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炎症性腸疾患:東アジア系およびヨーロッパ系の集団における炎症性腸疾患の遺伝的構造

Nature Genetics 55, 5 doi: 10.1038/s41588-023-01384-0

炎症性腸疾患(IBD)は消化管の慢性炎症性疾患で、主にクローン病(CD)および潰瘍性大腸炎(UC)の2つのサブタイプに分けられる。現在知られているIBDと相関を示す遺伝子座位のほとんどは、ヨーロッパ系(EUR)の人々から検出されたものである。ここでは、東アジア系(EAS)の1万4393例の症例と1万5456例の対照を対象とした、EASでは最大規模のIBD関連遺伝子解析を報告する。EASのみを対象とした解析では80のIBD関連座位が特定された。37万人(約3万症例)のEURを合わせたメタ解析では320のIBD関連座位が特定され、そのうち81は新規座位であった。EASに多く見られるコード領域のバリアントから、ADAP1GIT2のような、IBDに関連を有する多数の遺伝子が新たに発見された。遺伝的バリアントのIBDに対する効果は2つの祖先系の集団で概して一致しているが、潰瘍性大腸炎と比較してクローン病の遺伝的基盤は祖先系に依存する度合いが大きい傾向にあり、対立遺伝子頻度(NOD2の場合)や効果サイズ(TNFSF15の場合)の差がその原因となっている。最後に、両方の祖先系を取り込むことでIBDのポリジェニックリスクスコア(PRS)を改善し、その精度を大幅に向上させることができた。この結果は、PRSの公平な開発にあたっては、多様性を重視することが重要であることを改めて示している。

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