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タンポポ:アポミクシス性セイヨウタンポポのPARTHENOGENESIS対立遺伝子はレタスにおいて未受精卵細胞の細胞分裂を誘導する

Nature Genetics 54, 1 doi: 10.1038/s41588-021-00984-y

減数分裂や受精を経ずにクローン種子が形成されるアポミクシスは、顕花植物においてまれではあるが広範な種に見られる形質である。我々は、アポミクシス性のセイヨウタンポポから、未受精卵の胚発生を引き起こすPARTHENOGENESISPAR)遺伝子を単離した。PAR遺伝子は、K2-2型ジンクフィンガードメインとEARドメインを持つタンパク質をコードしている。有性生殖型の劣性(潜性)対立遺伝子と異なり、優性のPAR対立遺伝子は卵細胞で発現し、プロモーター中に、トランスポゾンのminiature inverted-repeat transposable element(MITE)が挿入されている。このMITEを含むプロモーターは、有性生殖で繁殖する植物であるレタス由来のPAR相同遺伝子を発現させることができ、それによりセイヨウタンポポのLOSS OF PARTHENOGENESIS変異体(単為発生能を消失した変異体)を相補することができる。類似のMITEはアポミクシス性ヤナギタンポポのPAR遺伝子のプロモーター中にも存在し、平行進化の一例と考えられる。レタス卵細胞にセイヨウタンポポのPAR遺伝子を異種発現させると、受精することなしに半数体の胚様構造が誘導された。有性生殖型のPAR対立遺伝子は花粉で発現することから、有性生殖で繁殖する植物種では受精によってPAR遺伝子産物が卵細胞にもたらされ、卵細胞の胚発生の抑制を解除するが、アポミクシス性の植物種では卵細胞でPAR遺伝子が発現し、受精することなく胚発生が開始されると考えられる。

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