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Nature Aging に掲載された一次研究論文(Articles および Letters)について、その概要を日本語で紹介しています。

Review Article : ヒト疾患で老化細胞を標的とするための戦略

Strategies for targeting senescent cells in human disease

doi:10.1038/s43587-021-00121-8

このReviewでは、分子基盤をはじめとする細胞老化研究の現状について総説する。また、老化に関連した多疾患罹患を治療するために、老化細胞を薬物標的とする仕組みについても調べている。

Letter : 世界的に高齢者は向社会的行動の増加を示すが、内集団への選好性も大きくなる

Older adults across the globe exhibit increased prosocial behavior but also greater in-group preferences

doi:10.1038/s43587-021-00118-3

J Cutlerたちは、人々がCOVID-19中のソーシャルディスタンシングや慈善寄付などの向社会的行動に参加する可能性が、年齢から予測されることを見出した。世界的に高齢者は支援に積極的だが、同時に内集団選好性もより強く、国際的な慈善団体への寄付はより少なかった。

Article : 毛包幹細胞の脱落が老化中の幹細胞枯渇を引き起こす

Escape of hair follicle stem cells causes stem cell exhaustion during aging

doi:10.1038/s43587-021-00103-w

C Zhangたちはライブイメージングを用いて、マウスの老化中に毛包幹細胞区画から上皮細胞が脱落することを示している。幹細胞の脱落は、細胞接着の低下と細胞外マトリックス遺伝子の発現低下と関連しており、毛包縮小の原因となる。

Article: GnRHパルスの頻度と不規則性は雄の老化に影響を及ぼす

GnRH pulse frequency and irregularity play a role in male aging

doi:10.1038/s43587-021-00116-5

視床下部は性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)の産生を介して全身の老化を制御する。Z Wangたちは、GnRHパルスの不規則性と加速が老化に先行して起こり、去勢や光遺伝学によりGnRHパルス頻度を低下させると、老化速度が遅くなり、寿命が延長することを示している。

Article: 正常老化とアルツハイマー病におけるグリアのトランスクリプトームに対するAPOE対立遺伝子の影響

Effect of APOE alleles on the glial transcriptome in normal aging and Alzheimer’s disease

doi:10.1038/s43587-021-00123-6

A Serrano-Pozoたちは、アルツハイマー病のアミロイドプラークや神経原繊維変化が生じる前であっても、アルツハイマー病に関連するAPOEε4対立遺伝子は、正常な老化脳においてミクログリアをファゴサイトーシス性で炎症促進性の状態にプライミングし得ることを見出した。

Article : APOE4関連アルツハイマー病に対するブメタニドの計算リポジショニングを支持する実験的証拠と実データの証拠

Experimental and real-world evidence supporting the computational repurposing of bumetanide for APOE4-related Alzheimer’s disease

doi:10.1038/s43587-021-00122-7

A Taubesたちは、計算ドラッグリポジショニングにより、ブメタニドがAPOE4関連アルツハイマー病(AD)の治療薬候補であることを特定した。ブメタニドの有効性は、ADマウスモデルと実際の電子記録データベースで検証された。

Analysis : 介護施設の所有権とCOVID-19のアウトブレイク、感染、死亡率の間の関連についての体系的検討

A systematic review of the associations between care home ownership and COVID-19 outbreaks, infections and mortality

doi:10.1038/s43587-021-00106-7

5か国で32の研究から、介護施設の所有権とCOVID-19の間の関連性についての証拠を調べた体系的な検討で、非営利や公共部門の介護施設と比べて、営利介護施設ではCOVID-19の転帰(感染と死亡率)が悪いことが明らかになった。

Technical Report : 誘導可能なp21-Creマウスモデルにより、p21を高発現する老化細胞をin vivoでモニタリングし操作する

An inducible p21-Cre mouse model to monitor and manipulate p21-highly-expressing senescent cells in vivo

doi:10.1038/s43587-021-00107-6

B Wangたちは、p21を高発現する細胞を標的化するマウスモデルを報告している。彼らはこのモデルを用いて、これらの細胞のin vivoでのモニタリング、ソーティング、イメージング、除去、調節を可能にした。このモデルは老化細胞を研究する上で有益なツールとなり得る。

Perspective : 統合的ストレス応答を調節して老化を遅らせ、加齢関連病変を改善する

Modulating the integrated stress response to slow aging and ameliorate age-related pathology

doi:10.1038/s43587-021-00112-9

統合的ストレス応答は、内外からのシグナルを受けてタンパク質合成の適応的再プログラム化を調節している。著者たちは、老化と長寿におけるその役割について検討し、健康やレジリエンス(回復力)を増強するための戦略を取り上げる。

