape from fitness trade-offs during evolutionary innovation

    doi: 10.1038/s41559-018-0529-z

    進化的新機軸が生じる過程ではトレードオフが広く見られる。今回、多コピープラスミドがTEM-1 βラクタマーゼ系の祖先型アレルと進化型アレルの共存を可能にして、細菌がトレードオフで負う進化的制約を逃れるのを助けていることが示された。

  • Article: 二倍体では有益な変異へのアクセスが変化して適応速度の低下と固定された変異の偏りを招く

    Altered access to beneficial mutations slows adaptation and biases fixed mutations in diploids

    doi: 10.1038/s41559-018-0503-9

    二倍体の適応についてはあまりよく解明されていない。今回、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)の二倍体株の長期にわたる実験的進化で、適応速度の低下および適応的な顕性(優性)変異への移行が明らかになった。

  • Article: 中立進化するペプチドの翻訳が新規遺伝子の進化の基盤となる

    Translation of neutrally evolving peptides provides a basis for de novo gene evolution

    doi: 10.1038/s41559-018-0506-6

    遺伝子はランダムな非コードDNAから新規に生じる場合がある。今回、マウスで一群の「若い」タンパク質が見つかった。これらはかなりの高レベルで翻訳され、中立的に進化しており、新規遺伝子の前駆体であると推定される。

  • Article: メタン生成菌の進化の年代を遺伝子水平伝播によって絞り込む

    Horizontal gene transfer constrains the timing of methanogen evolution

    doi: 10.1038/s41559-018-0513-7

    始生代の微生物によるメタン生成により、液体水圏を支えるのに必要な高温を説明できると考えられる。今回、メタン生成アーキアとシアノバクテリアの間の遺伝子水平伝播事象を分析することで、始生代より前のメタン生成の裏付けが得られた。

  • Article: 遺伝子伝播によって系統樹の年代を推定できる

    Gene transfers can date the tree of life

    doi: 10.1038/s41559-018-0525-3

    微生物は化石記録が不足しているため、系統の年代推定が特に困難である。今回、遺伝子水平伝播の情報を用いて系統樹の年代を推定できることが示された。

2018年4月

  • Perspective: 手付かずの森林生態系の特別な価値

    The exceptional value of intact forest ecosystems

    doi: 10.1038/s41559-018-0490-x

    重大な人為的劣化を免れている森林は、生物多様性、炭素の隔離と貯蔵、水の供給、および土着の文化とヒトの健康の維持にとって特別な価値があるという証拠が得られつつある。それを踏まえて著者らは、そうした手付かずの森林の保全を緊急に優先すべきだと論じている。

  • Article: 白亜紀のクモ綱新属新種Chimerarachne yingi はクモ目の起源を解明する手掛かりになる

    Cretaceous arachnid Chimerarachne yingi gen. et sp. nov. illuminates spider origins

    doi: 10.1038/s41559-017-0449-3

    ミャンマー産琥珀に閉じ込められた新たな白亜紀クモ綱の化石は、原始的な特徴と派生的な特徴を併せ持っていることから、クモ目の系統基部に位置すると考えられ、クモ目の進化の解明に役立つものである。

  • Article: 剥片石器の200万年と石器製作技術の進化的有効性

    Two million years of flaking stone and the evolutionary efficiency of stone tool technology

    doi: 10.1038/s41559-018-0488-4

    石器はヒト族の行動の進化を示すものと考えられているが、それらがどのように適応上の有利さをもたらしたのかは具体的に分かっていない。今回、200万年にわたる剥片石器のデータセットに基づき、石器製作技術の進化的有効性が再評価された。

  • Article: 二次基盤種は生物多様性を高める

    Secondary foundation species enhance biodiversity

    doi: 10.1038/s41559-018-0487-5

    着生植物などの二次基盤種は、一次基盤種の上に複雑な構造の生息場所を形成する。メタ解析から、二次基盤種は、一次基盤種のみの場合と比較して、生息する生物の個体数や種数を有意に増加させることが明らかになった。

  • Article: 最終氷期極大期の生産性のパラドックスは草食哺乳類の体サイズの平均が大きかったことで説明できる

    The large mean body size of mammalian herbivores explains the productivity paradox during the Last Glacial Maximum

    doi: 10.1038/s41559-018-0481-y

    全球的な動的植生モデルに草食モジュールを組み込むことにより、大型草食動物の影響を説明できる。この改訂モデルは、現在および最終氷期極大期の条件に当てはまる。

  • Article: 違法漁業を解決することで得られる迅速で持続的な利益

    Rapid and lasting gains from solving illegal fishing

    doi: 10.1038/s41559-018-0499-1

    違法・無報告・無規制(IUU)漁業を積極的に取り締まるインドネシアの最近の取り組みを分析した結果、合法的な漁獲の削減(およびそれに伴う食料供給と利益への影響)を限定しながら漁場の回復を促進させる、費用対効果の高い方法が示された。この方法は他の海域にも応用できると考えられる。

  • Article: ナミチスイコウモリにおいて吸血性の進化の基盤となったホロゲノム的適応 OPEN

    Hologenomic adaptations underlying the evolution of sanguivory in the common vampire bat

    doi: 10.1038/s41559-018-0476-8

    ナミチスイコウモリ(Desmodus rotundus)は、わずか3種しか存在しない偏性吸血哺乳類のうちの1種である。今回、そのゲノムと腸内メタゲノムの両方に関して塩基配列の解読を行うことにより、この特殊な食性の基盤となった進化的適応の全体像が得られた。

  • Article: 無性生殖魚類アマゾンモーリーのゲノムに見られるクローンの多型と高いヘテロ接合性 OPEN

    Clonal polymorphism and high heterozygosity in the celibate genome of the Amazon molly

    doi: 10.1038/s41559-018-0473-y

    無性生殖を行う脊椎動物はきわめてまれである。今回、無性生殖魚類アマゾンモーリー(Poecilia formosa)のゲノム塩基配列が解読された。遺伝的劣化を示す証拠はほとんど見いだされなかったが、クローンの多型と高いヘテロ接合性が認められたことから、それらによってこの魚類種の繁栄を説明できるかもしれない。

  • Article: 深海魚の生殖場所選択と適応進化のゲノミクス OPEN

    Genomics of habitat choice and adaptive evolution in a deep-sea fish

    doi: 10.1038/s41559-018-0482-x

    水深の勾配が種内分化の促進に果たす役割については、ほとんど分かっていない。今回、ソコダラ科深海魚Coryphaenoides rupestrisの注釈付きゲノムアセンブリーの結果が報告された。そのリシーケンシングデータは、水深による遺伝子型の分離を示している。

  • Article: 白亜紀–古第三紀境界の海水魚の爆発的多様化

    Explosive diversification of marine fishes at the Cretaceous–Palaeogene boundary

    doi: 10.1038/s41559-018-0494-6

    1,000カ所を超える超保存エレメントの選択的濃縮と分岐年代の解析により、有棘類(Acanthomorpha)の主要120系統の類縁関係が明らかになり、白亜紀–古第三紀(K–Pg)境界直後の有棘類放散に関する新たな時間尺度が得られた。

  • Article: 遺伝子に基づく栄養様式予測モデルはAsgard上門アーキアが食作用を行わないことを示唆する

    Gene-based predictive models of trophic modes suggest Asgard archaea are not phagocytotic

    doi: 10.1038/s41559-018-0477-7

    遺伝子に基づいて栄養様式を予測するモデルから、Asgard上門アーキアが食作用を行わないことが明らかになり、食作用の出現には、祖先アーキアへの細胞骨格成分の導入、カルシウムシグナル伝達を中心とする一連の細菌タンパク質、および、ある程度の新機軸が必要であったことが示唆された。

  • Article: 性的対立を解決する遺伝子重複によって配偶子形成に不可欠な機能が急速に進化した

    Gene duplicates resolving sexual conflict rapidly evolved essential gametogenesis functions

    doi: 10.1038/s41559-018-0471-0

    キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)で遺伝子重複によって生じた特異的なパラログは、雌と雄の配偶子形成にそれぞれ不可欠であり、反対の性の生殖能力を抑制することが分かった。

  • Article: ヒト集団間に共通する最近の正の選択のシグネチャー・パターン

    Patterns of shared signatures of recent positive selection across human populations

    doi: 10.1038/s41559-018-0478-6

    キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)で遺伝子重複によって生じた特異的なパラログは、雌と雄の配偶子形成にそれぞれ不可欠であり、反対の性の生殖能力を抑制することが分かった。

  • Article: アフリカの狩猟採集民および農民の人口動態史と変異負荷

    The demographic history and mutational load of African hunter-gatherers and farmers

    doi: 10.1038/s41559-018-0496-4

    アフリカ中央部の狩猟採集民および農民の計300人から得た高カバー率のエキソームから、最近の人口推移と遺伝子流動が明らかになり、それらの推移がそれぞれの変異負荷に与えた影響に関する手掛かりも得られた。

  • Article: リモートオセアニアでは集団が入れ替わったが言語は引き継がれた

    Language continuity despite population replacement in Remote Oceania

    doi: 10.1038/s41559-018-0498-2

    リモートオセアニア(オセアニア島嶼地域)の古代と現代の人々から得られた全ゲノムデータから、過去2,500年の間に集団が入れ替わったことが示された。ただし言語は引き継がれている。パプア人が移住して、現地の東アジア系集団と遺伝学的にほぼ完全に入れ替わったが、オーストロネシア語は入れ替わらなかったのである。

  • Article: 豪州のパマ・ニュンガン語族の起源と拡大

    The origin and expansion of Pama–Nyungan languages across Australia

    doi: 10.1038/s41559-018-0489-3

    パマ・ニュンガン語族の306言語の語彙に関する系統地理学的なベイズ解析により、この語族は、中期完新世のガルフプレーンズ(Gulf Plains)地方で出現した後、急激な置換過程を経て豪州全土で支配的となったことが示唆された。

2018年3月

  • Perspective: 生態学と進化学において拡大するオープンデータの景観をナビゲートする

    Navigating the unfolding open data landscape in ecology and evolution

    doi: 10.1038/s41559-017-0458-2

    オープンデータが急増しているが、データセットが多数の格納場所に分散している場合もある。今回著者らは、生態学と進化生物学におけるオープンデータの概観を示すとともに、データを再利用する際に考慮すべき重要なポイントを明らかにしている。

  • Perspective: 生態系の多機能性を再定義する

    Redefining ecosystem multifunctionality

    doi: 10.1038/s41559-017-0461-7

    生態系の多機能性という概念は、2つの異なる研究領域から出てきたものである。このPerspective論文では、基礎研究にも応用研究にも意味があると思われる2つのレベルで多機能性を再定義することにより、両領域の考え方を調和させている。

  • Brief Communication: 有機的に保存されているエディアカラ生物相の分子化石はベルタネリフォルミスがシアノバクテリア由来であることを示す

    Molecular fossils from organically preserved Ediacara biota reveal cyanobacterial origin for Beltanelliformis

    doi: 10.1038/s41559-017-0438-6

    エディアカラ生物相のベルタネリフォルミス(Beltanelliformis)の標本に保存されている有機バイオマーカーから、この謎に包まれた生物が底生のコロニー型シアノバクテリアであったことが明らかになった。

  • Brief Communication: 道具を使用するカラスの採餌効率は新機軸であるかぎ状構造によって高くなる

    Hook innovation boosts foraging efficiency in tool-using crows

    doi: 10.1038/s41559-017-0429-7

    野生のカレドニアガラス( Corvus moneduloides )は、先端にかぎ状構造のある採餌道具を製作することで知られるが、今回、それを使った場合の採餌効率は、かぎ状構造のない道具を使った場合よりも高くなることが示された。

  • Article: エジプトで見つかった新たな竜脚類の化石から後期白亜紀の恐竜の欧州・アフリカ間での分散が明らかになる

    New Egyptian sauropod reveals Late Cretaceous dinosaur dispersal between Europe and Africa

    doi: 10.1038/s41559-017-0455-5

    新たに見つかったティタノサウルス類竜脚類Mansourasaurusは、アフリカ大陸のセノマニアン以降の白亜紀層から見つかった中で化石が最も完全に保存された陸上脊椎動物である。系統発生解析から、当時はアフリカと欧州の両方に生息するティタノサウルス類クレードが存在しており、両大陸間に動物相のつながりがあったことが分かった。

  • Article: 恐竜によって明らかになった進化的放散の地理的特徴

    Dinosaurs reveal the geographical signature of an evolutionary radiation

    doi: 10.1038/s41559-017-0454-6

    今回、生物地理学的モデルによって恐竜の祖先の生息場所が再構築され、1億7000万年もの長期にわたる放散過程を支えた空間的メカニズムが明らかになった。それによると、最初は移動が急速だったが、絶滅時期が近づくにつれて減速していった。

  • Article: 気候ニッチ進化に対する内温性の影響と脊椎動物多様性の分布

    The impact of endothermy on the climatic niche evolution and the distribution of vertebrate diversity

    doi: 10.1038/s41559-017-0451-9

    陸上脊椎動物1万1465種の化石および現代の記録から得られた分布データと系統発生データを組み合わせることにより、気候ニッチの変化速度は外温動物よりも内温動物の方が有意に大きいことが分かった。

  • Article: 多種共存の解析からさまざまな脅威に対する管理の結果を予測する

    Species co-occurrence analysis predicts management outcomes for multiple threats

    doi: 10.1038/s41559-017-0457-3

    多種共存のネットワーク解析から、強く結合した種は脅威の管理からより多くの恩恵を得る傾向にあること、そして、この情報を使って脅威軽減策に対する群集全体の応答を予測できることが示された。

  • Article: 太陽放射管理の実施と停止が生物多様性に与える潜在的に危険な影響

    Potentially dangerous consequences for biodiversity of solar geoengineering implementation and termination

    doi: 10.1038/s41559-017-0431-0

    気候工学は、気候変動の影響を打ち消すための戦略となり得る。気候変化速度を用いて生物多様性への影響を予測した結果、太陽放射管理の突然の停止には特別なリスクがあることが分かった。

  • Article: ヨーロッパブナ林の種のプールと群落の多様性は歴史と環境によって形作られている

    History and environment shape species pools and community diversity in European beech forests

    doi: 10.1038/s41559-017-0462-6

    ヨーロッパブナ林における群落形成を大陸全体の規模で解析することにより、種のプールに歴史や環境が与える影響の大きさはさまざまなスケールにわたって異なっていることが明らかになった。

  • Article: 移動性の高いサバンナシマウマのアフリカ南部起源と隠れた遺伝学的構造

    A southern African origin and cryptic structure in the highly mobile plains zebra

    doi: 10.1038/s41559-017-0453-7

    サバンナシマウマ( Equus quagga )の全亜種の全ゲノムデータから、形態に基づく亜種分類と食い違う集団遺伝学的構造や、現代と古代の遺伝的多様性が明らかになり、全ての現生個体群がアフリカ南部起源である可能性が示された。

  • Article: 熱帯土壌の微生物機能にリンの可給性が与える全体的な影響が群集プロテオゲノミクスによって明らかになる

    Community proteogenomics reveals the systemic impact of phosphorus availability on microbial functions in tropical soil

    doi: 10.1038/s41559-017-0463-5

    17年にわたり熱帯林施肥実験が行われた土壌のメタゲノムおよびメタプロテオーム解析の結果、微生物群集は難分解性基質からのリンの取り出しを強化することで栄養素不足に対応するという仮説が裏付けられた。

  • Article: 汎存性シアノバクテリアの異質細胞の機能に対する太古からの平衡選択

    Ancient balancing selection on heterocyst function in a cosmopolitan cyanobacterium

    doi: 10.1038/s41559-017-0435-9

    平衡選択によって遺伝的多型が長期的に維持されることはまれである。今回、好熱性シアノバクテリアの一種において、数千万年にわたる多様化の中で、窒素固定の生理学的特性に影響を与える多型が維持されてきたことが明らかになった。

