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ワタ:四倍体ワタの繊維形成過程における重複遺伝子の発現調節機構

Nature Genetics 55, 11 doi: 10.1038/s41588-023-01530-8

生物の倍数性は転写調節を複雑にし、表現型の多様性を増大させる。しかし、倍数体に共存するサブゲノム間での遺伝子発現調節の動態については解明が進んでいない。本論文では、四倍体ワタのリクチメン(Gossypium hirsutum)の繊維形成過程を制御する遺伝的機構を、376のゲノムと2215の時系列トランスクリプトームを塩基配列解読することにより明らかにした。我々は、段階的に進行する繊維形成過程を制御する36の遺伝子モジュールを明らかにし、それらのモジュールに含まれる1258の遺伝子の特徴を解明した。さらに、サブゲノムに存在する重複遺伝子(ホモログ)同士の分割された発現を統制する遺伝的要素を明らかにした。栽培品種では、繊維の品質に関わるサブゲノムのホモログのうち、好ましい表現型を表す対立遺伝子の集まりは約30%にすぎず、繊維の品質の改良においてはサブゲノムの加算的効果を活用する余地があることが示された。我々はゲノム情報を活用した育種戦略を構想しており、特に栽培化の過程で純化選択の対象となって失われてしまった繊維の品質に関する48の好ましい対立遺伝子に注目している。本研究は、繊維形成過程における遺伝子調節の動態を明らかにし、多倍体植物の表現型の基盤となるサブゲノム間の発現調整機構が持つ潜在的な可能性を示すものである。

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