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血液学:ヒトのクローン性造血の一細胞マルチオミクス解析からDNMT3A R882変異は選択的な低メチル化を介して初期前駆細胞状態を撹乱することが明らかになった

Nature Genetics 54, 10 doi: 10.1038/s41588-022-01179-9

がん遺伝子の体細胞変異は、ヒトの健常組織におけるクローン増殖において検出されており、それにはクローン性造血も含まれる。しかし、変異型細胞と野生型細胞が混在しているため、表現型と遺伝子型を結び付けるには技術的な制約がある。この制約を解決するために、我々はマルチモーダルな一細胞塩基配列決定法を行い、DNMT3A R882変異型クローン性造血を示す患者から採取した造血前駆細胞を用いて、その遺伝子型、トランスクリプトーム、メチロームを解析した。DNMT3A変異は、リンパ球系よりも骨髄系に偏っていて、未熟な骨髄系前駆細胞を巨核球–赤血球系の運命にプライミングし、細胞系譜マーカーと白血病幹細胞マーカーの発現調節を異常にする。変異型DNMT3Aは、ポリコーム抑制複合体2の標的と特定のCpG近傍モチーフに選択的な低メチル化を引き起こす。さらに、この低メチル化モチーフは重要な造血系転写因子の結合モチーフに多く見られ、DNMT3A変異と転写表現型異常を結び付ける機構となる可能性がある。このように、一細胞マルチオミクスは、クローンモザイク現象を引き起こす変異の下流で生じる結果を明らかにするための道を開く。

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