  • Article: 16世紀のメキシコで発生した疫病の死者の遺骸から検出されたSalmonella entericaゲノム

    Salmonella enterica genomes from victims of a major sixteenth-century epidemic in Mexico

    doi: 10.1038/s41559-017-0446-6

    16世紀にメキシコを襲った疫病の死者の遺骸から古代DNAを回収して解析した結果、欧州人の到来後間もなく発生した壊滅的な疫病は、Salmonella enterica Paratyphi Cによるもの(サルモネラ症)であったことが示唆された。

  • Article: 除草剤耐性の進化を国家規模で促進させる複数の要因

    The factors driving evolved herbicide resistance at a national scale

    doi: 10.1038/s41559-018-0470-1

    英国各地の農場でイネ科植物ノスズメノテッポウ( Alopecurus myosuroides )の常在度と除草剤耐性を調査した結果、耐性がこの雑草の密度を増大させており、除草剤の周期的使用や併用では耐性の進化が抑制されないことが示唆された。

  • Article: 霊長類のCD4+ T細胞における調節エレメント集合体の動的進化

    Dynamic evolution of regulatory element ensembles in primate CD4+ T cells

    doi: 10.1038/s41559-017-0447-5

    エンハンサーの進化的変化が標的遺伝子の転写にどう影響するのかはよく分かっていない。今回、霊長類のCD4+ T細胞で新生転写反応を測定することにより、エンハンサーの進化的変化の影響が転写の段階で緩和されていることが示された。

  • Article: 雑種ゲノム形成の多様性と制約

    Variation and constraints in hybrid genome formation

    doi: 10.1038/s41559-017-0437-7

    交雑は重要な進化的過程である。今回、雑種イタリアスズメ(Passer italiae)の隔離個体群の研究から、異なる島で別々に生じた完全に機能する新規の雑種ゲノムの組み合わせが複数見いだされた。

  • Article: 不完全変態類のゲノムからシロアリの真社会性の分子基盤が明らかになる OPEN

    Hemimetabolous genomes reveal molecular basis of termite eusociality

    doi: 10.1038/s41559-017-0459-1

    ハチ目昆虫とシロアリでは真社会性がそれぞれ独立に進化した。今回、チャバネゴキブリと乾材シロアリの1種(Cryptotermes secundus)のゲノム塩基配列が解読され、シロアリの真社会性の進化的特徴に関する洞察が得られた。

  • Article: マーブルクレイフィッシュのクローンゲノム進化と侵入の急速な広がり OPEN

    Clonal genome evolution and rapid invasive spread of the marbled crayfish

    doi: 10.1038/s41559-018-0467-9

    マーブルクレイフィッシュ( Procambarus virginalis ;別名ミステリークレイフィッシュ)は、淡水生息環境への新たな侵入種となりつつある。今回、そのゲノム塩基配列が解読され、この十脚甲殻類の進化には、ゲノム重複、三倍体性およびクローン増殖が関わっていることが明らかになった。

2018年2月

  • Perspective: 失敗と見なされていたホモ・サピエンスのアフリカからアジアへの分散の成功

    The success of failed Homo sapiens dispersals out of Africa and into Asia

    doi: 10.1038/s41559-017-0436-8

    海洋酸素同位体ステージ5(約12万6000~7万4000年前)の初期に起こったアフリカからレバント地方へのヒトの分散は、その後のより成功した出アフリカ事象の前触れであったと、近年まで考えられていた。アジアで最近発見された考古学的証拠は、この筋書きに疑問を投げ掛けるものであり、何をもって分散の成功と見なすのかという問題を検討するための助けになる。

  • Perspective: 酸素のある世界での動物の進化は細胞の幹細胞性の制御が高度化したことで可能になった

    Refined control of cell stemness allowed animal evolution in the oxic realm

    doi: 10.1038/s41559-017-0410-5

    最初期の動物の多様化は酸素濃度の上昇と関連付けられている。今回、新たなモデルが提案された。動物は、低酸素誘導性の転写因子によって細胞の幹細胞性を飛躍的に制御できるようになり、変動する酸素濃度への対処が可能になったというものである。

  • Review Article: ヒトの幸福に対する捕食者や腐肉食者の寄与

    The contribution of predators and scavengers to human well-being

    doi: 10.1038/s41559-017-0421-2

    捕食者や腐肉食者である動物種は、疾病の制御や農業への寄与、廃棄物の処理をはじめとする恩恵をヒトにもたらしているが、そうした認識は一般に薄く、冷遇されている。保全の検討にあたっては、捕食者や腐肉食者によるこれらのサービスが強調されるべきである。

  • Brief Communication: ゲノム全体のヌクレオチド構成の進化的決定要因

    Evolutionary determinants of genome-wide nucleotide composition

    doi: 10.1038/s41559-017-0425-y

    ゲノム全体のヌクレオチド構成は、種によって大きく異なる。今回、ゲノムのGC含量は変異バイアスによって変動するが、自然選択や偏った遺伝子変換でも変化することが明らかになった。

  • Article: 旧世界サバンナ動物相の盛衰とアフリカのサバンナバイオームの起源

    The rise and fall of the Old World savannah fauna and the origins of the African savannah biome

    doi: 10.1038/s41559-017-0414-1

    サバンナ動物相は、時空間的につながった古バイオームとして発生した。この古バイオームが中期中新世に繁栄した後、後期中新世にユーラシアとアフリカに枝分かれしたのである。

  • Article: 肉食動物の活動時間のスケーリング関係は採餌の制約条件によって逆転する

    Foraging constraints reverse the scaling of activity time in carnivores

    doi: 10.1038/s41559-017-0386-1

    数理モデリングと陸上肉食動物73種の活動追跡データとを組み合わせることにより、採餌に費やす活動時間の比率と体サイズとの間には、体重約5 kgまでは正のスケーリング関係があるが、約5 kgを超えると負のスケーリング関係になることが明らかになった。

  • Article: 捕食者間での忌避の社会的伝達が新規の被食者の拡散を促進する

    Social transmission of avoidance among predators facilitates the spread of novel prey

    doi: 10.1038/s41559-017-0418-x

    捕食者が隠蔽色の獲物以上に警告色の獲物を食べずに忌避するのは、単に自身の経験によるだけでなく、まずい獲物を食べた同種個体の経験を観察したことも要因となっていることが、シジュウカラを捕食者集団とする実験で明らかになった。

  • Article: 等適応度パラダイムは世代時間とエネルギー生産速度とのトレードオフで説明される

    Equal fitness paradigm explained by a trade-off between generation time and energy production rate

    doi: 10.1038/s41559-017-0430-1

    動植物および微生物の適応度がほぼ等しくなる「等適応度パラダイム(equal fitness paradigm)」は、生物物理学的な境界内に拘束された中での世代時間と生産とのトレードオフのためであることが、理論モデルとそれを裏付ける実験的証拠によって明らかになった。

  • Article: 生物多様性の低下は生態系の違いを越えて多機能性に一貫した影響を与える

    Consistent effects of biodiversity loss on multifunctionality across contrasting ecosystems

    doi: 10.1038/s41559-017-0415-0

    環境勾配のある中で行われた2つの長期的な多様性操作実験から、生物多様性の低下が生態系機能にどのような影響を与えるのかを知る手掛かりが得られた。生物多様性低下は、多機能性に一定の影響を及ぼす。そして、多機能性が生態系の違いを越えて類似の値になることで、生物多様性低下の個々の影響が覆い隠されてしまう可能性がある。

  • Article: 遺伝子型の多様性が生態学研究の再現性を高める

    Genotypic variability enhances the reproducibility of an ecological study

    doi: 10.1038/s41559-017-0434-x

    遺伝的多様性を意図的に組み込むことで生態学研究の再現性が高まることが、14施設で反復されたミクロコスム実験で示された。

  • Article: サメ類、エイ類およびギンザメ類の進化史保全のための全球的な優先順位

    Global priorities for conserving the evolutionary history of sharks, rays and chimaeras

    doi: 10.1038/s41559-017-0448-4

    軟骨魚類の全てについて保全の優先順位を決定するための尺度として、進化的特異性が用いられ、保全対象として、絶滅危惧種の種数、固有性および進化的特異性が最高水準となる21カ国が特定された。

  • Article: サメ類の栄養地理学を全球規模で捉える

    A global perspective on the trophic geography of sharks

    doi: 10.1038/s41559-017-0432-z

    サメ類の栄養的相互作用における全球規模の生物地理的特性が、炭素同位体の分析から明らかになり、サメ類の多様な採餌行動が浮かび上がった。

  • Article: 100年にわたる気候変動と富栄養化による湖沼のシアノバクテリア群集の均質化

    Homogenization of lake cyanobacterial communities over a century of climate change and eutrophication

    doi: 10.1038/s41559-017-0407-0

    欧州の10湖沼の堆積物DNAを分析した結果、過去100年の間に、シアノバクテリア群集が湖沼環境条件の均質化に伴って構成的および系統的により似通ったものとなってきたことが分かった。

  • Article: 河川無脊椎動物の機能的多様性と群集形成は氷河被覆度の低下に対して総体的に一貫した応答を示す

    Functional diversity and community assembly of river invertebrates show globally consistent responses to decreasing glacier cover

    doi: 10.1038/s41559-017-0426-x

    9つの生物地理区の河川無脊椎動物を100万個体以上分析した結果、氷河被覆度の低下に伴って機能的形質の多様性が一貫して上昇することが分かった。

  • Article: サンゴ礁魚類に対する海洋酸性化の影響は可塑性と親の表現型との相互作用によって決まる

    An interplay between plasticity and parental phenotype determines impacts of ocean acidification on a reef fish

    doi: 10.1038/s41559-017-0428-8

    海洋酸性化に対する生物の応答は、異なる時間スケールにわたって耐性と表現型可塑性の多様性に依存すると考えられる。サンゴ礁魚類Acanthochromis polyacanthusを対象とした研究により、海洋酸性化に対する魚類の応答には親の多様性と継代効果が重要であることが明らかになった。

  • Article: 性的拮抗と環境的性決定の不安定性

    Sexual antagonism and the instability of environmental sex determination

    doi: 10.1038/s41559-017-0427-9

    動物では、環境的性決定よりも遺伝的性決定(GSD)の方が一般的である。GSDがこのように広まったのは、仔の性比を一方の性に偏らせる遺伝子と、その性では有益だが別の性ではコストがかかる遺伝子とが組み合わさったためであることが今回示された。

  • Article: 極度の乾燥に対するシロイヌナズナの適応のゲノム基盤と進化的潜在能力

    Genomic basis and evolutionary potential for extreme drought adaptation in Arabidopsis thaliana

    doi: 10.1038/s41559-017-0423-0

    気候変動に対する種の適応能力は、その遺伝的多様性に依存する。今回、シロイヌナズナ( Arabidopsis thaliana )の乾燥耐性に関連する遺伝的バリアントの地理的分布に基づき、欧州中央部の個体群の将来的な遺伝的不適応が予測された。

  • Article: ファージと宿主の個体群動態は自然免疫を持つ細菌のプロファージ獲得を促進する

    Phage-host population dynamics promotes prophage acquisition in bacteria with innate immunity

    doi: 10.1038/s41559-017-0424-z

    制限・修飾系は、個々の細菌においてはバクテリオファージによる溶菌性感染と溶原性感染の両方を阻害するが、個体群レベルでは、感染の開始を遅らせることによって溶原性の可能性を高める。

  • Article: シカの赤血球鎌状化の遺伝的基盤と進化

    The genetic basis and evolution of red blood cell sickling in deer

    doi: 10.1038/s41559-017-0420-3

    シカ15種のヒトβグロビンオルソログの塩基配列が決定され、それをタンパク質構造モデリングに用いることにより、ヒトの鎌状赤血球症の赤血球で見られるものとは異なる赤血球鎌状化メカニズムが明らかになった。

  • Article: 伝播環境に対する熱帯熱マラリア原虫の適応

    Adaptation of Plasmodium falciparum to its transmission environment

    doi: 10.1038/s41559-017-0419-9

    小児に感染した熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)のトランスクリプトーム解析が行われ、伝播強度の低い地域の原虫は高い地域の原虫と比べて、新たな宿主への伝播(生殖)に対する投資が多く、宿主内での複製(増殖)に対する投資は少ないことが明らかになった。

  • Article: 進化を教える授業への反応の乏しさは、心理的葛藤よりも科学的資質によって説明される

    Scientific aptitude better explains poor responses to teaching of evolution than psychological conflicts

    doi: 10.1038/s41559-017-0442-x

    英国の中等学校において、進化に対する受容レベルがもともと低い生徒は、もともと高い生徒と比べて、授業による進化の理解度があまり上がらないことが分かった。こうした受容レベルの低い生徒は、教員が層別化して編成した低学力のクラスに多く、遺伝学の授業に対する反応も乏しい。

  • Analysis: 全生態学者必読の論文100選

    100 articles every ecologist should read

    doi: 10.1038/s41559-017-0370-9

    生態学ジャーナル7誌の編集委員らから専門家としての意見を集めることにより、生態学の領域で強く推奨される論文上位100編のリストが作成された。

2018年1月

  • Perspective: 生態–進化動態に関してゲノムデータから明らかにできること

    What genomic data can reveal about eco-evolutionary dynamics

    doi: 10.1038/s41559-017-0385-2

    自然界の生態–進化動態に関する研究は魅力的だが容易ではない。このPerspective論文では、生態–進化動態の裏にあるメカニズムを理解して自然界の進化や生態に関する予測を導くために、ゲノムデータをどのように利用できるかを論じている。

  • Review Article: 侵略的外来種による花粉媒介者と授粉へのリスク

    Risks to pollinators and pollination from invasive alien species

    doi: 10.1038/s41559-017-0412-3

    侵入種は、生態的ネットワークの改変、新たな病気の脅威、栄養摂取量の低下など、さまざまな形で授粉に影響を与える場合がある。このReview論文では、そうした脅威を評価し、IPBESの報告に立脚して、花粉媒介者や授粉に対する侵略的外来種の影響を統合している。

  • Article: 1900年以降の熱帯アフリカの森林範囲と森林減少

    Forest extent and deforestation in tropical Africa since 1900

    doi: 10.1038/s41559-017-0406-1

    古い代理指標と古地図による実地データに基づいて1900年頃の熱帯アフリカの森林範囲を再構築することにより、森林減少の速度は、モデルによる推定のみで示唆された結果よりも大幅に低速であったことが明らかになった。

  • Article: 移入された植物では気候的ニッチのシフトが広く見られる

    Climatic niche shifts are common in introduced plants

    doi: 10.1038/s41559-017-0396-z

    大陸をまたいで侵入した植物種は、これまで考えられていたよりもはるかによく気候的ニッチをシフトさせることが、陸上植物種の大規模データセットから明らかになった。

  • Article: 生物多様性と多機能性の関係は測定した機能の性質と数に依存する

    Biodiversity–multifunctionality relationships depend on identity and number of measured functions

    doi: 10.1038/s41559-017-0391-4

    ドイツ・イェーナの草原の生物多様性実験で生態系機能の82指標を分析した結果、多機能性は多様性と共に着実に増加するが、その関係は考慮した機能の数と性質に依存することが分かった。

  • Article: 植物多様性の局所的低下と空間的均一化は生態系の多機能性を低下させる

    Local loss and spatial homogenization of plant diversity reduce ecosystem multifunctionality

    doi: 10.1038/s41559-017-0395-0

    栄養素ネットワーク(Nutrient Network)の実験で世界各地の草原65カ所を分析した結果、植物群落ではαおよびβ多様性が高いほど生態系の多機能性のレベルが高く、その影響はスケールをまたいで増幅されることがわかった。