Review Article : SARS-CoV-2、COVID-19、老化した免疫系

SARS-CoV-2, COVID-19 and the aging immune system

doi:10.1038/s43587-021-00114-7

高齢者では若齢者に比べてCOVID-19の死亡率が高い。Bartlesonたちは、COVID-19に対する高齢者の脆弱性の背景にある免疫機構について総説し、COVID-19の間に、高齢者の免疫を強化するための方法について議論する。

Article : ヒトの寿命と加齢関連疾患に対する保護に関連したコーディング遺伝子のまれなバリアント

Rare genetic coding variants associated with human longevity and protection against age-related diseases

doi:10.1038/s43587-021-00108-5

これまでで最大の百寿者コホートにおける今回の全エキソーム塩基配列研究で、Linたちは、保存された経路(例えばIISやAMPKシグナル伝達経路)が、線虫やハエ、マウスと同様に、ヒトでも寿命や健康老化に関連していることを示している。

Article: ストレス誘発性のmiR-31–CLOCK–ERK経路は、皮膚の老化に対する重要なドライバーかつ治療標的である

A stress-induced miR-31–CLOCK–ERK pathway is a key driver and therapeutic target for skin aging

doi:10.1038/s43587-021-00094-8

髪と皮膚の変化は、老化において最も顕著で初期に現れる兆候である。著者たちは、皮膚と毛包幹細胞(HFSC)の老化は、ストレス誘発性のmiR-31の発現上昇によって促進されることを報告する。miR-31はClockを標的とし、MAPK/ERKを活性化して上皮への分化転換によりHFSCを枯渇させる。MAPK/ERK阻害剤によりこの経路を遮断すると、皮膚の老化に対して保護的に働く。

Article: クエン酸担体の分解によるクロマチンリモデリングは、老化した間葉系幹細胞の骨形成を悪化させる

Chromatin remodeling due to degradation of citrate carrier impairs osteogenesis of aged mesenchymal stem cells

doi:10.1038/s43587-021-00105-8

老化した間葉系幹細胞(MSC)では骨形成の低下が見られる。Pouikliたちは今回、MSCの異常な分化とヒストンの低アセチル化のつながりを明らかにした。これはクエン酸担体Slc25a1のリソソームでの分解が亢進されることで、ミトコンドリアからのアセチルCoA 輸送が低下するために起こる。ヒストンアセチル化を若齢の状態に回復させると、骨形成が救済された。

Article : Mycはオリゴデンドロサイト前駆細胞機能の老化状態を決定する

Myc determines the functional age state of oligodendrocyte progenitor cells

doi:10.1038/s43587-021-00109-4

多能性因子Oct4、Sox2、Klf4およびc-Mycの一過的な発現は、組織の健康に対する幹細胞老化の影響を軽減することができる。Neumannたちは、Mycを単独で発現させると、老化したオリゴデンドロサイト前駆細胞が新生仔状態の細胞に変化し、また別の老化環境では中枢神経系の再生を高めるのに十分であることを示す。

Article : BRCA1またはBRCA2の生殖細胞系列変異を持つ女性の乳腺上皮では老化が加速されていることを示す証拠

Evidence for accelerated aging in mammary epithelia of women carrying germline BRCA1 or BRCA2 mutations

doi:10.1038/s43587-021-00104-9

老化は、遺伝子変異を持たない女性における乳がんの最も重要なリスク因子である。Shalabiたちは今回、組織学的には正常だが遺伝学的にがんになりやすい乳腺上皮細胞では、細胞系譜マーカーの喪失や、分化異常、老化や炎症に関連した遺伝子発現のトランスクリプトーム規模での上昇といった、老化促進の特徴が見られることを示す。

Resource : パーキンソン病の骨髄系細胞におけるミトコンドリア遺伝子とプロテアソーム・リソソーム系遺伝子の調節異常

Dysregulation of mitochondrial and proteolysosomal genes in Parkinson’s disease myeloid cells

doi:10.1038/s43587-021-00110-x

著者たちは、MyND(Myeloid Cells in Neurodegenerative Disease)イニシアチブの一環として、パーキンソン病患者と対照群からの初代単球と初代ミクログリアについてトランスクリプトームのプロファイリングを行い、パーキンソン病患者の免疫系において変化する経路と遺伝子を示している。

Review Article: 健康老化と疾患におけるオートファジー

Autophagy in healthy aging and disease

doi:10.1038/s43587-021-00098-4

このReviewでは、健康、老化、疾患におけるオートファジーの機構や役割について最近の研究をまとめ、オートファジーの過程を調節する薬剤が、老化関連疾患の抑制にどのように利用できるか考察する。

