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コムギ:コムギに赤さび病抵抗性を付与する、タンデムキナーゼを含む特殊な融合タンパク質

Nature Genetics 55, 6 doi: 10.1038/s41588-023-01401-2

野生近縁種からの染色体断片の移入は、病害抵抗性遺伝子によって作物遺伝資源を豊かにするための手法の1つとして確立されたものである。本研究では、変異誘発とトランスクリプトームの塩基配列決定を行って、野生イネ科植物Aegilops umbellulataからパンコムギに導入された赤さび病抵抗性遺伝子Lr9をクローニングした。その結果、Lr9は、キナーゼが縦列に並んだ特殊な融合タンパク質をコードしていることが明らかとなった。コムギLr9移入株、およびAe. umbellulataLr9候補供与種のロングリード塩基配列決定により、Lr9を含む約28.4 Mbの転座断片の塩基配列を構築するとともに、この転座の染色体切断点を特定することができた。さらに我々は、同様な手法を用いてLr58をクローニングした。Lr58Aegilops triuncialisから移入されたと報告されていたが、Lr9と比較したところ、コード領域の塩基配列が同一であることが判明した。細胞遺伝学的解析およびハプロタイプ解析を行ったところ、2つの遺伝子は同じ転座イベントを起源に持つことが裏付けられた。本研究は、コムギの病害抵抗性に関して近年明らかになりつつあるキナーゼ融合タンパク質が果たす役割について新たな知見を提供し、育種における病害抵抗性遺伝子の選択の幅を広げるものである。

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