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脳疾患:エンハンサー発現の集団レベルでの変動からヒト脳における疾患機構が明らかになる

Nature Genetics 54, 10 doi: 10.1038/s41588-022-01170-4

神経精神疾患のリスクバリアントがエンハンサー内で見つかっており、ヒト脳でのエンハンサー機能の差異を集団レベルで理解することの重要性は明らかである。エンハンサーは、標的遺伝子の組織特異的および細胞タイプ特異的な転写を調節するが、それだけではなく、エンハンサー自体の転写もある。大規模な細胞タイプ特異的トランスクリプトームおよびレギュロームのデータをまとめて解析することで、3万795の転写されるエンハンサー(transcribed enhancer)候補がニューロンにおいて、また、2万3265の転写されるエンハンサー候補が非ニューロンにおいて見つかり、そのカタログを作成した。1382の脳試料においてトランスクリプトームを調べると、転写されるエンハンサーのロバストな発現が明らかになった。遺伝子–エンハンサーの協調を調べると、エンハンサーに結び付く遺伝子は神経精神疾患に関与することが強く示唆された。遺伝子とエンハンサーの両方の発現量的形質座位(eQTL)を探索すると、神経精神形質の遺伝率のかなりの部分をエンハンサーeQTLが仲介していることが分かった。トランスクリプトームワイド関連解析にエンハンサーeQTLを含めると、疾患座位の機能的解釈が向上した。総合的に我々の研究は、健康状態と疾患状態の両方におけるヒト皮質の遺伝子–エンハンサーレギュロームと遺伝的機構の特徴を明らかにしている。

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