Review Article : 老化における健康のトランスレーショナルな測定値としてのフレイルの程度

The degree of frailty as a translational measure of health in aging

doi:10.1038/s43587-021-00099-3

フレイルの程度を測定することで、老化によって老化関連疾患が引き起こされる仕組みを理解する上でどのように役立ち、包括的な老年医学的評価や個別ケア計画から老年科学へのトランスレーションや、その逆を行う上でいかに手助けとなるかを、Rockwoodたちが考察している。

Letter : 若齢マウスの微生物相は選択的な老化関連行動障害を防ぐ

Microbiota from young mice counteracts selective age-associated behavioral deficits

doi:10.1038/s43587-021-00093-9

腸マイクロバイオームは老化に伴って変化し、脳を含め全身的に老化関連疾患に影響を及ぼす。著者たちは、若齢マウスからの糞便微生物相の移植による腸マイクロバイオームの若返りが、海馬の免疫系、メタボローム、トランスクリプトームにおいて老化誘導性の障害を回復させ、選択的な認知障害を救済することを示す。

Letter: 個別化シナリオを想像すると、高齢者でのウイルス感染の知覚リスクが選択的に増加する

Imagining a personalized scenario selectively increases perceived risk of viral transmission for older adults

doi:10.1038/s43587-021-00095-7

COVID-19感染リスクに対する情報コミュニケーションの認知介入研究で、高齢者は数的な情報を忘れる傾向があることが明らかになったが、社会的影響を伴う個別化シナリオを想像した後では、知覚リスクが増加することが報告された。

Article: クロマチン状態の変化は老化した哺乳類幹細胞で潜在的な転写を促進する

Altered chromatin states drive cryptic transcription in aging mammalian stem cells

doi:10.1038/s43587-021-00091-x

著者たちは、老化した哺乳類幹細胞は、加齢中のクロマチンで起こる大規模かつ特徴的な変化により、異常な転写産物を産生することを明らかにした。この現象は、これまでは単純な無脊椎動物モデルでしか知られておらず、それらの寿命を制限する。

Article : 老化細胞はアテローム性動脈硬化症における平滑筋細胞の生得的な修復機能を抑制する

Senescent cells suppress innate smooth muscle cell repair functions in atherosclerosis

doi:10.1038/s43587-021-00089-5

Childsたちは、アテローム性動脈硬化症のマウスモデルにおいて、老化細胞はIGFBP3を分泌して血管平滑筋細胞の移動促進性表現型の切り替えを抑制しており、老化細胞を選択的に除去すると、進行病変での繊維性皮膜の修復が促進されることを明らかにした。

Resource : マウスの初代好中球のマルチオミクスプロファイリングは性別と年齢に関連した機能調節のパターンを予測する

Multi-omic profiling of primary mouse neutrophils predicts a pattern of sex- and age-related functional regulation

doi:10.1038/s43587-021-00086-8

Luたちは、マウス骨髄の初代好中球について、個体老化や生物学的性別に対して横断的にトランスクリプトーム、リピドーム、メタボロームのアトラスを作成し、好中球の機能調節には生涯にわたる性的二型性があることを示している。

Resource : 全血のRNA塩基配列解読から明らかになった、パーキンソン病における免疫細胞と遺伝子発現の初期の変化

RNA sequencing of whole blood reveals early alterations in immune cells and gene expression in Parkinson’s disease

doi:10.1038/s43587-021-00088-6

著者たちは、パーキンソン病(PD)進行マーカーイニシアチブの参加者1,570名から採取した4,871試料の全血RNA-seqについて報告している。このResourceはPDと関連した血液ベースのトランスクリプトーム変化を記載し、PD初期にはリンパ球の減少に伴って好中球遺伝子の発現が増加することなどを示している。

Letter: COVID-19に曝露されたスペインの介護施設における死亡率に関するリスク因子の後ろ向きコホート研究

A retrospective cohort study of risk factors for mortality among nursing homes exposed to COVID-19 in Spain

doi:10.1038/s43587-021-00079-7

COVID-19パンデミック期間中のスペインで、介護施設入居者間の死亡率増加と関連した施設レベル要因には、複雑な疾患の患者の割合の高さ、パンデミック準備対策スコアの低さ、周辺地域でのCOVID-19発生率の高さが含まれていた。

Article: グリアのAP1は加齢に伴って活性化され、外傷性脳損傷により促進される

Glial AP1 is activated with aging and accelerated by traumatic brain injury

doi:10.1038/s43587-021-00072-0

グリアのAP1は、外傷性脳損傷(TBI)後の初期は保護的に働くが、活性が慢性的に持続すると、タウ病変や変性を引き起こすことが明らかになった。グリアのAP1は正常な加齢に伴って同様に活性化するため、この機構がTBIにより加速される可能性が示唆される。

