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疾患遺伝学:疾患に必須の細胞タイプと細胞過程を一細胞RNA塩基配列決定法とヒト遺伝学の統合により明らかにする

Nature Genetics 54, 10 doi: 10.1038/s41588-022-01187-9

ゲノムワイド関連解析は、疾患に関与する座位や遺伝子を特定するための強力な手段となるが、多くの場合、疾患リスクをもたらす遺伝子が関与する細胞タイプや細胞状態については未知のままである。しかし、このような関係性を解き明かすことは、発病過程を明らかにし、治療法を開発する上で重要である。本研究では、一細胞RNA塩基配列決定とSNP-遺伝子のエピゲノム地図とゲノムワイド関連解析の要約統計量を統合した、遺伝的バリアントの疾患への影響の背景にある細胞タイプと細胞過程を推定する方法であるsc-linkerについて紹介する。疾患のエンリッチメントを推定した結果、既知の生物学的性質を再現し、大うつ病性障害でのGABA(γ-アミノ酪酸)作動性ニューロンや、潰瘍性大腸炎での疾患依存的M細胞プログラム、多発性硬化症での疾患特異的な補体カスケード過程といった、よく知られている細胞と疾患との関連性が浮き彫りになった。自己免疫疾患には、健康な免疫細胞タイププログラムと疾患依存的免疫細胞プログラムの両方が関連するが、上皮細胞のみ疾患依存的プログラムが顕著であり、疾患の開始よりも疾患応答での役割が示唆される。我々のsc-linkerという手法は、遺伝的バリアントが疾患に影響を及ぼす際の細胞タイプや細胞過程を明らかにする上で強力な手法となる。

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