Mission Control

太陽系の過去のピースを持ち帰る

Nature Astronomy 2, 502 Published: 01 June 2018 | doi:10.1038/s41550-018-0486-0

Elizabeth Tasker (JAXA)

小惑星探査機「はやぶさ2」のミッションでは、小惑星リュウグウに到達後、遠隔測定装置や、着陸機、ローバーを用いて探査するだけでなく、表面物質を採取して地球に持ち帰り、その組成を分析する予定だ。この計画について、Elizabeth Taskerが解説する。

2018年2月26日、小惑星探査機「はやぶさ2」が、初めてその目的地を捉えた。搭載された望遠カメラで撮影された小惑星リュウグウは、単なる明るい点として画像に現れただけであったが、宇宙空間での約3年間、この探査機が正しい方向に向かっていたことが確認されたのである。はやぶさ2は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の宇宙科学研究所(ISAS)が主導する小惑星試料の回収計画であり、2005年に小惑星イトカワを訪れた小惑星探査機「はやぶさ」の後継である。「はやぶさ」は英語でfalconを意味する。

はやぶさ2は2018年6月〜7月ごろ、リュウグウの表面の特徴を分析するのに十分な距離に到達し、本格的な解析を開始する(註:6月27日、リュウグウの上空20kmの所定の位置に到着した)。最初の任務の1つは、リュウグウの3次元モデルを構築することだ。この情報は、着陸地点の選定や、この小惑星の重力場の推測に利用できる。リュウグウは直径1kmに満たないためその重力は弱いと考えられるが、探査機を小惑星表面に安全に降下させるためには、その重力を慎重に考慮する必要がある。

はやぶさ2は、その後12カ月の間にリュウグウから試料を3回集め、2020年後半に地球に帰還する予定である。試料採取は、小惑星表面から2回と、制御された衝突によって露出した表面下の物質から1回が計画されている。試料採取に加えて、遠隔測定装置、着陸機、そして3台の小型ローバーを駆使し、この小惑星を探査する。これらの野心的な計画は全て、地球に誕生した生命の始原物質を発見する、という科学的な目標に取り組むためのものだ。

リュウグウはC型小惑星である。C型小惑星は、太陽系が最初に形成されて以来、最小限の変性しか受けていないと考えられる炭素質の物質を含んだ、宇宙空間に存在する岩石の一種である。従ってこの小さな天体は、初期の地球に激しく降った隕石と同質と考えられる。地球が位置する太陽の近傍は温度が高すぎて、形成中の地球は氷を取り込むことができなかったとされる。そのため隕石の爆撃は、地球の海にとって水の配送サービスのようなものであった。さらに、隕石中に原始的な有機物が発見されていることから、この事象により、生命誕生の場となる溶媒だけでなく、生命の最初の構成要素も配送されたことがうかがえる。

はやぶさ2は「サンプラーホーン」と呼ばれる装置を使って物質を採取する。この装置は、長い円筒の上部に円錐形が接続された形で、上部に採集容器と弾丸発射装置がついており、サンプラーホーン先端部が小惑星表面に触れた瞬間に小惑星表面に向けて弾丸を撃ち出し、巻き上がった砂や小石、岩石の断片をサンプラーホーンに集める。また、サンプラーホーンの口の部分には小さな折り返し部分が備えられていて、弾丸射出による試料採取が何らかの理由で失敗しても、着地の際に巻き上がった小惑星表面の物質がそこに引っ掛かるはずだ。探査機が減速するときも同様に、表土が採取ホーンに引っ掛かり、採集容器に収納されるだろう。採集容器は、リュウグウのそれぞれの着地点で集められた物質を保管するために3区画を有している。この3回の着地は、小惑星に存在する異なる物質の採取を可能にする。衝突装置(SCI)を使い小惑星の表面にクレーターを作る3回目の試料採取(図1)は、新たに露出された領域から太陽放射の風化を受けていない物質を採取できることから、特に区別される。

図1 小惑星リュウグウから試料を採取する「はやぶさ2」の想像図

© JAXA / Akihiro Ikeshita

小惑星表面での探査活動は、現時点(6月1日)では2018年9月〜10月に開始予定で、着陸機および1台ないし2台のローバーの放出と、最初の試料採取が計画されている。2回目の試料採取は2019年2月に、3回目(SCIの射出を伴う)は4月〜5月の予定である。日程が確定するのは、はやぶさ2がリュウグウの構造を明確に観測した後となる。

小型着陸機(MASCOT:Mobile Asteroid Surface Scout)は、欧州宇宙機関(ESA)のロゼッタ・ミッションにおいて彗星着陸機フィラエで経験を持つ、ドイツ航空宇宙センターとフランス宇宙研究センターによって開発された。

小型着陸機は、赤外分光器と磁力計、熱放射計、カメラを用いて小惑星の表土を解析する。一方のローバーは、走行というよりも、表面を「ホップ」しながら探査を行う。低重力環境における革新的な移動方法である。小型着陸機とローバーは、はやぶさ2を通して地球と通信しながら、小型着陸機は約15時間、ローバーは数日間にわたって運用される。

はやぶさ2は、3台のカメラと、鉱物組成を調べるための近赤外分光計、地表との距離を計測するためのレーザー高度計、そして中間赤外カメラを搭載している。この一連の装置は、探査機が地球の重力を利用したスイングバイを行うために地球を接近通過した2015年12月に試験運転が行われ、分光器が水の存在を検出したときにカメラフィルターが対応物として地球上の植生領域を同定することが確認された。リュウグウでも含水鉱物と有機化合物の存在を探査するために、同様の解析が実行される計画である。

はやぶさ2は、小惑星へと向かう唯一のミッションではない。小惑星ベンヌの探査に向かっている米航空宇宙局(NASA)のOSIRIS-Rex(オサイリス・レックス)も、その計画の中で試料を回収する予定で、2018年後半にベンヌへの接近を開始する。両ミッションのチームは協力関係にあり、両探査機が持ち帰った試料は共有されることになっている。地球への帰還は、はやぶさ2が2020年、OSIRIS-RExが2023年の予定である。両探査機の帰還によって、この先何年にもわたって、私たちの起源を探るための試料を手にすることになる。

(翻訳:藤田貢崇)

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