Article: 深層学習に基づく炎症性老化時計(iAge)は、多疾患罹患、免疫老化、フレイル、心血管老化を追跡する

An inflammatory aging clock (iAge) based on deep learning tracks multimorbidity, immunosenescence, frailty and cardiovascular aging

doi:10.1038/s43587-021-00082-y

著者たちは深層学習を用いて、8〜96歳の1,001人の血液イムノームから、炎症性老化時計(iAge)を開発した。iAgeは多疾患罹患、免疫老化、フレイル、心血管老化を追跡し、百寿者での例外的な長寿にも関連している。iAgeの主要因子はケモカインCXCL9であり、CXCL9は内皮細胞の老化や機能を制御することが知られている。

Analysis : 老化を標的とすることの経済的価値

The economic value of targeting aging

doi:10.1038/s43587-021-00080-0

経済解析により、老化の標的化は、個々の疾患を根絶するよりも大きな経済的利益をもたらし得ることが示唆されている。老化を遅らせて平均余命を1年延ばせば38兆米ドル、10年では367兆米ドル相当の価値がある。

Perspective: 3つの側面から長寿配当を実現する

Achieving a three-dimensional longevity dividend

doi:10.1038/s43587-021-00074-y

このPerspectiveでは、長寿配当という社会経済的な概念について考察する。長寿配当では、平均余命、健康、経済という3つの側面の正の相関を通じて、健康的で生産的な老化が達成される。

Article: APOE4はアミロイドβとは無関係にシクロフィリンAを介して、老化したアルツハイマー病マウスモデルにおける進行期の血管性神経変性疾患を加速する

APOE4 accelerates advanced-stage vascular and neurodegenerative disorder in old Alzheimer’s mice via cyclophilin A independently of amyloid-β

doi:10.1038/s43587-021-00073-z

この研究では、アルツハイマー病の最大の遺伝的リスク因子の1つであるAPOE4が、アミロイドβの存在とは無関係に、周皮細胞でのシクロフィリンA経路の活性化を介して老化マウスにおける進行期の血管機能障害や神経変性を促進することを示している。

Article: ADAMANT:AADvac1のプラセボ対照無作為化第II相試験¬—アルツハイマー病のタウ病変に対する能動免疫療法

ADAMANT: a placebo-controlled randomized phase 2 study of AADvac1, an active immunotherapy against pathological tau in Alzheimer’s disease

doi:10.1038/s43587-021-00070-2

著者たちは、アルツハイマー病に対するタウワクチンであるAADvac1の24か月間にわたる第II相試験の結果を報告している。AADvac1は安全であり、高レベルの抗体を誘導することが確認されたが、研究試料全体では、臨床転帰に有意な変化は認められなかった。

Resource : 健康老化との比較によるCOVID-19と非COVID-19肺疾患の細胞プロテオミクスと血漿プロテオミクスの決定因子

Cellular and plasma proteomic determinants of COVID-19 and non-COVID-19 pulmonary diseases relative to healthy aging

doi:10.1038/s43587-021-00067-x

Arthurたちは、71人のCOVID-19あるいは他の炎症性肺疾患の患者と、25〜80歳の148人の健常ドナーから採取した血漿の生化学的およびプロテオミクス(SomaLogic)プロファイリングと、末梢血単核細胞のCyTOF免疫表現型について報告する。このResourceでは、健康老化や他の肺疾患との比較から、COVID-19に固有の決定因子が明らかになった。

Resource : 定量ホスホプロテオミクスから明らかになったアルツハイマー病におけるキナーゼネットワークの調節異常

Quantitative phosphoproteomics uncovers dysregulated kinase networks in Alzheimer’s disease

doi:10.1038/s43587-021-00071-1

Morshedたちは、アルツハイマー病患者の脳組織のプロテオームとホスホプロテオームを解析した。患者の不均一性解析から、グリアの病変と複数のシグナル経路が、疾患の進行段階と結び付けられた。

Review Article: 高齢者における難聴と情動の調節異常を結びつける神経回路と行動経路

Neural circuits and behavioral pathways linking hearing loss to affective dysregulation in older adults

doi:10.1038/s43587-021-00065-z

このReviewでは、加齢性難聴とうつ病を結びつける証拠について考察し、その根底にある神経生物学的経路に対するモデルを提示し、聴覚障害を持つ高齢者でうつ病のリスクを減らすための今後の研究の方向性を示している。

