Article

ゲノム疫学:最尤法でのパンデミック規模の系統解析

Nature Genetics 55, 5 doi: 10.1038/s41588-023-01368-0

系統解析はゲノム疫学において重要な役割を担っている。重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)ゲノムの系統解析は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック(世界的大流行)の研究と封じ込め支援のために作成された、並ぶもののない量のゲノム塩基配列データによって可能になり、このウイルスの起源、拡散、新しい変異株の出現や増殖成功度を明らかにした。しかし、最尤法やベイズ法を含む、ほとんどの系統解析手法は、現在のパンデミックのデータセットのサイズに拡大できない。本論文では、これまでにない規模で疫学ゲノムデータセットの尤度に基づく系統解析を行うための手法であるMAximum Parsimonious Likelihood Estimation(MAPLE)について報告する。MAPLEは、既存の最尤法よりも正確にSARS-CoV-2の系統樹を推定し、一方、速さは最大数千倍高速で、大規模なデータセットでも少なくとも100分の1のメモリーしか必要としない。これにより、ゲノム疫学を行える範囲が広がり、数百万のゲノムのデータセットで、正確な系統解析、系統地理学解析、系統動態解析を継続的に行うことが可能になる。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度