  • Article: 種内変動の生態的重要性

    The ecological importance of intraspecific variation

    doi: 10.1038/s41559-017-0402-5

    種内変動の生態系への影響を種の置換または除去の影響と比較したメタ解析から、種内変動の影響は、種の置換または除去の影響と同等か、場合によってはそれ以上に強い場合があることが分かった。

  • Article: 海生捕食性魚類の全球パターン

    Global patterns in marine predatory fish

    doi: 10.1038/s41559-017-0388-z

    海生捕食性硬骨魚類の浮魚と底魚の全球分布に見られる緯度的な相違は、各食物連鎖の基部の相対的なエネルギー流入量によって説明できる。

  • Article: 重要な南極海底動物相の種個体数と種数はモデルによる食物の利用可能性と相関する

    Abundance and richness of key Antarctic seafloor fauna correlates with modelled food availability

    doi: 10.1038/s41559-017-0392-3

    海面のクロロフィルaのデータを、領域海洋モデル、および堆積物グラブ採泥で得られた珪藻の種個体数と組み合わせることにより、東南極のジョージ5世海域の全体にわたる漂泳–底生結合(pelagic–benthic coupling)の強さが明らかになった。

  • Article: 米国の「持続可能な」牛肉生産のためのモデル

    A model for ‘sustainable’ US beef production

    doi: 10.1038/s41559-017-0390-5

    米国の牛肉産業は環境面から見て持続可能性がないと考えられている。今回著者らは、畜牛が牧草と食品産業副産物のみによって肥育されるシステムをモデル化し、質の高い耕地を使用しなくても現在の生産量の45%が得られると推定している。

  • Article: 流況の改変は水辺生態系の生態的ネットワークを劣化させる

    Flow regime alteration degrades ecological networks in riparian ecosystems

    doi: 10.1038/s41559-017-0379-0

    気候変動や、ヒトによる河川の流れの制御は、水生種の分布に影響を与える可能性が高い。自然流況の改変をモデル化することにより、小さな変更であっても水辺の植物ネットワーク構造に影響を及ぼし得ることが明らかになった。

  • Article: 相利共生ネットワークの構造は進化のスパンドレルである

    The architecture of mutualistic networks as an evolutionary spandrel

    doi: 10.1038/s41559-017-0383-4

    相利共生網の入れ子構造その他の特徴は、種分化–分岐動態による多様性形成の結果生じたスパンドレル(副産物)であることが、数学的モデリングで示唆された。

  • Article: 捕食が表現型可塑性の局所的適応を促進する

    Predation drives local adaptation of phenotypic plasticity

    doi: 10.1038/s41559-017-0373-6

    表現型可塑性における遺伝的変動は、局所的適応が可能であることを示唆している。そうした局所的適応がミジンコ(Daphnia pulex)で捕食によって促進されることが、多地点での多形質実験から明らかになった。

  • Article: 新たな被食者の侵入に伴う最上位捕食者の急速な形態変化

    Rapid morphological change of a top predator with the invasion of a novel prey

    doi: 10.1038/s41559-017-0378-1

    タカ科鳥類タニシトビのくちばしと体のサイズは、在来の獲物より大型のリンゴガイが生息範囲に侵入してから10年で著しく増大した。幼鳥は体が大きいものほど生存率が高いことから、進化的変化が間近に迫っている可能性が示唆される。

  • Article: 規制された狩猟でもヒグマの生活史は変化する

    Regulated hunting re-shapes the life history of brown bears

    doi: 10.1038/s41559-017-0400-7

    スウェーデンのヒグマを30年にわたってモニタリングした研究で、持続可能な管理が行われているにもかかわらず生活史が顕著に変化するなど、規制された狩猟であっても個体群統計学的な影響を及ぼすことが明らかになった。

  • Article: 隔離されたオオカミ個体群における集中的な近親交配のゲノムへの影響

    Genomic consequences of intensive inbreeding in an isolated wolf population

    doi: 10.1038/s41559-017-0375-4

    近親交配が高度に進んだオオカミ個体群に由来する97頭について全ゲノムのリシーケンシングを行った結果、多くの個体で全染色体が完全なホモ接合であることが明らかになり、集中的な近親交配によるゲノムへの影響が示された。

  • Article: 分散と社会的行動の共進化は社会的多型の出現にプラスに働く

    Social polymorphism is favoured by the co-evolution of dispersal with social behaviour

    doi: 10.1038/s41559-017-0397-y

    分散と社会的行動は共進化するが、それらの進化的影響はよく分かっていない。今回、分散に関与する座位と社会的行動に関与する座位の連鎖が社会的多型を出現させることが明らかになった。

  • Article: 紐形動物と箒虫動物のゲノムから冠輪動物の進化と左右相称動物の頭部の起源が明らかになった

    Nemertean and phoronid genomes reveal lophotrochozoan evolution and the origin of bilaterian heads

    doi: 10.1038/s41559-017-0389-y

    紐形動物1種と箒虫動物1種のゲノム塩基配列を解読した結果、この2つの冠輪動物は非常に近縁であることが分かった。得られたデータから、左右相称動物の頭部パターン形成の起源が共通であることも示された。

  • Article: 哺乳類の遺伝子発現の進化的復元力は調節状況の複雑さと保存に支えられている

    Complexity and conservation of regulatory landscapes underlie evolutionary resilience of mammalian gene expression

    doi: 10.1038/s41559-017-0377-2

    哺乳類15種の肝臓試料でプロモーターおよびエンハンサーの活性と下流の転写物のレベルを分析した結果、遺伝子の調節状況の複雑さと発現の進化的安定性との間に関連性が見いだされた。

  • Article: 植物と真菌類の四分子分析で遺伝子変換率に大きな差が見いだされたがGCへの偏りは認められなかった

    Tetrad analysis in plants and fungi finds large differences in gene conversion rates but no GC bias

    doi: 10.1038/s41559-017-0372-7

    GCに偏った遺伝子変換は進化遺伝学的にさまざまな意味合いを持つが、その発生率はよく分かっていない。今回、生物4種で四分子の塩基配列を直接解読した結果、遺伝子変換率には大きな差が認められたが、全般的なGCへの偏りを示す証拠は得られなかった。

  • Article: 節足動物全体の解析から、体細胞piRNAが祖先から伝わる転移因子防御分子であることが明らかになった

    Pan-arthropod analysis reveals somatic piRNAs as an ancestral defence against transposable elements

    doi: 10.1038/s41559-017-0403-4

    節足動物門の全体にわたって、転移因子を標的とする体細胞性のPIWI相互作用性RNAが広く存在することから、この経路が節足動物の最終共通祖先で機能していたことが示唆される。

  • Article: フクロオオカミのゲノムは絶滅した肉食性有袋類の進化と個体群統計学を解明するための手掛かりをもたらす OPEN

    Genome of the Tasmanian tiger provides insights into the evolution and demography of an extinct marsupial carnivore

    doi: 10.1038/s41559-017-0417-y

    フクロオオカミは、絶滅した肉食性有袋類である。保存されている標本のゲノムの塩基配列を解読した結果、個体群が長期にわたって縮小していったことが分かり、フクロオオカミとイヌ科動物の間に見られる表現型収斂の遺伝的基盤が明らかになった。

2017年12月

  • Perspective: 幸福と持続可能性に関するスケール横断的な指標への生物文化的取り組み

    Biocultural approaches to well-being and sustainability indicators across scales

    doi: 10.1038/s41559-017-0349-6

    地域の価値感、知識およびニーズを全球の生態学的要因と組み合わせる生物文化的取り組みは、地域と世界全体の幸福および持続可能性を評価するための有益な指標の枠組みをもたらし、両者の隔たりを埋めるのに寄与する。

  • Perspective: ゲノム内対立の意味

    The meaning of intragenomic conflict

    doi: 10.1038/s41559-017-0354-9

    ゲノム内対立は、ある遺伝子が自らのために機能するとゲノムの他の部分が不利益を被る場合に生じる。今回、著者らはゲノム内対立の一般理論を提唱し、生物の適応異常やヒトの疾患に対してゲノム対立が持つ意味を論じている。

  • Brief Communication: 後氷期に増加した森林植生へのウマの毛色の適応

    Coat colour adaptation of post-glacial horses to increasing forest vegetation

    doi: 10.1038/s41559-017-0358-5

    ニッチモデリングと古代DNA解析から、後氷期の森林で黒いウマが優勢であったことが明らかになり、そうした生息場所にウマがしだいに適応していったことが示唆された。

  • Article: 土壌の団粒構造形成に対する土壌生物相の寄与

    Soil biota contributions to soil aggregation

    doi: 10.1038/s41559-017-0344-y

    土壌の明瞭な団粒構造の形成は、生物地球化学的循環の重要な要素である。今回、メタ解析によって、土壌生物相が土壌の団粒構造形成に強いプラスの影響を与えており、最大の影響は細菌および真菌類によるものであることが明らかになった。

  • Article: リター分解の階層モデルの検証

    A test of the hierarchical model of litter decomposition

    doi: 10.1038/s41559-017-0367-4

    植物リター(落葉落枝)の分解を正確に理解することは、地球システムモデリングの情報を得る上で重要である。今回、植物リターの分解に関して主流となっている階層モデルに不十分な部分があることが分かり、見直しが示唆された。

  • Article: 浅海種の地理的分布の水温限界

    Thermal limits to the geographic distributions of shallow-water marine species

    doi: 10.1038/s41559-017-0353-x

    海水温と浅海種1790種の分布域との関係を評価した結果、水温の実現ニッチは緯度と共に増加するが、地理的面積は縮小することが分かった。

  • Article: 冬季流氷域がナンキョクオキアミ幼生に提供する生息場所は安全だが食物に乏しい

    The winter pack-ice zone provides a sheltered but food-poor habitat for larval Antarctic krill

    doi: 10.1038/s41559-017-0368-3

    冬季の海氷は、越冬するナンキョクオキアミに極めて重要な摂食場所を提供すると考えられている。それに対して著者らは今回、流氷域は成長途上のオキアミ幼生にとって食物に乏しい生息場所であるが、重要な避難場所として機能していることを明らかにした。

  • Article: 島嶼の生物学的侵入の脅威を全球レベルで捉える

    A global picture of biological invasion threat on islands

    doi: 10.1038/s41559-017-0365-6

    島嶼は、侵入種の影響が強く懸念される場所と考えられている。今回、島嶼の侵入種に関する全球的なネットワーク指向型の解析で、この脅威の特性が明らかになった。

  • Article: 大規模な生態的ネットワークの自己調節と安定性

    Self-regulation and the stability of large ecological networks

    doi: 10.1038/s41559-017-0357-6

    生態的ネットワークの安定性は、種間と種内のどちらの相互作用にも依存する。今回、種内の自己調節が実験的および理論的ネットワークの安定化に必要な特徴であることが示された。

  • Article: 現代および歴史上のフェノロジーの境界を明らかにするための統計的推定量

    A statistical estimator for determining the limits of contemporary and historic phenology

    doi: 10.1038/s41559-017-0350-0

    絶滅の研究から転用された統計的推定量の手法によって、開花の開始と終了の時期を正確に推定できることが、歴史上および現代の多様な情報源からまばらに取得されたデータを用いて明らかにされた。

  • Article: 生物学的水利用量の中湿性最大値から乾燥度の変化に対するバイオームの感受性が明確になる

    A mesic maximum in biological water use demarcates biome sensitivity to aridity shifts

    doi: 10.1038/s41559-017-0371-8

    野外研究やリモートセンシング、生態水文学モデリングによる推定結果から、気候の変化に対する生態系の感受性や、生態系が有効利用できる降水量の予想パターンを明らかにするための枠組みが得られた。

  • Article: 恐竜絶滅後の哺乳類における夜行性祖先からの時間的ニッチの拡張

    Temporal niche expansion in mammals from a nocturnal ancestor after dinosaur extinction

    doi: 10.1038/s41559-017-0366-5

    現生哺乳類の分類上の「目」の全てを横断する行動データの系統発生解析から、最初期の哺乳類が夜行性であり、周日行性(昼夜動き回る)や完全な昼行性といった他の活動様式は、白亜紀末および初期新生代まで出現しなかったことが示唆された。

  • Article: 中期新生代に多様な大陸生物相のターンオーバーがあったことを示す系統発生上の証拠

    Phylogenetic evidence for mid-Cenozoic turnover of a diverse continental biota

    doi: 10.1038/s41559-017-0355-8

    新生代の気候摂動がどのようにして多くの地域的生物相の組み立てに影響を与えたかを調べる研究は、化石記録が不十分なために進展していない。今回、分子系統解析データを利用することにより、オーストラリアのトカゲ類とヘビ類が中期新生代に再構成されたことが明らかになった。

  • Article: 果実食関連形質が熱帯ヤシの種分化を促進する

    Frugivory-related traits promote speciation of tropical palms

    doi: 10.1038/s41559-017-0348-7

    全球規模でのヤシの種レベルの系統発生と、ヤシの実のサイズおよび種分布のデータから、果実食関連形質が、地理や果実食動物の移動行動と相まって、多肉質の果実をつける植物の種分化に影響を与え得ることが明らかになった。

  • Article: 最近の急速な鳥類放散におけるモザイク状ゲノム進化

    Mosaic genome evolution in a recent and rapid avian radiation

    doi: 10.1038/s41559-017-0364-7

    キンパラ類は、パプアニューギニアとオーストラリアで急速な放散を遂げた小型鳥類である。キンパラ類の種ごとに固有の配色は、関連する少数の遺伝子で起こった遺伝子移入や祖先の遺伝的変動の選択によって生じたことが今回明らかになった。

  • Article: 折りたたみの配列エントロピーとアミノ酸置換の絶対速度

    Sequence entropy of folding and the absolute rate of amino acid substitutions

    doi: 10.1038/s41559-017-0338-9

    熱力学的安定性に対して純化選択を受けるタンパク質進化のシミュレーションにより、アミノ酸置換速度が、生物物理学的動態と、ほぼ中立の状態に至るエピスタシス相互作用から予測できることが明らかになった。

  • Article: 森林の病原性真菌類ナラタケ属に見られるゲノム拡張と系統特異的な遺伝的革新 OPEN

    Genome expansion and lineage-specific genetic innovations in the forest pathogenic fungi Armillaria

    doi: 10.1038/s41559-017-0347-8

    真菌類のナラタケ属(Armillaria)には、多くの植物に根腐れ病を引き起こして森林を荒廃させる病原性の種が含まれる。複数種のゲノムとトランスクリプトームの塩基配列を解読することにより、ナラタケ属真菌の分散、多細胞的発生、および病原性機構の遺伝的基盤が明らかになった。

  • Article: TALE型ホメオボックス遺伝子群の拡張とらせん卵割型発生の進化

    Expansion of TALE homeobox genes and the evolution of spiralian development

    doi: 10.1038/s41559-017-0351-z

    冠輪動物(軟体動物、環形動物および扁形動物を含む)では、初期胚の細胞分裂がらせん状に進行し、細胞運命は初期発生で規定される。今回、細胞運命の指定に重要な冠輪動物特有のTALE遺伝子群が見つかった。

  • Article: ワクチンに関連する肺炎球菌集団の動態における頻度依存選択

    Frequency-dependent selection in vaccine-associated pneumococcal population dynamics

    doi: 10.1038/s41559-017-0337-x

    肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)の多様な集団でアクセサリー座位の頻度が似通っていることが明らかになり、負の頻度依存選択がワクチン接種後の肺炎球菌集団の再構成を推進させることが示唆された。