Letter: 退役軍人省の規範的加齢研究における大気汚染への短期曝露、認知能力および非ステロイド性抗炎症薬の使用

Short-term air pollution, cognitive performance and nonsteroidal anti-inflammatory drug use in the Veterans Affairs Normative Aging Study

doi:10.1038/s43587-021-00060-4

退役軍人省の規範的加齢研究の高齢男性のコホートにおいて、危険レベル未満の微粒子状物質(PM2.5)に対するわずか数週間の曝露が、高齢者の認知機能を阻害することが明らかになった。しかし、非ステロイド性抗炎症薬を服用している人では、この有害な作用の軽減が見られた。

Article: 加齢関連lncRNAは進化的に保存されており、NFκBシグナル伝達に関与している

Aging-associated lncRNAs are evolutionarily conserved and participate in NFκB signaling

doi:10.1038/s43587-021-00056-0

加齢、炎症、老化はNFκBにより制御されている。Cai とHanたちは、比較ゲノミクスから、NFκB駆動型の転写による加齢の間に発現が上昇するlncRNAファミリーを特定した。また、これらの加齢関連lncRNAの多くは、続いてNFκB活性を調節することが明らかになった。

Article: KDM4は老化細胞のエピゲノムリモデリングを調整して老化関連分泌表現型を促進する

KDM4 orchestrates epigenomic remodeling of senescent cells and potentiates the senescence-associated secretory phenotype

doi:10.1038/s43587-021-00063-1

老化細胞や炎症性サイトカイン産生(老化関連分泌表現型:SASP)は、老化やがんなどの疾患に影響を及ぼす。Zhangたちは、KDM4によるエピゲノムリモデリングがSASPを制御しており、腫瘍微小環境の間質細胞によるKDM4の発現が前立腺がんを促進することを報告する。

Resource : 大規模な血漿プロテオミクス解析による、認知症リスクに関連したタンパク質と経路の特定

Large-scale plasma proteomic analysis identifies proteins and pathways associated with dementia risk

doi:10.1038/s43587-021-00064-0

Walkerたちは、認知症でない高齢者において、将来的な認知症リスクと関連する38の候補タンパク質を特定したプロテオーム規模関連解析について報告する。これらのタンパク質の経路解析では、認知症の発症には免疫、脂質、代謝シグナル伝達、止血の経路が関与していることが明らかになった。

Perspective: エピトランスクリプトミクスのレンズを通して見た老化

Aging through an epitranscriptomic lens

doi:10.1038/s43587-021-00058-y

このPerspectiveでMcMahonたちは、老化と加齢関連疾患におけるRNAの転写後修飾(エピトランスクリプトーム)の新たな役割と意義について調べ、老化過程を調節する可能性のある潜在的なエピトランスクリプトーム機構やその機能不全を浮き彫りにしている。

Review Article: 高齢者での多剤併用に対する新たな方法

Emerging approaches to polypharmacy among older adults

doi:10.1038/s43587-021-00045-3

多剤併用は、多くの老年症候群と絡み合った主要な健康課題である。本Reviewでは、最新の研究の全体像について概説し、多剤併用に取り組むための既存の方法と新たな方法の批判的評価を紹介する。

Letter: 老化した中枢神経系における細胞傷害性T細胞の蓄積は、軸索変性を引き起こし、認知機能と運動機能の低下に関与する

Accumulation of cytotoxic T cells in the aged CNS leads to axon degeneration and contributes to cognitive and motor decline

doi:10.1038/s43587-021-00049-z

老化は中枢神経系(CNS)の構造的変化と機能的変化を伴って起こる。今回著者たちは、細胞傷害性CD8+ T細胞が正常老化の間にCNSに蓄積し、これが軸索の損傷を引き起こし、老化に関連した認知機能と運動機能の低下に関与していることを明らかにした。

Article: 破骨細胞由来miRNAのエキソソームによる軟骨細胞への輸送は変形性関節症に関与する

Exosomal transfer of osteoclast-derived miRNAs to chondrocytes contributes to osteoarthritis progression

doi:10.1038/s43587-021-00050-6

著者たちは、破骨細胞由来マイクロRNAのエキソソームによる軟骨細胞への輸送は、マウスにおいて軟骨のマトリックス変性に対する抵抗性や血管形成、感覚神経支配を低下させ、変形関節症の進行を促進することを示している。

Article: 低酸素状態はHIF1を介してアルツハイマー病におけるミクログリアのミトコンドリア代謝を低下させる

Hypoxia compromises the mitochondrial metabolism of Alzheimer’s disease microglia via HIF1

doi:10.1038/s43587-021-00054-2

ミクログリアはアルツハイマー病の脳におけるアミロイドβプラークの除去に役立ち得るが、機能不全になって疾患の進行に関与する可能性もある。March-Diazたちは、アルツハイマー病に対する潜在的に修飾可能なリスク因子である低酸素状態が、プラーク近傍のミクログリアの代謝と機能を破壊し、神経病理に関与している可能性があること示す。

