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幹細胞:骨髄ニッチの細胞可塑性は造血幹細胞の再生を促す

Nature Genetics 55, 11 doi: 10.1038/s41588-023-01528-2

造血幹細胞(HSC)は骨髄破壊後に再生する。骨髄破壊は骨髄に悪影響を及ぼし、ニッチの主要構成成分であるレプチン受容体発現細胞の脂肪細胞分化を大規模に促進させる。骨髄ニッチの再生は脂肪細胞の消散と関連しているが、その機構についてはあまり分かっていない。本研究では、Plin1-creERノックインマウスを用いて、再生中のニッチにおける脂肪細胞の運命をin vivoで追跡した。その結果、骨髄脂肪細胞は非常に動的であり、骨髄破壊後の再生中にレプチン受容体発現細胞へ脱分化することが明らかになった。また、骨髄脂肪細胞からは骨損傷後に骨芽細胞系譜の細胞が生じる。定常状態の骨髄脂肪細胞の細胞運命も可塑的だった。脂肪細胞をはじめとする骨髄間質細胞で脂肪トリグリセリドリパーゼ(Atgl)を欠失させると、脂肪細胞の脱分化が妨げられ、骨髄破壊後のHSCの再生が著しく損なわれ、Bリンパ球産生も障害されたが、それらは定常状態では起こらなかった。従って、HSCとそのニッチの再生は、骨髄脂肪細胞の細胞可塑性に依存している。

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