  • Article: 原生動物病原体Leishmania donovaniの適応機構としてのハプロタイプ選択

    Haplotype selection as an adaptive mechanism in the protozoan pathogen Leishmania donovani

    doi: 10.1038/s41559-017-0361-x

    リーシュマニア属の原虫Leishmania donovaniは、ヒトの重大な病原体である。今回、異数性ターンオーバーとハプロタイプ選択が、哺乳類宿主体内でL. donovaniが環境変動に適応するために用いる2つの機構であることが分かった。

2017年11月

  • Perspective: 生態・進化理論の枠組みに当てはまらないマイクロバイオーム

    The microbiome beyond the horizon of ecological and evolutionary theory

    doi: 10.1038/s41559-017-0340-2

    宿主–マイクロバイオーム相互作用には、既存の生態・進化理論では完全に捉えることのできない固有の特徴があるのかもしれない。今回、そうした理論的枠組みをヒトのマイクロバイオームに適用する場合の潜在的な落とし穴が浮き彫りにされた。

  • Perspective: 湖沼生態系の復元力と連言錯誤

    Ecological resilience in lakes and the conjunction fallacy

    doi: 10.1038/s41559-017-0333-1

    生態学的な復元力の理論に関する実験的証拠の多くは、湖沼生態系から得られたものである。この種の研究成果を環境管理の意思決定に生かす際には、さらに厳密な論理的取り組みが求められる。

  • Review Article: 青い地球のための「地球の境界」

    Planetary boundaries for a blue planet

    doi: 10.1038/s41559-017-0319-z

    海洋バイオームを「地球の境界(planetary boundaries)」の枠組みに組み込むことで、生物物理学的な限界と地球システム管理に関する総合的な理解が促進される。

  • Brief Communication: ジャイアントパンダの保全状態をリモートセンシングの利用により再評価

    Reassessing the conservation status of the giant panda using remote sensing

    doi: 10.1038/s41559-017-0317-1

    最近、IUCNがジャイアントパンダの保全状態を「危機(endangered)」から「危急(vulnerable)」に格下げしたが、新たなGISデータおよびリモートセンシングデータは、パンダの生息地の縮小や分断化が進んでいることを示している。

  • Brief Communication: 実験的生態系における生態系機能の多様性に依存した経時的分岐

    Diversity-dependent temporal divergence of ecosystem functioning in experimental ecosystems

    doi: 10.1038/s41559-017-0325-1

    草原や森林での長期実験により、生物多様性と生態系機能の関係の経時的強化が、多様性の高い群集における機能向上によって主に促進されることが明らかになった。

  • Article: 熱帯の実生の乾燥耐性は周囲の多様性によってもたらされる

    Resistance of tropical seedlings to drought is mediated by neighbourhood diversity

    doi: 10.1038/s41559-017-0326-0

    熱帯の混合植物群落での水をめぐる種間競争の緩和は、乾燥に耐性のある群落をもたらす。乾燥時の実生の生育は、多様性のある群落で水をめぐる競争があまり激しくない場合には維持されるが、多様性がなくて競争が激しい場合には阻害される。

  • Article: 北半球の高緯度地域にわたる植生の生産力の変化速度

    Velocity of change in vegetation productivity over northern high latitudes

    doi: 10.1038/s41559-017-0328-y

    気候変化速度という概念を用いて、気候変動の下で植生の北方への移動が気温変化と同じペースで起こるかどうかが調べられた。リモートセンシングデータから、そうはならないことが示唆されたが、これはおそらく資源の利用可能性に起因している。

  • Article: 自生種と非自生種のフェノロジー的不均衡は北米種の生育期が生来的に短いことで説明される

    Innately shorter vegetation periods in North American species explain native–non-native phenological asymmetries

    doi: 10.1038/s41559-017-0307-3

    ある植物園で同一条件下で生育した北半球の木本植物396種を比較した結果、北米東部の種の生育期が欧州および東アジアの近縁種と比較して11%短いことが明らかになった。

  • Article: 相利作用と拮抗作用の連続体を抱含するネットワーク構造は群集のロバスト性を高める

    Network structure embracing mutualism–antagonism continuums increases community robustness

    doi: 10.1038/s41559-017-0320-6

    生態学的相互作用ネットワークは、相利共生関係と敵対関係の連続体に収まると考えられる。今回、植物食のオウムが植物に及ぼす有益な作用と有害な作用の両方を考慮に入れることで、群集のロバスト性が高まることが明らかになった。

  • Article: 四肢類の全球的分布から爬虫類を対象とする保全の必要性が明らかになる

    The global distribution of tetrapods reveals a need for targeted reptile conservation

    doi: 10.1038/s41559-017-0332-2

    現生爬虫類のほぼ全種の全球的分布から、種数パターンが他の分類群と空間的に異なっていることが分かった。保全の優先順位付けでは、爬虫類、中でもトカゲ類とカメ類の分布に特別の配慮をする必要がある。

  • Article: 生態系勘定によって天然資源管理のための明確で空間的なトレードオフが明らかになる

    Ecosystem accounts define explicit and spatial trade-offs for managing natural resources

    doi: 10.1038/s41559-017-0309-1

    生態系勘定は、経済と環境とのトレードオフを定量化する。今回、天然林の利用に関する地域的事例研究に生態系勘定を応用することで、土地管理の複雑な意思決定の方針を定めるための情報を得るのにこれがどのように利用できるかが示された。

  • Article: アメリカ大陸での中期完新世のイネ栽培化を示す証拠

    Evidence for mid-Holocene rice domestication in the Americas

    doi: 10.1038/s41559-017-0322-4

    モンテカステロ(アマゾニア南西部)の貝塚から出土した4000年前の植物微化石は、アメリカ大陸で独自にイネ栽培化が行われたことの証拠となる。

  • Article: 鯨類の脳の社会的および文化的起源

    The social and cultural roots of whale and dolphin brains

    doi: 10.1038/s41559-017-0336-y

    鯨類の脳には、ヒトの進化で見られるのと同様の大型化が認められる。今回、この大型化が鯨類の社会的および生態学的ニッチの拡大と関係していることが明らかになった。

  • Article: 鳥類では大きな脳が個体群を安定化させて可変的な生息地への定着を促進する

    Big brains stabilize populations and facilitate colonization of variable habitats in birds

    doi: 10.1038/s41559-017-0316-2

    環境の変動に対処する能力は、脳サイズの進化の主要な促進要因の1つだと考えられている。今回、鳥類ではむしろ認知能力が先行し、可変的な生息地への定着を促進した可能性があることが示された。

  • Article: 逆クレブス回路の多くの反応は金属によって促進される

    Metals promote sequences of the reverse Krebs cycle

    doi: 10.1038/s41559-017-0311-7

    逆クレブス回路は、生化学において重要な潜在的で始原的な同化経路である。今回、この回路の反応の半分以上が金属や金属イオンによって酵素なしで促進され得ることが明らかになった。

  • Article: 多面発現遺伝子によって制約される脊椎動物の進化

    Constrained vertebrate evolution by pleiotropic genes

    doi: 10.1038/s41559-017-0318-0

    脊索動物では基本的な解剖学的パターンが保存されている。今回、脊椎動物の胚発生における発生中期の保存が明らかになり、胚発生中期プログラムの発生後期への使い回しによって進化上の制約がもたらされたことが示唆された。

  • Article: 全脊椎動物の共通祖先に存在した移動性の対鰭筋前駆細胞群

    Migratory appendicular muscles precursor cells in the common ancestor to all vertebrates

    doi: 10.1038/s41559-017-0330-4

    硬骨魚類と軟骨魚類の対鰭筋の進化はまだよく分かっていない。今回、硬骨魚類で知られている移動性の筋前駆細胞群がトラザメにも存在することが明らかになった。

  • Article: 有櫛動物の類縁関係と、他の全動物の姉妹群としてのその位置付け

    Ctenophore relationships and their placement as the sister group to all other animals

    doi: 10.1038/s41559-017-0331-3

    新たに塩基配列が解読された有櫛動物のトランスクリプトームを既存のデータと組み合わせることにより、有櫛動物が他の全動物の姉妹群であることが確認され、約3億5000万年前の放散に加えて、漂泳生活から底生生活への移行が複数回あったことが示唆された。

  • Article: 系統交雑の生態学的影響が異なることで世代を越えた選択が促進される

    Transgenerational selection driven by divergent ecological impacts of hybridizing lineages

    doi: 10.1038/s41559-017-0308-2

    生態および進化の過程は個体群の表現型構成を形づくる。イトヨのメソコスム実験で、表現型、個体群密度および環境の間の相互作用がどのように進化の経路を決定付けるのかが示された。

  • Article: 感度と特異性とのトレードオフを人口統計学的な枠組みで捉えることで、免疫にかかる選択を明らかにする

    Demographically framing trade-offs between sensitivity and specificity illuminates selection on immunity

    doi: 10.1038/s41559-017-0315-3

    病原体が侵入すると、免疫系は感度と特異性とのトレードオフに直面する。今回、疫学ツールを使って、最適な免疫識別の進化が生活史戦略との関連で調べられた。

  • Article: 歴史的なヒト集団で長寿を促進する遺伝子の選択を評価

    Measuring selection for genes that promote long life in a historical human population

    doi: 10.1038/s41559-017-0329-x

    MooradとWallingは、歴史的データセットを利用して、ヒトの生殖期後の寿命に関係すると考えられている選択を調べた。男女とも若年期の適応度に有利に働く間接的選択は見いだされたが、50歳を超える女性にはそうした選択が全く認められなかった。

2017年10月

  • Perspective: 霊長類考古学の進化

    Primate archaeology evolves

    doi: 10.1038/s41559-017-0286-4

    霊長類考古学という領域が最初に提案されてからほぼ10年が経過した。この領域の現状を、最近の発見や今後の方向性および課題も含めて概説し、考古学の「人類を中心に考える時代」が終わったことを示す。

  • Review Article: 生物学者のためのベイズ法による系統解析の手引き

    A biologist’s guide to Bayesian phylogenetic analysis

    doi: 10.1038/s41559-017-0280-x

    ベイズ法による系統解析は、進化生物学者や生態学者の間できわめて人気が高い。この総説論文では、ベイズ推定の主な特徴をまとめ、ベイズ計算の実用面をいくつか検討している。

  • Article: ブラジルで見つかったエディアカラ紀末期からカンブリア紀初期のメイオファウナ左右相称動物を示す生痕学的証拠

    Ichnological evidence for meiofaunal bilaterians from the terminal Ediacaran and earliest Cambrian of Brazil

    doi: 10.1038/s41559-017-0301-9

    ブラジルのエディアカラ紀–カンブリア紀移行期の生痕化石は、堆積物中を移動する線虫様動物が掘った穴の痕跡だと解釈され、この動物は既知最古の化石メイオファウナ左右相称動物とみられる。

  • Article: 前期カンブリア紀蠕虫の宿主特異的な外寄生

    Host-specific infestation in early Cambrian worms

    doi: 10.1038/s41559-017-0278-4

    中国で見つかった前期カンブリア紀の新種の蠕虫は、左右相称動物の宿主特異的な外寄生を示す最古の証拠だと考えられる。

  • Article: 海洋プランクトンのフェノロジーの環境的構成

    Environmental structuring of marine plankton phenology

    doi: 10.1038/s41559-017-0287-3

    海洋上層プランクトンのフェノロジーの全球パターンが調べられ、このパターンが緯度および生産力の状況によって大きく変動することや、日射量が全球的に重要な役割を担っていることが明らかになった。

  • Article: 競争し合う種は潜在的なニッチの多くを埋めず、そのままにする

    Competing species leave many potential niches unfilled

    doi: 10.1038/s41559-017-0295-3

    理論からは、競争し合う種はニッチ空間を埋めると予測されているが、これを実証する証拠は得られていない。今回著者らは、ニッチへの種の詰め込みが、制御要因が代替可能かどうかに依存することを示し、理論とデータの折り合いをつけた。

  • Article: 地中海低木地における群落規模での花の色と香りの統合

    Community-wide integration of floral colour and scent in a Mediterranean scrubland

    doi: 10.1038/s41559-017-0298-0

    地中海地方の低木地「フリガナ」に咲く花は、香りの放出(揮発性放出)と色(花冠の反射スペクトル)のパターンが統合されていて予測可能である。こうした表現型の統合は、ハナバチ類の感覚能力や知覚バイアスと一致している。

  • Article: 熱帯の土地利用変化がさまざまな栄養段階の生物多様性に与える直接的で連鎖的な影響

    Direct and cascading impacts of tropical land-use change on multi-trophic biodiversity

    doi: 10.1038/s41559-017-0275-7

    土地利用の直接的で連鎖的な影響は、栄養段階を越えて微生物から鳥類までさまざまな分類群のバイオマスや種数を変化させることが、インドネシア・スマトラ島の多重分類群研究で明らかになった。

  • Article: 雌のカッコウの鳴き声は宿主の防御を的外れな敵に向けさせる

    Female cuckoo calls misdirect host defences towards the wrong enemy

    doi: 10.1038/s41559-017-0279-3

    カッコウの雌は、宿主が卵を産んだ巣の中に自分の卵を産みつけた後、タカのような鳴き声を上げることが多い。今回、この鳴き声で宿主の親鳥の注意をそらすことによって托卵の成功率が高まることが、野外実験で明らかになった。

  • Article: スズメ目鳥類では染色体逆位の差異が生息域の重なりと相関する

    Chromosomal inversion differences correlate with range overlap in passerine birds

    doi: 10.1038/s41559-017-0284-6

    近縁なスズメ目鳥類間の染色体逆位の差異は、種の生息域が重なり合う範囲によって予測されることから、逆位には、雑種形成が起こるときに組換えを抑制するという選択上の有利性があることが示唆される。

  • Article: イソギンチャクで見つかった腸様の外胚葉組織は胚葉の相同性に対する疑問を提起する

    Gut-like ectodermal tissue in a sea anemone challenges germ layer homology

    doi: 10.1038/s41559-017-0285-5

    刺胞動物の内胚葉は左右相称動物の内胚葉および中胚葉と相同だと従来考えられてきたが、今回、イソギンチャクで腸様の外胚葉の存在が明らかになった。これは左右相称動物の内胚葉に対応しており、胚葉の相同性に関する別のモデルの裏付けとなる。

  • Article: 鳥類を含む爬虫類の進化と発生の過程では頭蓋冠が脳に追随している

    The skull roof tracks the brain during the evolution and development of reptiles including birds

    doi: 10.1038/s41559-017-0288-2

    四肢類では分類群全般にわたって脳と頭蓋の発生が密接に関係している。今回、爬虫類の進化的移行および個体発生段階にわたる脳と頭蓋冠との密接な関係が明らかになった。

  • Article: 中程度の相乗的多面発現性は生態学的時間の中で適応進化を促進する

    Intermediate degrees of synergistic pleiotropy drive adaptive evolution in ecological time

    doi: 10.1038/s41559-017-0297-1

    表現型の急速な変化の根底にある遺伝的構造については、まだほとんど分かっていない。今回シロイヌナズナを使った研究で、多面発現性が中程度である遺伝子の適応進化が最も高速であることが示された。

  • Article: 自然発生的なドメインの融合とタンパク質の再局在化による適応進化

    Adaptive evolution by spontaneous domain fusion and protein relocalization

    doi: 10.1038/s41559-017-0283-7

    新しい遺伝子は、変異をはじめとするいくつかの機構によって生じ得る。今回著者らは、ドメインの融合による新遺伝子の出現とタンパク質の再局在化によって適応的な表現型が生じることを、シュードモナス属細菌で明らかにした。

  • Article: 古代の北米全体に及ぶライム病の拡散をゲノミクスから洞察

    Genomic insights into the ancient spread of Lyme disease across North America

    doi: 10.1038/s41559-017-0282-8

    細菌Borrelia burgdorferi に感染したダニによって拡散するライム病は1970年代に初めて記載報告されたが、その起源についてはよく分かっていない。今回、北米のダニのゲノミクス研究から、ライム病の起源が最終氷期極大期より前であったことが示された。