Analysis: 加齢関連疾患の間で見られる共通の遺伝的関連性

Common genetic associations between age-related diseases

doi:10.1038/s43587-021-00051-5

著者たちは、英国バイオバンクの遺伝学的および人口統計学的データを用い、発症年齢のプロファイルに基づいて116のありふれた疾患をクラスター化し、共通する病因を示唆している。4つの疾患クラスターのうち2つは、加齢関連遺伝子と関係していたが、機能的濃縮度と進化的プロファイルが異なっていた。

Review Article: 健康な老化と血液脳関門

Healthy aging and the blood–brain barrier

doi:10.1038/s43587-021-00043-5

この総説では、血液と中枢神経系の間の相互作用を制御する調節性境界面である血液脳関門が、正常な加齢の間にどのように変化するのかを取り上げ、これらの変化の一部が、加齢関連疾患の素因となり得る仕組みについて考察する。

Article: 食物量に対する嗅覚は、脳から腸への信号を介して食餌制限による長寿命を調節する

Olfactory perception of food abundance regulates dietary restriction-mediated longevity via a brain-to-gut signal

doi:10.1038/s43587-021-00039-1

著者たちは、線虫の一種(Caenorhabditis elegans)において、食物量に対する嗅覚が食事制限による長寿命への影響を調節することを見出した。食物の匂いは、オクトパミンを介して腸にシグナルを送る嗅覚回路を活性化し、食餌制限によって誘導される長寿命を抑制することが明らかになった。

Article: 短い機能不全のテロメアは腎繊維症を発症しやすくする

Short and dysfunctional telomeres sensitize the kidneys to develop fibrosis

doi:10.1038/s43587-021-00040-8

この研究は、テロメアの短縮と機能不全によって腎臓で繊維症が起こりやすくなり、2つの腎繊維症マウスモデルで上皮間葉転換に関連した遺伝的プログラムが亢進されることを示している。

Article: 髄鞘再生能力の加齢依存的な低下はアペリン–APJシグナル伝達を介して起こる

Age-dependent decline in remyelination capacity is mediated by apelin–APJ signaling

doi:10.1038/s43587-021-00041-7

伊藤益美(国立精神・神経医療研究センター)たちは今回、アペリン受容体APJの発現低下により、老化した脳での再生が損なわれることを示している。循環血中のアペリンは、APJを介してオリゴデンドロサイトにシグナルを伝達して髄鞘再生を手助けしており、APJアゴニストを用いて老齢マウスでこの経路を回復させることができる。

Article: 同年代の中年成人の間で見られる生物学的な加齢のペースの違いは、将来的なフレイルのリスクや指針に影響を及ぼす

Disparities in the pace of biological aging among midlife adults of the same chronological age have implications for future frailty risk and policy

doi:10.1038/s43587-021-00044-4

加齢に関連した多臓器系の衰えを20年間にわたり追跡したコホート研究から、老化の最も早いグループでは、中年期にはすでに認知機能低下、脳の老化の兆候、感覚運動機能の低下が見られ、加齢を後ろ向きに捉えていることが分かった。

Resource: sncRNAの高深度塩基配列解読から明らかになった、パーキンソン病の進行におけるトランスクリプトームの特徴と調節モジュール

Deep sequencing of sncRNAs reveals hallmarks and regulatory modules of the transcriptome during Parkinson’s disease progression

doi:10.1038/s43587-021-00042-6

著者たちは、パーキンソン病(PD)の2つの縦断的コホートを特徴づける低分子ノンコーディングRNAアトラスを報告している。この研究から、疾患検出のためのバイオマーカー候補や、これらとPDの分子的特徴との関連性、疾患の進行に関する調節性モジュールが明らかになった。

Perspective: エイジズムと高齢者虐待のつながりを調べる

Investigating the connection between ageism and elder mistreatment

doi:10.1038/s43587-021-00032-8

証拠はほとんどないものの、エイジズムは高齢者虐待の一因となる社会的要因としてしばしば引き合いに出される。このPerspectiveでは、これらの問題を結びつける限られた数の研究を検証し、この関連性をさらに理解するためのモデルと研究課題を提唱する。

Article: 転写コアクチベーターCBP/p300はミトコンドリアストレスに応答して寿命を伸ばす進化的に保存されたノードである

The transcriptional coactivator CBP/p300 is an evolutionarily conserved node that promotes longevity in response to mitochondrial stress

doi:10.1038/s43587-020-00025-z

ストレスを受けたミトコンドリアは、健康状態を改善するために複数の防御経路を活性化する。Liたちは、ミトコンドリア機能を保護して健康と寿命を促進するミトコンドリアストレスシグナル伝達において、アセチルトランスフェラーゼCBP/p300が中心的な役割を果たしていることを明らかにした。

