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柑橘類:パンゲノム解析により得られたミカン亜科の進化および柑橘類のクエン酸蓄積のカギとなる遺伝子についての新たな知見

Nature Genetics 55, 11 doi: 10.1038/s41588-023-01516-6

ミカン亜科(Aurantioideae)には、オレンジやレモンといった世界中で栽培されているカンキツ(Citrus)属の複数の種が含まれている。カンキツ種の起源は長年議論の対象となっており、ミカン亜科についての知見も少ない。本論文で我々は、ミカン亜科の314アクセッションのゲノム塩基配列解読データを収集するとともに、12種については新規にゲノムをアセンブリし、グラフベースのパンゲノムを作成した。ゲノムデータを解析したところ、古代のインドプレートがカンキツ近縁属の祖先地域であり、中国中南地域がカンキツ属の発祥中心地であることが示唆された。カンキツ属の遺伝子PH4の塩基配列と発現をカンキツ属近縁種のものと比較したところ、かなりの違いがあることが明らかとなった。遺伝子編集実験および生化学的実験からは、柑橘類の果実へのクエン酸の蓄積においてPH4が中心的役割を果たすことが示された。本論文は、ミカン亜科の起源と進化、および果実の味の変遷を支える制御機構について、新たな知見を提供するものである。

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