  • Article: ヒトのエピジェネティックな多様性の世界的パターン

    Worldwide patterns of human epigenetic variation

    doi: 10.1038/s41559-017-0299-z

    今回、多様な5つのヒト集団でDNAメチル化パターンが調べられた。その結果、ヒトのDNAメチル化の進化的安定性は、これまで植物で観察されたものよりもはるかに高いことが分かった。

2017年9月

  • Perspective: 社会的捕食戦略を研究するための多次元的な枠組み

    A multidimensional framework for studying social predation strategies

    doi: 10.1038/s41559-017-0245-0

    捕食者は集団で狩りをすることで採餌の効率を高めることができる。今回、行動に関する5つの重要な次元に従って社会的捕食戦略を評価するための枠組みが概説されている。

  • Review Article: ミツバチの病気を管理するための生態および進化の面からの取り組み

    Ecological and evolutionary approaches to managing honeybee disease

    doi: 10.1038/s41559-017-0246-z

    世界各地のミツバチ個体群の急激な縮小には、相互作用する複数の要因が関与している。今回、寄生生物と病原体の影響が検討され、生態や進化の原則からどのようにして管理活動の指針を得ることができるのかが概説されている。

  • Article: 生態系機能は水文気象学的変動によって制限される

    Ecosystem functioning is enveloped by hydrometeorological variability

    doi: 10.1038/s41559-017-0277-5

    大気圏と生物圏は本質的に連結した系である。今回、時間単位から10年単位までさまざまな時間スケールのデータセットを統合することにより、時系列で見た場合に水文気象学的な限界が生態系の変動を制限していることが明らかになった。

  • Article: 個体群の消滅がメタ個体群の存続を促進する場合がある

    Population extinctions can increase metapopulation persistence

    doi: 10.1038/s41559-017-0271-y

    理論モデリングおよび室内ミクロコスム実験により、個体群の破滅的な消滅が、「空間的ヒュドラー効果(spatial hydra effect)」によって、メタ個体群の存続を実際に促進する場合があることが明らかになった。

  • Article: 乾燥による樹木枯死の生理学的機序を多種にわたって統合

    A multi-species synthesis of physiological mechanisms in drought-induced tree mortality

    doi: 10.1038/s41559-017-0248-x

    乾燥による樹木枯死の機序は十分に解明されていない。今回、複数の樹木種にわたって木部の水伝導性の60%を超える喪失が枯死と関連付けられ、一方で炭素飢餓は普遍的ではないことが示された。

  • Article: 気孔機能の多様性は植物の炭素フラックスや水フラックスのモデリングに不可欠である

    Diversity in stomatal function is integral to modelling plant carbon and water fluxes

    doi: 10.1038/s41559-017-0238-z

    作物や生態系の水および炭素のフラックスモデルには、気孔コンダクタンスの推定が重要である。今回、温帯樹木種のデータから気孔機能の種間変動が明らかになった。これを考慮に入れることで、モデルの精度を上げることができる。

  • Article: 農業用殺虫剤はマルハナバチのコロニー形成開始を抑制して個体群消滅の可能性を高める

    Pesticide reduces bumblebee colony initiation and increases probability of population extinction

    doi: 10.1038/s41559-017-0260-1

    ネオニコチノイド系殺虫剤「チアメトキサム」は、マルハナバチの女王バチのコロニー形成開始率を低下させることが明らかになった。この作用がコロニーの消滅率を高める可能性があることが、モデリングで示された。

  • Article: 海洋での養殖の可能性を全球的にマッピング

    Mapping the global potential for marine aquaculture

    doi: 10.1038/s41559-017-0257-9

    海洋での養殖は食料安全保障を向上させる可能性がある。今回、全球レベルの解析から、沿岸海域の空間によって養殖の可能性が制限されることはなさそうだと分かった。

  • Article: 土壌細菌群集では正の選択が遺伝子の可動化と伝播を抑制する

    Positive selection inhibits gene mobilization and transfer in soil bacterial communities

    doi: 10.1038/s41559-017-0250-3

    細菌間では可動性遺伝因子の伝播が広く起こっており、適応を促進している。今回、水銀耐性に対して正の選択を受けている土壌細菌群集では、遺伝子の水平伝播が抑制されていることが明らかになった。

  • Article: 代償性変異は抗生物質耐性プラスミドに対する全般的寛容性を向上させる

    Compensatory mutations improve general permissiveness to antibiotic resistance plasmids

    doi: 10.1038/s41559-017-0243-2

    プラスミドは抗生物質耐性の進化を促進するが、細菌-プラスミドの進化に関してはほとんど分かっていない。細菌は、1つのプラスミドに適応すると、プラスミドの保有に対して全般的に寛容になることが今回示された。

  • Article: ゲノム内共進化による抗生物質耐性の適応的調節

    Adaptive modulation of antibiotic resistance through intragenomic coevolution

    doi: 10.1038/s41559-017-0242-3

    可動性遺伝因子は宿主細菌に抗生物質耐性をもたらす場合がある。しかし、可動性遺伝因子の存在は宿主染色体との対立につながってコストがかかることが多く、その結果、ゲノム内共進化やそれに伴う耐性調節が促進される場合がある。

  • Article: 有顎脊椎動物の時間系統樹を系統トランスクリプトミクスによって安定化

    Phylotranscriptomic consolidation of the jawed vertebrate timetree

    doi: 10.1038/s41559-017-0240-5

    ゲノムデータを利用した系統発生関係の再構築は威力があるものの、容易ではない。今回著者らは、バイオインフォマティクス・パイプラインを開発し、系統ゲノミクスデータセットを利用して有顎脊椎動物の進化的類縁関係を再構築した。

  • Article: 南極の硬骨魚類の生物多様性の揺り籠と博物館

    Cradles and museums of Antarctic teleost biodiversity

    doi: 10.1038/s41559-017-0239-y

    系統発生および生物地理学のモデリングにより、高緯度の南極沿岸環境がノトテニア亜目魚類の種多様性を支える「進化のシンク」となってきたことが明らかになった。ノトテニア類は、南極海における硬骨魚類の多様性の大半を占めている。

  • Article: オーストラリア大陸全域のカエル成体とオタマジャクシはマクロ進化パターンが異なる

    Adult frogs and tadpoles have different macroevolutionary patterns across the Australian continent

    doi: 10.1038/s41559-017-0268-6

    生活環が複雑な動物は、生活段階ごとに異なる選択圧を受ける。今回、オーストラリアのカエルとそれらのオタマジャクシの大きく異なる形態および進化史が明らかになり、両者が独立して進化していることが示唆された。

  • Article: 四肢類における後肢の位置の多様性の基盤となる、GDF11による仙椎–後肢ユニットの協調的な構造統合

    Anatomical integration of the sacral–hindlimb unit coordinated by GDF11 underlies variation in hindlimb positioning in tetrapods

    doi: 10.1038/s41559-017-0247-y

    脊椎動物の肢の位置はさまざまに異なっている。今回、GDF11が、仙椎と後肢の位置決めを統合する重要な因子であり、脊椎動物における後肢の位置の多様化の基盤となっていることが明らかになった。

  • Brief Communication: 遺伝子流動は繊毛虫ミクロコスムにおいて生息場所選択下での局所的適応に有利に働く

    Gene flow favours local adaptation under habitat choice in ciliate microcosms

    doi: 10.1038/s41559-017-0269-5

    進遺伝子流動は、生息場所の選択と連動しないかぎり局所的適応を妨げることが、理論によって予測されている。今回、繊毛虫ミクロコスムにおいて、生息場所の選択を伴う分散が局所的適応に有利に働くことが示された。

2017年8月

  • Perspective: 多種共存の空間スケール

    The spatial scales of species coexistence

    doi: 10.1038/s41559-017-0230-7

    種の多様性が維持される仕組みの理解は空間スケールに依存する。今回、多種共存と面積との関係性が提案されたことで、スケール依存性の解明が進み、生物多様性の保全に対する群集生態学の寄与が拡大するだろう。

  • Review Article: バイサルファイト塩基配列解読データセットにおける生態学的および進化的な手掛かりの最大化

    Maximizing ecological and evolutionary insight in bisulfite sequencing data sets

    doi: 10.1038/s41559-017-0229-0

    バイサルファイト塩基配列解読法は、ゲノム規模のDNAメチル化の研究に広く利用されている。この概説論文では、非モデル生物の研究で特に重要となるバイサルファイト塩基配列解読法に関連する方法論的および統計学的な検討事項を論じている。

  • Review Article: 分子システムにおける複雑な適応の進化

    Evolution of complex adaptations in molecular systems

    doi: 10.1038/s41559-017-0228-1

    複雑な適応の進化は概念上の難題をもたらす。今回著者らは、複雑な適応の進化における適応的シナリオと非適応的シナリオを検討し、新たな適応経路へアクセスできるようにする分子機構を提案している。

  • Article: 葉化石の分子シグネチャーから絶滅植物の類縁関係に関する予想外の新証拠が得られた

    Molecular signatures of fossil leaves provide unexpected new evidence for extinct plant relationships

    doi: 10.1038/s41559-017-0224-5

    新たな古植物学的方法によって葉化石のクチクラの分子シグネチャーが分析され、ニルッソニア目とベネチテス目や、イチョウ目とチェカノフスキア目(別名Leptostrobales)など、これまで不明確だった系統関係が明らかになった。

  • Article: 鮮新世の海洋大型動物相の絶滅と、機能的多様性に対するその影響

    The Pliocene marine megafauna extinction and its impact on functional diversity

    doi: 10.1038/s41559-017-0223-6

    鮮新世の海洋大型動物相の絶滅は機能的多様性の喪失を引き起こし、これが更新世に新たに進化した分類群によって軽減されることはなかった。この論文では、重要な絶滅促進要因として、生産力のある沿岸生息環境の急激な消失を指摘している。

  • Article: 負の密度依存性はさまざまなスケールで生物多様性–生産力の関係を調整する

    Negative density dependence mediates biodiversity–productivity relationships across scales

    doi: 10.1038/s41559-017-0225-4

    さまざまなスケールの生物多様性および生産力の変化の背後にあるメカニズムは、ほとんど解明されていない。今回著者らは、北米西部各地の樹木のβ多様性に見られる変化が、同種個体間の負の密度依存性によって説明されることを示している。

  • Article: 最大の動物が最速でない理由は一般的なスケーリング則から明らかになる

    A general scaling law reveals why the largest animals are not the fastest

    doi: 10.1038/s41559-017-0241-4

    動物の最高速度は体重に対応していてもよさそうなものだが、実際には最大の動物が最速なわけではない。このことは、一般的なスケーリング則で、加速時間に一定の限界があるために山型の関係性が生じることから説明される。

  • Article: リスクの高い時間とリスクの高い場所が相互作用して被食者の行動に影響を与える

    Risky times and risky places interact to affect prey behaviour

    doi: 10.1038/s41559-017-0220-9

    ザンビアの国立公園における捕食者–被食者相互作用から、リスクタイプ間の相互作用が明らかになった。つまり、被食者の見張り行動は、短期的リスクが高い場合には長期的リスクの高い場所に対して強く応答するが、短期的リスクが低い場合には強く応答しない。

  • Article: 将来の耕作地の拡大と農業集約化で危機にさらされる生物多様性

    Biodiversity at risk under future cropland expansion and intensification

    doi: 10.1038/s41559-017-0234-3

    この論文で著者らは、将来起こりうる農業の変化による生物多様性の喪失を予測している。農業の拡大は世界各地で種数と種個体数を脅かし(地域によっては最大で3分の1が失われる)、保護区と高リスクの農業拡大地域とがほとんど重なっていない場合も多い。

  • Article: 草地景観では生物多様性の喪失を伴わない農業集約化が可能である

    Agricultural intensification without biodiversity loss is possible in grassland landscapes

    doi: 10.1038/s41559-017-0227-2

    生産力の変化に対する個々の種の応答を評価するために、生産力勾配に沿った100カ所以上の草地で収集した1000種を超える節足動物のデータセットから、総生産量を削減せずに節足動物の保全状況を改善できることが明らかになった。

2017年7月

  • Perspective: 地球観測をハイスループットの生物多様性データと結び付ける

    Connecting Earth observation to high-throughput biodiversity data

    doi: 10.1038/s41559-017-0176

    自動地球観測記録、ハイスループット塩基配列解読、および生態学的モデリングの最新の進歩を組み合わせて、生物多様性のさまざまな側面をほぼリアルタイムで捉える新しい手法を概説する。

  • Perspective: 生物多様性と生態系の多機能性との関係を見直す

    Revisiting the biodiversity–ecosystem multifunctionality relationship

    doi: 10.1038/s41559-017-0168

    生物多様性と生態系機能の関係は、どれだけ多くの機能を考慮しようとも不変である。生物多様性は多機能性のレベルに影響を及ぼし、そうした多機能性への影響は単一機能に及ぼす影響の平均に等しい。

  • Brief Communication: ハリナシミツバチ類における女王バチのクチクラ炭化水素と働きバチの生殖の進化

    Evolution of queen cuticular hydrocarbons and worker reproduction in stingless bees

    doi: 10.1038/s41559-017-0185

    ハリナシミツバチ類の系統樹上に、働きバチの生殖の発生率と女王バチのフェロモンの化学組成を共にマッピングした結果、女王バチの炭化水素プロファイルと働きバチの生殖との間には何の関連性も見いだされなかった。

  • Analysis: 局所的な成功から全球規模の解決へと拡大させることで漁業の乱獲を終わらせる

    Ending fishery overexploitation by expanding from local successes to globalized solutions

    doi: 10.1038/s41559-017-0179

    世界の漁業資源の約30%は過剰漁獲の状態にあり、これを抑制することは「持続可能な開発目標(SDGs)」の達成目標の1つである。漁獲データを解析した結果、開発途上国では先進国のような進捗が見られないことが分かった。

  • Article: 初期の爆発的な多様化が動物相の陸上への定着を規定した

    Early bursts of diversification defined the faunal colonization of land

    doi: 10.1038/s41559-017-0175

    生痕化石の分析から、動物相の海洋から陸上への移行は、エディアカラ紀の最初の沿岸域侵入に続いて、石炭紀に広範囲に広がり、それに付随して爆発的な多様化が繰り返し起こったことが明らかになった。

  • Article: さまざまな分類群にわたる外来種の豊富さの全球的ホットスポットと相関要因

    Global hotspots and correlates of alien species richness across taxonomic groups

    doi: 10.1038/s41559-017-0186

    島嶼の186地域および大陸の423地域にわたって8つの分類群を分析した結果、定着した外来種の種数は、1人あたり国内総生産、人口密度、および面積が上位の地域で多く、その影響は島嶼で最大となっていることが分かった。

  • Article: クジラ資源の歴史的激減に先行する体サイズ変化と早期警告シグナル

    Body size shifts and early warning signals precede the historic collapse of whale stocks

    doi: 10.1038/s41559-017-0188

    商業的に漁獲される種の減少を予測することは、乱獲を防ぐために極めて重要である。捕鯨の歴史的記録を分析した結果、クジラ資源が急減する40年前の体サイズおよび個体数データに早期の警告シグナルが見いだされた。

  • Article: 広く用いられている海洋地震探査用エアガンの使用は動物プランクトンに悪影響を及ぼす

    Widely used marine seismic survey air gun operations negatively impact zooplankton

    doi: 10.1038/s41559-017-0195

    海底の石油鉱床を探るための海洋地震探査では高圧エアガンを使用するが、それが海洋生物に与える影響はほとんど分かっていない。今回、その音波衝撃への暴露が、1 kmを超える範囲の動物プランクトンの死滅率上昇と関係付けられることが明らかになった。