Article: 長寿命の齧歯類であるメクラネズミにおける適応免疫の独特な構成

Distinct organization of adaptive immunity in the long-lived rodent Spalax galili

doi:10.1038/s43587-021-00029-3

長寿命のガリラヤヤマメクラネズミ(Spalax galili)が持つ適応免疫系の研究によって、メクラネズミでは加齢に伴う記憶T細胞クローンやエフェクタープログラムの大きな蓄積が起こらないことが分かった。このような構成は、持続的なクローン増殖が引き起こす加齢関連性炎症の負荷を軽減することで、メクラネズミの長く健康な寿命の原因となっている可能性がある。

Article: 異なるタイプの幹細胞分裂が毛包での器官再生と加齢を決定する

Distinct types of stem cell divisions determine organ regeneration and aging in hair follicles

doi:10.1038/s43587-021-00033-7

著者たちは、マウスで毛包の器官恒常性や加齢を調節する非典型的なタイプの幹細胞分裂を見出した。これらの「ストレス応答性タイプ」非対称細胞分裂は、毛包幹細胞の基底膜からの分離を引き起こし、これらの幹細胞の枯渇や消失、器官老化の原因となる。

Article: 気道送達によるSIRT3遺伝子発現の回復は、マウスにおける加齢に関連した持続性肺繊維症を消散させる

Restoration of SIRT3 gene expression by airway delivery resolves age-associated persistent lung fibrosis in mice

doi:10.1038/s43587-021-00027-5

著者たちは肺繊維症のマウスモデルを用いて、筋繊維芽細胞でSIRT3を過剰発現させると、これらの細胞でアポトーシスに対する閾値が低下し、その結果として、これらの細胞の組織からの除去が起こり、老化マウスで失われていた繊維症を消散させる能力が回復することを見出した。

Article: 老年期の死亡率と関連するニューロンの血液マーカー

A neuronal blood marker is associated with mortality in old age

doi:10.1038/s43587-021-00028-4

著者たちは、ヒトではNfLの血漿レベルが加齢に伴って上昇し、90歳代や100歳以上における死亡率と関連していることを明らかにした。マウスで寿命を延長させる食餌制限操作を行うと、ヒトと同様の加齢に関連した血中NfLレベルの上昇が弱められた。

Article: 全国規模での集団ベースの縦断的マッチ化コホート研究で、認知症は感染症関連の病院受診のリスク因子であることが明らかになった

Dementia identified as a risk factor for infection-related hospital contacts in a national, population-based and longitudinal matched-cohort study

doi:10.1038/s43587-020-00024-0

Janbekたちは、全国規模での集団ベースの縦断的マッチ化コホート研究で、認知症は感染に関連した病院受診に対するリスク因子であることを見出し、感染症が認知症の初期兆候である可能性があると結論している。

Perspective: 非同期的、伝染性、デジタル的:老化に関する新たな概念

Asynchronous, contagious and digital aging

doi:10.1038/s43587-020-00015-1

RandoとWyss-CorayはこのPerspectiveで、細胞と組織の老化過程に関する新しい概念や、それらがどのように個人の健康寿命や寿命に影響するかに焦点を当てて、老化に関する生物学分野の最近の進展について論じている。

Perspective: 恒常性が崩れていく過程としての身体的フレイル症候群

The physical frailty syndrome as a transition from homeostatic symphony to cacophony

doi:10.1038/s43587-020-00017-z

Linda Friedたちは、身体的フレイル症候群は、健康や回復力の根底にある複雑な動的システムの調節不全を反映したものであると考えており、新たな予防法や治療法の意味について考察している。

Review Article: 断続的・周期的絶食、寿命、疾患

Intermittent and periodic fasting, longevity and disease

doi:10.1038/s43587-020-00013-3

断続的絶食と周期的絶食は、個体寿命や健康寿命を延長する可能性を秘めた重要な介入手段として注目が集まっている。この総説では、これらがモデル生物やヒトで個体寿命や健康寿命に影響する仕組みや、それらが主要な栄養感知シグナル伝達経路とどのように関連するのか、また再栄養補給の重要性について考察する。

Article: セストリンは食餌アミノ酸応答における幹細胞機能や寿命の主要な調節因子である

Sestrin is a key regulator of stem cell function and lifespan in response to dietary amino acids

doi:10.1038/s43587-020-00001-7

進化的に保存されたアミノ酸感知タンパク質であるセストリンが、ショウジョウバエでの食餌制限による利点の主要なメディエーターであることが、本研究で明らかになった。セストリンはTOR経路を介して腸幹細胞の活性を調節し、腸の健康と寿命を向上させる。

