Article

自閉スペクトラム症:コード領域のまれなバリアントは自閉スペクトラム症の遺伝的構造と表現型の関係性について手掛かりを提供する

Nature Genetics 54, 9 doi: 10.1038/s41588-022-01104-0

自閉スペクトラム症(ASD)患者の一部は一般集団では稀にしか同定されない機能的な変化をもたらすバリアントを有する。本論文では、6万3237人のコホートにおいて、タンパク質短縮型バリアント(PTV)、ミスセンスバリアント、コピー数バリアント(CNV)の統合解析により、これらのバリアントによって機能喪失する遺伝子を探索した。偽発見率(FDR)0.001以下でASDに関連する72の遺伝子を見いだした(FDR 0.05以下では185遺伝子)。ASDに関連を示した遺伝子の57.5%はde novo PTV、21.1%は機能が障害されるミスセンスバリアント、8.44%はCNVが占めているが、CNVの相対リスクへの関与が最も大きかった。発達遅延(DD)が確認されたコホートでのメタ解析(n = 91,605)から、FDR 0.001以下でASD/DDに関連する373の遺伝子が得られ(FDR 0.05以下では664遺伝子)、その一部はASDコホートとDDコホートの間でバリアントの相対頻度が異なっていた。DD関連遺伝子は、神経前駆細胞や未成熟な神経細胞の発現する遺伝子にエンリッチされていたが、ASDにおいてより強力な証拠を示す遺伝子は、成熟神経細胞にエンリッチされており、統合失調症関連遺伝子と重なりが見られることから、ASDと統合失調症は発症リスクにつながる共通経路を持つ可能性が明らかになった。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度