2026年5月号Volume 23 Number 5
AI時代の生態学研究の在り方
AIやセンサー技術の進化により、生態学の研究スタイルが激変している。観測の自動化とAIの活用によって、かつてない規模のデータを効率よく扱えるようになった一方、自然に触れずに研究を完結させる「経験の絶滅」が懸念されている。デジタル化の恩恵を享受しつつ、現場でしか得られない洞察をどう維持するのか。AI時代の生態学が進むべき道を探る。
Editorial
Research Highlights
リサーチハイライト
「小児の重症自己免疫疾患にCAR T細胞療法が効果」「最新の宇宙地図の銀河は予想ほど密集していなかった」「足部に埋め込んだ接着剤で壁をよじ登るロボット」「共生関係の袋小路に入り込んだ甲虫」、他。
News in Focus
ポケモン30周年
架空の「ポケットモンスター」が科学をどう形作ったか
日本発の社会現象「ポケモン」は、進化、生物多様性、研究公正といった幅広い分野において、さまざまな世代の研究者に影響を及ぼしてきた。
生物学者は自律型ラボに取って代わられるのか?
生物系のラボにAI駆動型ロボットが導入されつつあるが、研究者らは、人間のスキルは依然として不可欠だと主張している。
精神医学の「バイブル」が改訂へ
次版のDSMは、精神疾患の原因により重きを置いた「生きた」文書になり得るのか。
NIH、一部の実験の規制を緩和
ヒトを対象とした研究の一部が臨床試験の枠組みから外れることになるが、皆がこの変更に賛同しているわけではない。
超百寿者研究によって「超長寿」の遺伝学を探る
100歳の誕生日を迎えられる人の秘密とは何なのだろうか。ブラジルの人々を長寿へ導く要因の解明が試みられている。
長寿の秘訣は遺伝子にあり:寿命の半分は遺伝する
老化の遺伝的制御を理解すれば、老化の進行を食い止める治療法につながる可能性がある。
適度なコーヒーで脳の加齢が減速する可能性
適度なカフェイン摂取は認知症リスクを低下させ、認知機能の低下を遅らせる可能性が、大規模研究で示唆された。
米国が気候変動の「公衆への脅威」認定を撤回
2009年の危険性認定が撤回されたことで、数十億トンの温室効果ガスが余分に排出されることになる。
中国が研究不正を放置する大学に制裁政策
中国政府は、重大な研究不正により撤回された論文の国家データベースを構築したのに続いて、研究不正に厳正に対処しなかった大学に対して制裁を科す政策を発表した。
「暗黒酸素」源の深海ロボット探査計画
探査の目的は、太平洋の深海底で発見された酸素がどこから発生しているのかを解明することにある。
麻疹が全世界で急増中 あなたにもリスクが?
予防接種を完了した人の発症例は非常に少ないが、ウイルスへの曝露機会が増えると発症例がもっと増える可能性がある。
Features
誤情報と戦う科学インフルエンサーの戦略
科学者や医療専門家らは、科学インフルエンサーとして、TikTokなどのプラットフォームで気候変動否定論やワクチン懐疑論、健康疑似科学と戦っている。
AI時代の野外調査の未来
新しい技術の活用が加速する中、一部の生態学者は自然そのものとの接点を失いつつあるのではないかと危惧している。
研究における動物実験の廃止は可能なのか
器官モデルやコンピューターモデルの進歩によって、一部の動物実験は代替できる可能性が出てきたが、克服すべき大きな障壁は依然として存在する。
Japanese Author
Free access
骨のないショウジョウバエにもカルシウムの調節機構があった!
カルシウムは神経活動や筋収縮に欠かせないが、昆虫体内での調節機構は不明だった。筑波大学生存ダイナミクス研究センターの岡本直樹准教授らは、ショウジョウバエにカルシウム貯蔵器官が存在していることを発見し、骨のない昆虫が体内のカルシウムを制御する、精巧な分子機構を突き止めた。
News & Views
ガラスへのレーザー書き込みによるデータの超長期保存
ガラスの光学特性を変化させて情報を符号化するアーカイブシステムが開発された。このシステムはデータ寿命が1万年を超えると予測され、大量のデータを高速かつ効率的に保存する新たな方法となる可能性がある。
重力波観測の10年
2016年、重力波を初めて直接的に検出したことが報告された。米国のLIGO検出器によるこの観測は、宇宙を観測する新たな方法をもたらした。
腫瘍と脳のクロストークががん免疫を制限する
感覚ニューロンは、器官の内外からのシグナルを検出して情報を脳へ送っている。肺がんは、この経路を流用して、免疫応答を減弱させている。
Advances
音波消火
音波で酸素を遮断する。
系外衛星のゆりかご
巨大な系外惑星を囲むダスト円盤に複雑な炭素化合物が検出された。
Where I Work
Mohammed Amar
Mohammed Amarは、ソコトラ絶滅危惧樹木プロジェクトの現地責任者。プロジェクトへの主な出資者はフランクリン財団(スイス・ジュネーブ)。
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