Article: マウスで生涯にわたり食餌中の分岐鎖アミノ酸を制限すると、フレイルや寿命に性特異的な利点がある

Lifelong restriction of dietary branched-chain amino acids has sex-specific benefits for frailty and life span in mice

doi:10.1038/s43587-020-00006-2

分岐鎖アミノ酸レベルを下げた食餌を与えられたマウスでは代謝的な健康が改善され、この食餌を生涯続けると、雄ではフレイルの軽減や寿命の延長が起きたが、雌ではこの効果は見られなかった。

Article: 異なる種集団間で共通して見られる性別や年齢に関連した成人腸内微生物相の軌跡

Sex- and age-related trajectories of the adult human gut microbiota shared across populations of different ethnicities

doi:10.1038/s43587-020-00014-2

Zhangたちはメタゲノム塩基配列を行い、中国、イスラエル、オランダの4つのコホートにおいて、性別と年齢に依存した腸内微生物相の軌跡を調べた。その結果、すべての集団にわたって見られる老化に関連した腸内微生物相の軌跡が見つかり、連鎖球菌の1種Streptococcus gordoniiの存在量が実年齢を予測することが分かった。

Article: 老化繊維芽細胞による炎症性単球の誘導は、ヒトの加齢において抗原特異的な組織免疫を阻害する

Recruitment of inflammatory monocytes by senescent fibroblasts inhibits antigen-specific tissue immunity during human aging

doi:10.1038/s43587-020-00010-6

老化繊維芽細胞により炎症性単球が誘導され、その後これらが常在性記憶T細胞を抑制するために、加齢中に皮膚の免疫が弱まることが、本研究で明らかになった。p38 MAPKシグナル伝達を抑制すると、これらの単球の誘導と機能が阻害され、免疫が回復する。

Article: 軽度認知障害における、血漿バイオマーカーの組み合わせに基づいた認知機能低下と認知症の個別化予後予測

Individualized prognosis of cognitive decline and dementia in mild cognitive impairment based on plasma biomarker combinations

doi:10.1038/s43587-020-00003-5

血液ベースのバイオマーカーの組み合わせが、軽度認知障害の患者でアルツハイマー病(AD)に起因する認知機能低下や認知症の予測に利用できることが、この研究で明らかになった。タウや神経変性に対するバイオマーカーは、4年間にわたる認知機能低下やAD発症の正確な予後を示した。

Resource: ヒトの古典的単球の改良されたエピジェネティックプロファイリングはDNAメチローム中に健康な老化の特異的なシグネチャーを示す

Enhanced epigenetic profiling of classical human monocytes reveals a specific signature of healthy aging in the DNA methylome

doi:10.1038/s43587-020-00002-6

若年と高齢の健康な男性から採取した循環血中の単球に対するマルチオミクスプロファイリングから、老化に関連したDNAの低メチル化と高メチル化領域、細胞のクロマチン全体像、遺伝子発現への影響など、健康な老化の主要な決定要因が明らかになった。

Resource: ヒト古典的単球の改良型エピジェネティックプロファイリングによって明らかになった、DNAメチローム中の健康な加齢に特異的なシグネチャー

Enhanced epigenetic profiling of classical human monocytes reveals a specific signature of healthy aging in the DNA methylome

doi:10.1038/s43587-020-00002-6

若齢と高齢の健康な男性から採取した循環血中の単球に対するマルチオミクスプロファイリングから、加齢に関連したDNAの低メチル化領域と高メチル化領域や、細胞のクロマチン全体像、遺伝子発現に対する影響など、健康な加齢の主要な決定要因が明らかになった。

Article: セストリンは食餌中のアミノ酸への応答における幹細胞機能と寿命の主要な調節因子である

Sestrin is a key regulator of stem cell function and lifespan in response to dietary amino acids

doi:10.1038/s43587-020-00001-7

進化的に保存されたアミノ酸感知タンパク質であるセストリンが、ショウジョウバエにおける主要メディエーターであることが明らかになった。セストリンはTOR経路を介して腸幹細胞の活性を調節し、腸の健康と寿命を改善する。

Article: 血漿バイオマーカーの組み合わせに基づいた、軽度認知障害での認知機能低下と認知症に対する個別化予後予測

Individualized prognosis of cognitive decline and dementia in mild cognitive impairment based on plasma biomarker combinations

doi:10.1038/s43587-020-00003-5

血液ベースのバイオマーカーの組み合わせは、軽度認知障害患者において、アルツハイマー病(AD)に起因する認知機能低下と認知症の予測に利用できることが、今回の研究で明らかになった。タウと神経変性に対するバイオマーカーは、4年後の認知機能低下とADへの移行に対する正確な予後を示した。

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