Article

エピジェネティクス:動的、組織特異的、対立遺伝子特異的な調節配列の長距離フェージング

Nature Genetics 54, 10 doi: 10.1038/s41588-022-01188-8

エピゲノムマップは、クロマチンの状態から遺伝子の調節配列を特定するものである。しかし、一般的なショートリードの塩基配列決定法では、対立遺伝子を効率よく区別したり、ある座位での調節配列間の相互依存性を評価したり、一分子の動態を補足したりすることができない。今回我々は、ナノポアを用いた標的化塩基配列決定法を行い、発生、免疫、インプリンティングに関連する座位にわたる最長100 kbの連続的なDNA分子のクロマチン接近性とDNAメチル化のプロファイリングを実施した。その結果、外因性のGpCメチル化に基づいて、一分子上に存在するプロモーター、エンハンサー、インスレーター、転写因子フットプリントを検出した。我々はまた、免疫座位内の動的な配列間の関係性を推定し、T細胞刺激中に起こる連続的なリモデリング事象の順序付けを行った。また我々は、H19/IGF2座位にわたり、一次配列と調節配列をフェージング(相決定)し、霊長類固有の特性を明らかにした。これらには、インプリンティング制御領域を安定化する短い重複領域と、特定の状況で両対立遺伝子性のIGF2発現を促す非カノニカルエンハンサーが含まれていた。我々の研究は、遺伝子調節の全体像をフェージングするための新たな戦略を進展させるとともに、ヒト細胞でIGF2インプリンティングを無効化する機構をも明らかにするものである。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度