  • Article: 競争に誘発される飢餓がナンキョクオキアミの大規模な周期的個体数変動を生じさせる

    Competition-induced starvation drives large-scale population cycles in Antarctic krill

    doi: 10.1038/s41559-017-0177

    ナンキョクオキアミの周期的な個体数変動を生じさせる要因は、完全には解明されていない。今回、気候要因を重視した過去の研究とは異なり、食物をめぐる種内競争が5~6年周期の変動の主な要因であることが明らかになった。

  • Article: 欧州の海水魚の一貫した保全状態評価から地域的な相違と大型動物相の喪失が明らかになる

    Coherent assessments of Europe's marine fishes show regional divergence and megafauna loss

    doi: 10.1038/s41559-017-0170

    欧州の海水魚1020種の保全状態を評価した結果、大型魚類(1.5 m超)の半数が絶滅の危機にあり、資源状態は地理的に多様であることが分かった。地中海ではほぼすべての資源が乱獲されているのに対し、北欧の資源の多くは乱獲されていないのである。

  • Article: 絶滅の負債(extinction debt)と定着の売掛(colonization credit)が北米東部の樹木の分布域移動を遅延させている

    Extinction debt and colonization credit delay range shifts of eastern North American trees

    doi: 10.1038/s41559-017-0182

    樹木は固着性で寿命が長いため、気候変動への応答が遅れて現れやすい。今回、北米の優占樹木種が気候との平衡状態になく、分布域の縮小が拡大を上回るペースで進んでいることが明らかになった。

  • Article: 古代世界におけるネコの分散の古遺伝学

    The palaeogenetics of cat dispersal in the ancient world

    doi: 10.1038/s41559-017-0139

    ネコの考古学的遺物の古代DNAを解析した結果、ネコが新石器時代以降の交易路に沿って分散したことが明らかになった。また、その遺伝子プールから、複数の地理的起源の系統が交雑したことや、トラネコ模様の対立遺伝子が中世に現れたことが分かった。

  • Article: 欧州におけるFADS遺伝子の食餌への適応は時代や地理によって異なる

    Dietary adaptation of FADS genes in Europe varied across time and geography

    doi: 10.1038/s41559-017-0167

    脂肪酸デサチュラーゼ(FADS)遺伝子がコードしているのは、野菜中心の食生活を送る人にとって不可欠な脂肪酸を生合成する酵素である。今回、農耕開始の前と後の欧州人では別々の対立遺伝子に正の選択がかかっていたことが明らかになり、南欧の農民には最も強い選択が認められた。

  • Article: 最小祖先偏差による系統ルート決定

    Phylogenetic rooting using minimal ancestor deviation

    doi: 10.1038/s41559-017-0193

    系統樹の祖先‐子孫関係を判断する既存のルート決定法には限界がある。今回提案された最小祖先偏差(minimal ancestor deviation)という新しいルート決定法は、外群の情報が不要であり、あらゆるタイプのデータに利用することができる。

  • Article: 家族内の協力的な相互作用が体サイズの進化的変化の能力を高める

    Cooperative interactions within the family enhance the capacity for evolutionary change in body size

    doi: 10.1038/s41559-017-0178

    選択に対する形質の応答のモデルで社会的環境が要因とされることはまれである。今回、シデムシ個体群は、より大きな体サイズの選択に応答するが、それは親が子育てを行う場合に限られることが明らかになった。

  • Article: 鳴禽類2種のヒナによる早期のさえずりの聞き分けは遺伝的に分岐している

    Genetic divergence of early song discrimination between two young songbird species

    doi: 10.1038/s41559-017-0192

    鳴禽類は、同種個体のさえずりと近縁種のさえずりを、ヒナのうちから聞き分けている。今回、2種のヒタキ類に見られるさえずりの聞き分けは遺伝的要素が強く、社会的経験によって決定付けられるわけではないことが示された。

  • Article: 抗生物質産生微生物の群集における生態‐進化動態の多様な様式

    Diverse modes of eco-evolutionary dynamics in communities of antibiotic-producing microorganisms

    doi: 10.1038/s41559-017-0189

    抗生物質の相互作用と多様性との関係は、生態学的に安定したin silicoモデルで検討されることが多い。しかし、生物学的に現実性のある特徴を組み込むことで、共存が促進されて、理想化したモデルよりも多様性が高まることが分かった。

2017年6月

  • Perspective: 進化のエネルギーの拡張

    The energy expansions of evolution

    doi: 10.1038/s41559-017-0138

    生命の進化史と地球自体の歴史は密接に絡み合っている。このPerspective論文では、こうした相互関係や進化の過程を形作ったエネルギー源である、地球化学的エネルギー、太陽光、酸素、動物(肉食)、および火に着目している。

  • Perspective: 現存生物相の進化を理解するために必要な5つの古生物学的法則

    Five palaeobiological laws needed to understand the evolution of the living biota

    doi: 10.1038/s41559-017-0165

    今回著者が提示する、化石データに由来する5つの法則は、種の絶滅と寿命、種数、出現速度、絶滅速度、および多様化の関係を記述している。これらの法則は、進化および生態学の研究に極めて重要である。

  • Perspective: オープンデータサイエンスツールを利用して短い時間で科学の質を向上させた我々の道筋

    Our path to better science in less time using open data science tools

    doi: 10.1038/s41559-017-0160

    研究に再現性を持たせるには、ワークフローを透明性のある合理的なものにすることが出発点となる。今回著者らは、共同研究であるOcean Health Indexプロジェクトにオープンデータツールを用いることで、再現性の向上をいかに達成できたかを報告している。

  • Article: アウストラロピテクス属からヒト属への移行が起こった後期鮮新世の環境変化

    Late Pliocene environmental change during the transition from Australopithecus to Homo

    doi: 10.1038/s41559-017-0159

    アワシュ渓谷下流(エチオピア)およびトゥルカナ盆地(ケニア/エチオピア)にいた初期ヒト族の環境の安定同位体および群集動物相を分析した結果、ヒト属(Homo)の出現と同時期(約280万年前)に環境変化と分岐が起こったことが明らかになった。

  • Article: 空間をめぐる競争では多様性が多様性を生む

    Diversity begets diversity in competition for space

    doi: 10.1038/s41559-017-0156

    固着生物群集は、空間をめぐる競争があっても種数の多さを維持する場合がある。今回、真菌を使った競争分析によって、非推移的競争(intransitive competition)が2者間の競争的排除を凌駕して生物多様性を促進することが明らかになった。

  • Article: 環境変化の下では分散が生態ネットワークの再構成に大きく影響する

    Dispersal governs the reorganization of ecological networks under environmental change

    doi: 10.1038/s41559-017-0162

    環境変化に応答して種の個体数や分布域が変化すると、複雑な生態ネットワークが乱される可能性がある。今回、シミュレーションモデルから、ネットワーク内の種の結び付きが維持されるかどうかは分散の程度によって決まることが分かった。

  • Article: 発散的な植物–土壌フィードバックが将来の標高範囲や生態系の動態を変化させる可能性がある

    Divergent plant-soil feedbacks could alter future elevation ranges and ecosystem dynamics

    doi: 10.1038/s41559-017-0150

    植物–土壌間の可変的な生物相互作用は樹木種の移動や分布域細分化に影響を与えており、将来の種分布の予測確度を向上させるには、土壌パラメーターをモデルに組み込むことが必要だと考えられる。

  • Article: サンゴ礁海洋景観での仔魚の分散

    Larval fish dispersal in a coral-reef seascape

    doi: 10.1038/s41559-017-0148

    クマノミ類とチョウチョウウオ類それぞれ1種の仔魚の分散が、1万km2の海域で2年間にわたって追跡された。この調査の規模は、海洋保護区ネットワークの設計に関する情報を提供したり、それらの成果を検証したりするのに十分な大きさである。

  • Article: 海洋の底生生態系の崩壊に先立つ回復距離増大の直接観測

    Direct observation of increasing recovery length before collapse of a marine benthic ecosystem

    doi: 10.1038/s41559-017-0153

    生態系の臨界遷移の空間的指標は、これまでは実験室でしか確認されていなかった。今回、潮間帯自然群集において、回復距離(recovery length)の増大が臨界減速の空間的シグネチャーになることが示された。

  • Article: 海底火山噴火によってできた新たな微生物生息地

    A submarine volcanic eruption leads to a novel microbial habitat

    doi: 10.1038/s41559-017-0144

    海底火山噴火が局地的に海底を一掃した後で、Thiolava venerisという新属新種細菌の糸状体が水深130 mの海底に定着した。

  • Article: 進化的な連続体を網羅する生物多様性の空間的保全の優先順位付け

    Spatial conservation prioritization of biodiversity spanning the evolutionary continuum

    doi: 10.1038/s41559-017-0151

    保全計画の策定にあたっては、種間および種内の進化的類縁関係に配慮することが重要だが、実際にそれが考慮された例はほとんどない。新たな枠組みによって、進化的多様性を考慮に入れた優先的保全地域の見極めが行われた。

  • Article: 環境と遺伝という対照的な作用が平行進化の連続体を生じる

    Contrasting effects of environment and genetics generate a continuum of parallel evolution

    doi: 10.1038/s41559-017-0158

    イトヨのつがいに見られる環境異質性は平行進化からの偏向に寄与しているが、選択の対象となるゲノム標的は環境の似通ったつがいの間でより類似しており、平行進化の連続体の存在が示唆された。

  • Article: 新しい遺伝子は、遺伝子新生の前適応仮説で予測されているように極めて無秩序な構造をしている

    Young genes are highly disordered as predicted by the preadaptation hypothesis of de novo gene birth

    doi: 10.1038/s41559-017-0146

    タンパク質コード遺伝子は非コード塩基配列から新たに生じる場合もある。今回、新しい遺伝子が過度の遺伝子様構造特性を有していることが明らかになった。このことは、新規の遺伝子が、毒性回避のために前適応した塩基配列から生じることを示唆している。

  • Article: ランダムな配列は、生物活性を持つRNAやペプチドの豊富な供給源である

    Random sequences are an abundant source of bioactive RNAs or peptides

    doi: 10.1038/s41559-017-0127

    DNAがランダムに組み合わさることで機能を持つようになるとは思えないため、非コードDNAから遺伝子ができることはめったにないと考えられている。今回、ランダムな配列のペプチドが大腸菌の適応度に影響を与え得ることが明らかになった。このことは、ゲノムのランダムな部分には機能を持つようになる可能性があることを示唆している。

  • Article: 精子と性ペプチドが雌ショウジョウバエの攻撃を促す

    Sperm and sex peptide stimulate aggression in female Drosophila

    doi: 10.1038/s41559-017-0154

    雌による他の雌への攻撃は自然界で広く見られるが、そうした行動を引き起こす要因は分かっていない。今回、交尾後の雌ショウジョウバエの攻撃が精子によって強く促されていることが示された。

  • Article: 知覚による繁殖コストが雄ショウジョウバエの加齢と生理を変化させる

    Perceptive costs of reproduction drive ageing and physiology in male Drosophila

    doi: 10.1038/s41559-017-0152

    繁殖では、進化的適応度の最適化の結果として生理的コストが生じる。雄ショウジョウバエでは、主要な繁殖コストが雌性フェロモンの知覚の結果生じたものであり、交尾行動がそれらのコストを軽減することが明らかになった。

  • Article: 誘導期の最適化が細菌酵素の進化を方向付ける

    Optimization of lag phase shapes the evolution of a bacterial enzyme

    doi: 10.1038/s41559-017-0149

    変異は進化の原動力となる多様性をもたらすが、変異が適応度に及ぼす影響についてはほとんど解明されていない。今回、大腸菌の重要な酵素であるアデニル酸キナーゼ(Adk)の変異が、個体群成長の複数の段階に影響を与えることが示された。

2017年5月

  • Review Article: 海洋生態系に広がるマイクロプラスチックごみの相互作用

    Interactions of microplastic debris throughout the marine ecosystem

    doi: 10.1038/s41559-017-0116

    微視的なプラスチック粒子が海洋に広く存在することは、生態学的にも社会的にも懸念される問題である。この論文で著者らは、海洋環境中のマイクロプラスチックとの相互作用による生物への影響を概説している。

  • Review Article: 全球的な環境変化に対する草原生態系の応答を10年にわたって調べた結果を考察

    A decade of insights into grassland ecosystem responses to global environmental change

    doi: 10.1038/s41559-017-0118

    「Nutrient Network」は、世界各地の草原実験サイトを結ぶ共同実験ネットワークである。この論文では、同ネットワークの最初の10年を総括し、生態系の生産力や安定性、草食動物や侵入種の影響について考察している。

  • Article: 大型動物相の同位体から明らかになった、後期更新世の絶滅中に草原の水分増加が果たした役割

    Megafaunal isotopes reveal role of increased moisture on rangeland during late Pleistocene extinctions

    doi: 10.1038/s41559-017-0125

    更新世末の水分の影響による環境変化が、4つの大陸にわたる大型動物相の絶滅の一因となったことが、安定同位体の分析から明らかになった。その当時のアフリカでは草原が安定して存在しており、それによって、アフリカでの大型動物相の個体群維持を一部説明できる。

  • Article: 絶滅したサーベルタイガーとダイアウルフの骨格の損傷は狩猟行動の違いを反映している

    Skeletal trauma reflects hunting behaviour in extinct sabre-tooth cats and dire wolves

    doi: 10.1038/s41559-017-0131

    米国カリフォルニア州のランチョ・ラ・ブレアのタールピット(タールの池)で発見された骨の病的な要素を分析した結果、絶滅したスミロドン(サーベルタイガーの仲間)とダイアウルフで外傷による損傷の分布に相違が見いだされた。これは、両者の異なる狩猟行動を反映していると考えられる。

  • Article: 機能形質の多様性が生態系の多機能性を最大化する

    Functional trait diversity maximizes ecosystem multifunctionality

    doi: 10.1038/s41559-017-0132

    世界の乾燥地植物群落における植物の2つの重要な機能形質の存在度分布を分析することで、生態系の多機能性を局所的に最大化するために必要な形質多様性の大きさを定量化するスケーリング関係が見いだされた。

  • Article: 微生物多様性のマクロ生態学理論

    A macroecological theory of microbial biodiversity

    doi: 10.1038/s41559-017-0107

    広く知られている複数の生物多様性モデルを、多様な生態系に由来する2万点以上の微生物群集試料のデータセットで検証することにより、さまざまなスケールでの微生物の存在量および多様性が、対数正規動態モデルによって最もよく予測されることが明らかになった。

  • Article: 微生物ミクロコスムの群集構造は単純な集合法則に従う

    Community structure follows simple assembly rules in microbial microcosms

    doi: 10.1038/s41559-017-0109

    競争する2種の微生物の生存率から、3種以上の競争の結果を予測できる。互いに共存できる2種は生き残り、生存する種のいずれかによって排除される種は絶滅するのである。

  • Article: 都市化は外生菌根菌類の多様性を徐々に低下させており、微生物群集を収斂させる可能性がある

    Urbanization erodes ectomycorrhizal fungal diversity and may cause microbial communities to converge

    doi: 10.1038/s41559-017-0123

    3大陸5都市の土壌微生物群集を分析した結果、都市化は、アーキアおよび真菌類群集の収斂や、外生菌根に共生する菌類の多様性および存在量の減少につながることが分かった。

  • Article: 土地利用変化が進む辺境地帯のマラリアの盛衰

    The rise and fall of malaria under land-use change in frontier regions

    doi: 10.1038/s41559-017-0108

    土地利用変化と関連する社会経済学的・人口統計学的要因と、マラリアの疫学的特性とを結びつける数学モデルにより、土地利用変化に伴って早期に生じるマラリアのさまざまな動態が明らかになった。

