Technical Report

染色体外DNA:CRISPR-CATCH法によるヒト染色体外DNAの標的プロファイリング

Nature Genetics 54, 11 doi: 10.1038/s41588-022-01190-0

染色体外DNA(ecDNA)は、がん遺伝子が増幅する際によく見られる形態であるが、それの解析は簡単ではない。本論文では、CRISPR-CATCH法を改良して、メガベースサイズのヒトecDNAを単離した。CRISPR-CATCH法では、in vitroでのCRISPR–Cas9法の後に、細菌の染色体断片用に開発されている、アガロースで捕捉したゲノムDNAのパルスフィールドゲル電気泳動法を行った。その結果、ヒトがん細胞ではEGFRFGFR2MYCを含んでいるecDNA分子が高度に濃縮されていること、また、治療抵抗性を獲得したヒト転移性黒色腫ではNRAS ecDNAが高度に濃縮されていることを明らかにした。ecDNAと染色体DNAに対して標的を絞って濃縮を行うと、遺伝的バリアントの相決定が可能になり、ecDNAのみにEGFRvIII変異が存在することが明らかになり、また、神経膠芽腫モデルにおいてecDNAは切り出しモデルで生じることが裏付けられた。CRISPR-CATCH法とそれに続くナノポア塩基配列決定により、一分子ecDNAのメチル化プロファイリングが可能になり、ecDNAのEGFRプロモーターが低メチル化状態であることが明らかになった。同一試料内の不均一なecDNA種をサイズと塩基配列によって塩基対分解能で識別することにより、エンハンサーないしはがん遺伝子をコードする配列を選択的に増幅する機能に特化したecDNAを発見した。

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