  • Article: ホタテガイのゲノムから左右相称動物の核型と発生の進化についての手掛かりが得られる OPEN

    Scallop genome provides insights into evolution of bilaterian karyotype and development

    doi: 10.1038/s41559-017-0120

    ホタテガイ(Patinopecten yessoensis)のゲノム塩基配列が今回解読された。この軟体動物二枚貝類のゲノムは,ゆっくり進化しており、核型やHox遺伝子発現などの特徴が祖先的な左右相称動物に近いと考えられる。

  • Article: イガイのゲノムから明らかになった深海の化学合成環境への適応 OPEN

    Adaptation to deep-sea chemosynthetic environments as revealed by mussel genomes

    doi: 10.1038/s41559-017-0121

    深海噴出孔と浅海にそれぞれ生息するイガイ類2種について、ゲノム塩基配列の比較解析が行われた。前者のゲノムは、タンパク質の安定化や有害物質の除去のための遺伝子ファミリーが拡充しており、より複雑な免疫系を備えている。

  • Article: ゲノム系統学研究で論争の的になっている系統関係は、ごく少数の遺伝子によって推論されている場合がある

    Contentious relationships in phylogenomic studies can be driven by a handful of genes

    doi: 10.1038/s41559-017-0126

    現在ではゲノム系統学のおかげで生命系統樹の復元が可能になっているが、データセットや方法が違うために相矛盾する系統関係が得られる場合もある。今回著者たちは、系統発生シグナルを定量化し、論争の的になっている系統関係が、わずかな量のデータによって支持されている場合があることを示した。

  • Article: 交雑帯で選択下にあり、複数の連鎖QTLを有する新しい逆位 OPEN

    Young inversion with multiple linked QTLs under selection in a hybrid zone

    doi: 10.1038/s41559-017-0119

    染色体の逆位は種分化を促進する場合がある。今回著者らは、アブラナ科植物Boechera strictaの交雑帯で、生態学的に重要な遺伝的バリアントを獲得し、局所への適応と種分化の発端となる過程を促進する新しい逆位を特定した。

  • Article: 逃げ出した養殖サケからの遺伝子流動が野生タイセイヨウサケの生活史を変化させている

    Gene flow from domesticated escapes alters the life history of wild Atlantic salmon

    doi: 10.1038/s41559-017-0124

    野生サケと養殖サケの間には遺伝子流動が広く起こっていることが分かっている。今回著者らは、養殖サケとの移入交雑が、野生タイセイヨウサケの適応度に関連する生活史形質を変化させて、個体群統計学的な影響を及ぼしていることを明らかにした。

  • Article: 発生的制約は線虫のmid-developmental transition(胚発生中期の移行)の進化を方向付ける

    Developmental constraints shape the evolution of the nematode mid-developmental transition

    doi: 10.1038/s41559-017-0113

    動物では胚発生の中期が高度に保存されている。正の選択を排除する手法を用いると、線虫の胚発生中期の遺伝子発現変動に大幅な縮小が見られたことから、このパターンの決定に発生的制約が関わっていることが明らかになった。

  • Article: 直接的利益と、複雑な社会への進化的移行

    Direct benefits and evolutionary transitions to complex societies

    doi: 10.1038/s41559-017-0137

    協同繁殖への進化的移行には、高度な一夫一妻制、ひいてはヘルパーの適応度の間接的利益が関わっていることが多い。今回、それとは別の移行経路が魚類シクリッドで明らかになった。この経路には、集団生活などの生態学的要因に起因する適応度の直接的利益が関わっている。

  • Article: 霊長類の脳サイズは食餌から予測できるが社会性からは予測できない

    Primate brain size is predicted by diet but not sociality

    doi: 10.1038/s41559-017-0112

    最新の系統学と現時点で最大のデータセットを利用することで、霊長類の脳サイズが、社会性のいかなる尺度によるよりも、食餌によって的確に予測できることが明らかになった。この結果は、脳サイズの進化を説明する有力な仮説に見直しが必要であることを示唆している。

  • Article: 魚類は経験を分かち合って集団で問題を解決する

    Fish pool their experience to solve problems collectively

    doi: 10.1038/s41559-017-0135

    魚の各個体を2段階の採餌課題のうち一方の段階のみで訓練し、魚の群れに2段階の採餌課題全体を解かせた場合、それぞれの段階を経験した個体を組み合わせた群れは他に比べて課題を迅速に解いた。このことは、経験を分かち合うことが動物集団の集合的な問題解決に役立つ場合があることを示している。

2017年4月

  • Perspective: 生態系ネットワークの多層的な性質

    The multilayer nature of ecological networks

    doi: 10.1038/s41559-017-0101

    生態学的相互作用は、空間と時間の両スケールにわたって変動することが一般的である。今回著者らは、多層的な複雑性を生態系ネットワークに組み込むための枠組みを概説し、その応用の可能性と今後の課題を考察している。

  • Review Article: 植物の種分化の進化発生学

    The evo-devo of plant speciation

    doi: 10.1038/s41559-017-0110

    種分化を完全に解明するには、マクロおよびミクロの進化的スケールの情報を統合する必要がある。今回著者らは、植物で種分化を促進する種内の変動や形態的革新と関連付けられる発生過程について検討している。

  • Review Article: 胎盤は脊椎動物の器官の起源と進化を解明するためのモデルとなる

    The placenta as a model for understanding the origin and evolution of vertebrate organs

    doi: 10.1038/s41559-017-0072

    器官の進化は、さまざまな組織の変化を必要とし、複雑な分子機構に支えられている。このReview論文で著者らは、脊椎動物の胎盤の進化をモデルとして用い、器官の起源に関わる遺伝的過程を考察している。

  • Analysis: 海洋酸性化に対する種特異的な応答には局所的な適応と適応的可塑性を考慮に入れるべきである

    Species-specific responses to ocean acidification should account for local adaptation and adaptive plasticity

    doi: 10.1038/s41559-017-0084

    環境勾配に沿って分布する海洋生物種は、海洋の物理化学的条件の大規模な不均一性を経験している可能性がある。今回著者らは、海洋酸性化への応答に関する研究でこうした変動性を考慮に入れるための指数を考案した。

  • Article: 10年にわたる実験的温暖化への植物プランクトンの適応が光合成能力の上昇につながった

    Adaptation of phytoplankton to a decade of experimental warming linked to increased photosynthesis

    doi: 10.1038/s41559-017-0094

    野外のメソコスムで10年にわたる長期的な温暖化に適応した緑藻類コナミドリムシ(Chlamydomonas reinhardtii)の分離株は、光合成能力が高く光阻害感受性が低いため、通常環境条件下の対照群と比較して競争下での適応度が高い。

  • Article: 動物地理区の境界を決定する全球規模の要因

    Global determinants of zoogeographical boundaries

    doi: 10.1038/s41559-017-0089

    陸生動物はいくつかある生物地理区のどれかに振り分けることができるが、何がこうした全球規模の境界を形作っているのかはよく分かっていない。今回著者らは、時間の経過とともに区分を決定付ける地質学的および気候的要因を明らかにした。

  • Article: 新熱帯区雨林の極めて多様な土壌原生生物群集は寄生性の分類群に優占されている

    Parasites dominate hyperdiverse soil protist communities in Neotropical rainforests

    doi: 10.1038/s41559-017-0091

    土壌試料の環境メタバーコーディングにより、熱帯雨林では原生生物が真核生物として最大の多様性を担っており、その多くを占めているのは、節足動物などの動物に寄生する門であることが示唆された。

  • Article: 樹冠の空間的相補性によって多種混合状態の生産力増強を説明付ける

    Spatial complementarity in tree crowns explains overyielding in species mixtures

    doi: 10.1038/s41559-016-0063

    幼木の野外研究から、林冠空間における樹冠同士の相補性は、生物多様性を生態系の生産力と結びつける機構の1つであり、そうすることで多様性による森林の生産力増強に寄与している可能性があることが明らかになった。

  • Article: アフリカのサハラ以南地域では、気候が促進する木本植生の拡大を人口増大が相殺している

    Human population growth offsets climate-driven increase in woody vegetation in sub-Saharan Africa

    doi: 10.1038/s41559-017-0081

    1992~2011年のアフリカ・サハラ以南地域の植生変化を追跡した結果、乾燥地と湿潤地帯では木本の被度パターンが対照的であるが、どちらの地域でも被度の低下は人口の急増と関連していることが明らかになった。

  • Article: 生態系管理の同期化による捕食者と被食者の迅速で直接的な回復

    Rapid and direct recoveries of predators and prey through synchronized ecosystem management

    doi: 10.1038/s41559-016-0068

    劣化した食物網の回復は保全の主要な課題の1つであり、さまざまな手法がこれまで用いられてきた。今回、モデリングの手法を用いて、種を逐次的にではなく一緒にまとめて回復させると、生態系がより速く安定して回復することが分かった。

  • Article: 硫酸ラジカルが非酵素的なクレブス回路前駆系を実現する

    Sulfate radicals enable a non-enzymatic Krebs cycle precursor

    doi: 10.1038/s41559-017-0083

    酵素に触媒されるクレブス回路の進化的起源はよく分かっていない。今回著者らは、この回路の重要な構成要素を再現する非酵素的中間体を見つけだし、無機触媒が代謝過程の出現を促した可能性を示唆している。

  • Article: TrichomonasのヒドロゲノソームとGiardiaのマイトソームの起源の手がかりとなる細胞小器官

    Organelles that illuminate the origins of Trichomonas hydrogenosomes and Giardia mitosomes

    doi: 10.1038/s41559-017-0092

    嫌気性の真核微生物群であるメタモナス類のミトコンドリア関連オルガネラ(MRO)のトランスクリプトーム比較解析によって、ATP産生と水素産生が共役しない新規の種類とみられる細胞小器官が見つかった。

  • Article: ナナフシの種分化に際したゲノム分化の段階間の移行

    Transitions between phases of genomic differentiation during stick-insect speciation

    doi: 10.1038/s41559-017-0082

    チビナナフシ類(Timema)の100以上の個体群から得たゲノムデータを用いることで、局所的な遺伝子領域が関わる種分化の初期段階から、ゲノム規模の分化が関わるその後の段階への移行が明らかになった。

  • Article: テッポウエビ類における真社会性への進化的移行

    Evolutionary transitions towards eusociality in snapping shrimps

    doi: 10.1038/s41559-017-0096

    海綿に共生する複数種のテッポウエビ類を分析した結果、つがい形成種、協同繁殖種、および真社会性種の存在が明らかになり、昆虫や脊椎動物と同等の「家族中心(family-centred)モデル」による真社会性の進化が示唆された。

  • Article: メッケル軟骨の消失が哺乳類の中耳の進化を解明する手掛かりをもたらす

    Meckel's cartilage breakdown offers clues to mammalian middle ear evolution

    doi: 10.1038/s41559-017-0093

    哺乳類の特徴的な中耳は、下顎からの一次顎関節の分離によって進化したものであり、それにはメッケル軟骨の消失が必要だった。今回、マウスおよびオポッサムに遺伝的・薬理的操作をして、中生代哺乳類に見られる移行型を模倣することにより、中耳の進化に関する手掛かりが得られた。

  • Article: 家禽化されたハトの頭蓋顔面の多様化と鳥類頭蓋の進化

    Craniofacial diversification in the domestic pigeon and the evolution of the avian skull

    doi: 10.1038/s41559-017-0095

    家畜化された動物は、多様性がどのように形成されるかを解明するうえで優れたモデルとなる。今回著者らは、家禽化されたカワラバトの頭蓋形状の変動パターンが、鳥類全般の頭蓋形状の変動に酷似していることを示し、保存された発生機構に対してかかる選択が極めて大きな多様性を生じ得ることを示唆している。

  • Article: 収穫逓減エピスタシスは進化経路に沿って適応性を低下させる

    Diminishing-returns epistasis decreases adaptability along an evolutionary trajectory

    doi: 10.1038/s41559-016-0061

    不変の環境で集団が進化するとき、適応速度は低下する。今回、実験的な大腸菌個体群を用いた研究で、進化が進むにつれて、大域的なエピスタシスが有益な変異の影響を縮小させることが明らかになった。

2017年3月

  • Perspective: 進化を予測する

    Predicting evolution

    doi: 10.1038/s41559-017-0077

    データ収集や定量的モデリングの近年の発展により、進化生物学者は今後の進化過程を予測することも可能になった。このPerspective論文では、微生物やがんのような系の進化的動態の解明の進展状況を概説し、予測解析の概念の統一について論じている。

  • Review Article: 人類の行動は非ヒト生物の進化に対する長期的な生態学的推進力となる

    Human behaviour as a long-term ecological driver of non-human evolution

    doi: 10.1038/s41559-016-0065

    人類は、何千年にもわたって環境や居住地を間接的にも直接的にも変えてきた。このことが、野生の非ヒト生物種の生物学的特性に大きな変化をもたらしており、今後この傾向は強まっていくと考えられる。

  • Review Article: 動植物のマイクロRNAの進化的起源

    The evolutionary origin of plant and animal microRNAs

    doi: 10.1038/s41559-016-0027

    miRNAは、動植物の正常な発生の重要な調節因子であるが、その起源はまだよく分かっていない。異なるさまざまなmiRNA経路の類似点と相違点を調べることが、miRNAの起源と役割の解明に役立つ。

  • Article: 保存状態のきわめて良好なカンブリア紀の胴甲動物と初期のメイオベントスへの動物侵入

    Exceptionally preserved Cambrian loriciferans and the early animal invasion of the meiobenthos

    doi: 10.1038/s41559-016-0022

    多細胞動物が堆積物粒子間の微視的な生態学的ニッチに初めて侵入した年代については、そうした動物の化石記録が存在しないため、よく分かっていない。カンブリア紀の微視的な胴甲動物が報告され、この重要なニッチを初期に占有していたことが示された。

  • Article: 更新世末期/完新世のニューギニア高地では熱帯の狩猟採集が持続していた

    Persistent tropical foraging in the highlands of terminal Pleistocene/Holocene New Guinea

    doi: 10.1038/s41559-016-0044

    更新世/完新世境界での環境および気候の劇的な変化が人類の生活基盤の変化を促進したとよく言われるが、その頃のニューギニアのKiowaでは環境および人類の生活様式が変わらなかったことが、安定同位体の分析で明らかになった。

  • Article: 世界的に大規模な野火事象に対する人類の暴露と感受性

    Human exposure and sensitivity to globally extreme wildfire events

    doi: 10.1038/s41559-016-0058

    大規模な野火事象が、特に郊外の人為的な景観において増加している。特に懸念される地域は、南半球の亜熱帯地域や欧州の地中海沿岸地域である。

  • Article: 種個体数の傾向に対する気候変動の影響の全界的評価

    Cross-realm assessment of climate change impacts on species' abundance trends

    doi: 10.1038/s41559-016-0067

    欧州各地の1000を超える局所個体群の種個体数について経時的傾向が分析され、温度が陸界の群集に与える影響は一貫しているが、淡水界と海洋界の群集に与える影響は可変的であることが明らかになった。

  • Article: 多様な群集の原因不明の複雑性は高次相互作用で説明できる

    Higher-order interactions capture unexplained complexity in diverse communities

    doi: 10.1038/s41559-016-0062

    自然群集では高次相互作用(HOI)を無視できると見なされることが多い。今回著者たちは、多様性モデルにHOIを組み込むための枠組みを提示し、HOIの組み込みによってモデルの説明力が劇的に向上することを示している。

  • Article: 過酷な環境への定着を協力が促進する

    Cooperation facilitates the colonization of harsh environments

    doi: 10.1038/s41559-016-0057

    過酷な環境での生活は協力的な集団での繁殖と結び付けられているが、どちらが原因でどちらが結果なのだろうか。今回、鳥類の系統発生を利用することで、従来の予想とは逆に、協力して繁殖する種が過酷な環境に定着する傾向にあることが明らかになった。

  • Article: 雌の可塑性は性的対立を低減させる傾向がある

    Female plasticity tends to reduce sexual conflict

    doi: 10.1038/s41559-016-0054

    進化的な性的対立は、交尾後の雌の体内で生じることがよくあり、これによって雌は雄の戦略に対して柔軟に対応できる。今回、理論的分析の結果から、こうした雌の可塑性が性的対立のレベルを低下させ、ランナウェイ型の選択を防止することが明らかになった。

  • Article: 食虫植物フクロユキノシタのゲノムから明らかになった、食虫性に関連する遺伝的変化 OPEN

    Genome of the pitcher plant Cephalotus reveals genetic changes associated with carnivory

    doi: 10.1038/s41559-016-0059

    オーストラリア産の食虫植物フクロユキノシタ(Cephalotus属の種)のゲノムから、被食者の誘引、捕獲、消化、および栄養素吸収に関連する遺伝的変化が明らかになった。また、他の食虫植物との比較解析から、植物の食虫性の進化に関する制約が明らかになった。

  • Article: ヒト特異的なセグメント重複の進化と集団の多様性

    The evolution and population diversity of human-specific segmental duplications

    doi: 10.1038/s41559-016-0069

    ゲノム内のセグメント重複は、表現型の新規性を進化させる可能性のある領域だが、それらのカタログ作成はこれまで技術的に困難であった。今回、ヒトの重複の進化と機能の特性が明らかにされた。

  • Article: 拮抗的多面発現と変異の蓄積がヒトの老化と疾患に影響を与える

    Antagonistic pleiotropy and mutation accumulation influence human senescence and disease

    doi: 10.1038/s41559-016-0055

    老化の進化的な説明では、遅発性の有害変異が選択によって許容されるか、あるいは有利にさえなる可能性があることが示唆されている。今回、ヒトの全ゲノム関連解析のデータを利用した研究で、この進化的予測が裏付けられた。

  • Article: 翅の紋様遺伝子の単純なツールキットを取り巻く複雑なモジュール構造

    Complex modular architecture around a simple toolkit of wing pattern genes

    doi: 10.1038/s41559-016-0052

    ドクチョウ属(Heliconius)のチョウは、色紋様遺伝子の周辺の変動が高度にモジュール式になっている。このモジュール構造が色紋様の多様性の説明付けとなり、また、形態の迅速な多様化のための柔軟な機構をもたらしている。

  • Article: 哺乳類、鳥類および爬虫類の進化的収斂のゲノムレベルでの景観

    The genomic landscape of evolutionary convergence in mammals, birds and reptiles

    doi: 10.1038/s41559-016-0041

    鳥類、爬虫類および哺乳類の系統では、一部の変異が特定系統の特徴となっている。今回、タンパク質の構造情報を利用して、そうした適応的な変異が、他の部位の変化を代償する変異から区別された。

  • Article: 高速で効率的に抗生物質耐性を獲得する細菌ゲノムの制約されない進化

    The unconstrained evolution of fast and efficient antibiotic-resistant bacterial genomes

    doi: 10.1038/s41559-016-0050

    抗生物質耐性の進化にはコストが伴うと考えられている。今回、ドキシサイクリン耐性の進化に際して明白なコストは認められなかったが、これに関して進化的トレードオフ理論との折り合いが付けられた。

  • Article: 頻度依存的な女性性器切除行動は進化的適応度にプラスに働く

    Frequency-dependent female genital cutting behaviour confers evolutionary fitness benefits

    doi: 10.1038/s41559-016-0049

    女性性器切除は健康に有害であり、その根絶は優先課題の1つである。また、これがなぜ存続するのかを解明することも重要である。今回、西アフリカ諸国のデータを利用することで、女性性器切除は進化的適応度に対して頻度依存的にプラスに働くことが示された。

2017年2月

  • Perspective: 種多様なネットワークとメタ群集レベルにおける生態学–進化学の統合

    Species-rich networks and eco-evolutionary synthesis at the metacommunity level

    doi: 10.1038/s41559-016-0024

    生態–進化フィードバックに関する現在の理解は主として、小規模な空間の単純な系に基づいたものである。今回著者らは、種数の豊富なネットワークの時空間的動態をメタ群集規模で調べるための枠組みを概説している。

  • Perspective: 種分化の動態の転換点

    Tipping points in the dynamics of speciation

    doi: 10.1038/s41559-016-0001

    種分化の過程は急激な場合もあれば漸進的な場合もあり、正のフィードバックがこの過程を完結へと促進するゲノム規模の転換点があるのではないかと考えられる。本論文では、種分化転換点の仕組みや他の動的な系との類似性を考察している。

  • Brief Communication: さまざまな哺乳類種に見られる母子相互作用の側性化

    Lateralization of mother–infant interactions in a diverse range of mammal species

    doi: 10.1038/s41559-016-0030

    ヒトや大型類人猿には子どもを左腕で抱く「左抱き」の傾向が見られるが、この傾向がある動物の範囲についてはよく分かっていない。今回著者らは、海生および陸生の哺乳類11種で幼獣と母親との相互作用に側性化が認められることを示した。これは、側性化が古い進化史を持つことを示唆している。

  • Article: 絶滅を防ぐための世界の海洋保護区

    Global marine protected areas to prevent extinctions

    doi: 10.1038/s41559-016-0040

    海洋保護区は生物多様性の保全を目的として指定されているが、そこに生息する種の保全状態は概して把握されていない。今回、的を絞った保全活動が必要な世界のサメ類とエイ類に関して、絶滅リスクのホットスポットが特定された。

  • Article: 林齢と種数は生態系レベルの光合成能力の年々変動を抑制する

    Stand age and species richness dampen interannual variation of ecosystem-level photosynthetic capacity

    doi: 10.1038/s41559-016-0048

    森林生態系の光合成能力は、全球炭素循環の重要な変数の1つである。今回、林齢がより古く多様な森林ほど光合成能力の年々変動が小さいことが明らかになった。

  • Article: 植物の空間パターンから、世界の乾燥地における生態系多機能性の代替的状態が明らかになる

    Plant spatial patterns identify alternative ecosystem multifunctionality states in global drylands

    doi: 10.1038/s41559-016-0003

    植生パターンは環境勾配の有用な指標になると考えられる。今回著者らは、リモートセンシング調査と実地調査により、乾燥地のパッチサイズ分布が生態系多機能性の異なる複数の状態と関係付けられることを明らかにした。

  • Article: 可変的な環境にある植物の異なる人口学的戦略

    Legacy effects of developmental stages determine the functional role of predators

    doi: 10.1038/s41559-016-0038

    捕食者は、成長とともに食物連鎖を上方へ移動することによって異なる栄養的位置を占めると考えられる。今回著者らは、幼若期の捕食者が長期持続的な「レガシー」効果を持つことを明らかにした。こうした効果は、群集構造に成体が及ぼす影響を上回っている可能性がある。

  • Article: 気候変動は野鳥の装飾に対する選択を逆転させる

    Climate change upends selection on ornamentation in a wild bird

    doi: 10.1038/s41559-016-0039

    二次性徴は繁殖成功度に影響を与えるが、環境変化に対して敏感でもあると考えられる。今回、雄のシロエリヒタキの額にある斑点のサイズに対する選択が、繁殖地の春季気温に依存して正から負へ切り替わることが明らかになった。

  • Article: カリブ諸島のコウモリの多様性が平衡状態に至る道筋は最近の絶滅によって乱されている

    Recent extinctions disturb path to equilibrium diversity in Caribbean bats

    doi: 10.1038/s41559-016-0026

    カリブ諸島の化石コウモリと現生コウモリのデータを組み合わせることにより、この諸島全体の生物多様性は時を経て平衡値に達するという予測が裏付けられた。しかし、この平衡値に至る道筋が最近の人為起源の絶滅によって乱されていることも確認された。

  • Article: 出生前の発生から、コウモリの喉頭部を用いる反響定位は単一起源であることが裏付けられる

    Prenatal development supports a single origin of laryngeal echolocation in bats

    doi: 10.1038/s41559-016-0021

    喉頭部を用いる反響定位は類縁関係の離れた2群のコウモリに見られるため、これが収斂進化の一例なのか、あるいは、反響定位能力をもたないコウモリ群がかつてあった能力を失ったものなのかは明らかになっていない。今回、コウモリと他の哺乳類の蝸牛発生を調べた研究で、反響定位が単一起源であることが裏付けられた。

  • Article: 全ゲノム的な解析によって、分類困難な生物群の系統樹上の位置決めが進展

    Genome-wide interrogation advances resolution of recalcitrant groups in the tree of life

    doi: 10.1038/s41559-016-0020

    標準的な系統発生解析法では、系統樹のいくつかの箇所で相反する結果が生じている。本研究では新しい系統ゲノミクス手法を提示し、それによって、議論の多い骨鰾類淡水魚の内部の類縁関係やその他の分類困難な複数の生物群の類縁関係を解決した。

  • Article: キイロショウジョウバエにおける分子適応の典型例に関する実験的検証と否定

    Experimental test and refutation of a classic case of molecular adaptation in Drosophila melanogaster

    doi: 10.1038/s41559-016-0025

    キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)のアルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)タンパク質の変化は、分子適応の典型例とされている。今回、キイロショウジョウバエの系統に沿ったADHの遺伝子塩基配列変化が機能および適応度に影響を与えなかったことが明らかになり、その適応的役割が否定された。

  • Article: 実験的な適応地形1000例とそれらの可航性

    A thousand empirical adaptive landscapes and their navigability

    doi: 10.1038/s41559-016-0045

    真核生物129種の1000例を超える完全な適応地形の解析から、適応地形の可航性(navigability)が適応や革新の発生源として転写調節の成功に寄与したことが示唆された。

2017年1月

  • Article: 世界のサプライチェーンから種の脅威のホットスポットを特定する

    Identifying species threat hotspots from global supply chains

    doi: 10.1038/s41559-016-0023

    人間が誘発する生物多様性喪失の大きな要因として、貿易のための天然資源開発が挙げられる。今回、ある国での財の生産を別の国での消費と直接つなぐ国際貿易による野生生物への脅威の世界的「ホットスポット」が特定された。

  • Article: 重度ストレス下では、DNA損傷に表現型的な休眠状態を連動させることで遺伝的多様性が高まる

    Coupling phenotypic persistence to DNA damage increases genetic diversity in severe stress

    doi: 10.1038/s41559-016-0016

    酵母などの微生物は、表現型的に独特な休眠状態(パーシスタンス)になることでストレス状態を耐え抜ける。DNA損傷とパーシスタンス発動の間には関連性があり、休眠状態にあるパーシスター細胞では、進化的適応を促進する可能性のある遺伝的多様性が高まることが、今回明らかになった。

2016年12月

  • Article: トルネーシアン期の四肢動物相の系統発生的・環境的状況

    Phylogenetic and environmental context of a Tournaisian tetrapod fauna

    doi: 10.1038/s41559-016-0002

    ローマーの空白は、初期の四肢動物が続々と上陸しつつあったのに化石がほとんど知られていない年代である。今回、スコットランドのある場所から出土した5つの新種(ステム群四肢類3種およびステム群両生類2種)が記載され、この年代の系統発生および環境を解明するための一助となった。

  • Article: 微生物群集の安定した機能的構造に反する高い分類学的多様性

    High taxonomic variability despite stable functional structure across microbial communities

    doi: 10.1038/s41559-016-0015

    野生パイナップル類の群葉に存在する微生物群集は、分類学的構成の多様性が高いにもかかわらず、機能的群集構造がきわめて安定しており、このことは、非中立的な過程が群集構成の変化を生じさせることを示している。

  • Article: 新口動物性と旧口動物性の反復的進化の発生基盤

    The developmental basis for the recurrent evolution of deuterostomy and protostomy

    doi: 10.1038/s41559-016-0005

    旧口動物では口が胚の原口から発生するのに対し、新口動物の口はそれとは別に発生する。旧口動物性および新口動物性の2種の近縁な腕足動物を比較することにより、この重要な左右相称動物ボディプランの分岐でWntシグナル伝達および中胚葉形成が果たす役割が明らかにされた。

2016年11月

  • Article: 進化は実験的群集で侵入の結果を変える

    Evolution alters the consequences of invasions in experimental communities

    doi: 10.1038/s41559-016-0013

    過去に侵略者を経験して進化した在来種の個体数増加は新規に侵入する侵略種を常に上回り、侵入による進化の結果として高度な生物的抵抗性が出現することが支持された。

  • Article: 形態と運動性の独立した進化がファーミキューテス門細菌に進化的柔軟性を与える

    Independent evolution of shape and motility allows evolutionary flexibility in Firmicutes bacteria

    doi: 10.1038/s41559-016-0009

    少なくとも真核生物では、生物の形態と機能が密接に結びついている場合が多い。対照的に、今回の系統種間比較により、ある細菌分類群の間では形態と運動性が結びついておらず、そのことが高度な進化的柔軟性を与えていることがわかった。

  • Brief Communication: 海水の環境DNAから推察されたジンベエザメの大群の個体群的特徴

    Population characteristics of a large whale shark aggregation inferred from seawater environmental DNA

    doi: 10.1038/s41559-016-0004

    水試料から得た環境DNAを利用することにより、水生生物の存在および個体数を明らかにすることができる。今回は、環境DNAを利用してアラビア湾のジンベエザメから個体群の遺伝的情報も得られることが示された。

  • Article: 抗微生物薬耐性への適応の速度は軌跡上の競合が支配する

    Competition along trajectories governs adaptation rates towards antimicrobial resistance

    doi: 10.1038/s41559-016-0007

    抗マラリア薬耐性に関与するタンパク質の進化速度は、予測される適応の軌跡の上で競合する連続的なアレルが大筋で支配しており、このことは現実世界での抗微生物薬耐性の管理と密接に関係する。

  • Article: 多コピープラスミドが細菌の抗生物質耐性を進化させる

    Multicopy plasmids potentiate the evolution of antibiotic resistance in bacteria

    doi: 10.1038/s41559-016-0010

    コピー数の多いプラスミドは、遺伝子の水平伝播を可能にするばかりでなく、進化を加速させる可能性がある。今回、臨床的に意味のある抗生物質耐性は対象遺伝子がプラスミド上にある場合のほうが急速に進化することが明らかにされた。

  • Article: 侵略性の社会性昆虫は性座位の遺伝的荷重を克服する

    An invasive social insect overcomes genetic load at the sex locus

    doi: 10.1038/s41559-016-0011

    ハチ目(膜翅類)の社会性昆虫は、雌の発生にcsd座位のヘテロ接合性を必要とする。今回、平衡選択が創始者効果を克服してこのヘテロ接合性を維持し、トウヨウミツバチが侵略性となることが明らかにされた。

  • Article: 白亜期末の絶滅後に急回復したパタゴニアの植物・昆虫間の関係

    Rapid recovery of Patagonian plant-insect associations after the end-Cretaceous extinction

    doi: 10.1038/s41559-016-0012

    白亜紀・古第三紀境界をめぐる絶滅と回復が大きな規模で地理的に不均一であったことが、パタゴニアと北米西部内陸部の葉の化石に残された虫害によって示された。

  • Article: サンゴが可変的な環境に適応する機構としての遺伝子発現の可塑性

    Gene expression plasticity as a mechanism of coral adaptation to a variable environment

    doi: 10.1038/s41559-016-0014

    局地的な適応を支える分子メカニズムとはどのようなものであろうか。可変的な生息地と安定性の高い生息地との間でサンゴPorites astreoidesを相互に移植した結果、個体群は局地適応と整合する表現型上の特徴を示すことがわかった。

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