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左右対称性:ヒトおよび祖先脊椎動物における左右非対称性の割り当てに不可欠な遺伝的モジュールの発見

Nature Genetics 54, 1 doi: 10.1038/s41588-021-00970-4

脊椎動物の左右軸は、胚発生過程で一過性の器官である左右オーガナイザー(LRO)によって指定される。魚類、両生類、齧歯類、ヒトなどの種は、LRO領域に運動性繊毛が備わっており、それにより両側対称性が破られる。一方、爬虫類、鳥類、哺乳類の偶蹄目やクジラ目などの種は、LROに運動性繊毛は存在しないと考えられている。我々は、脊椎動物の進化の過程で、LROに運動性繊毛がない種で喪失した遺伝子を探索し、細胞外タンパク質をコードする5つの遺伝子を見いだした。この中にはCIROP(ciliated left–right organizer metallopeptide;繊毛性左右オーガナイザーメタロペプチド)と名付けた、これまで機能が知られていなかった推定のプロテアーゼが含まれていた。今回我々は、CIROPが運動性繊毛が存在するLROに特異的に発現していることを示す。ゼブラフィッシュやアフリカツメガエル(Xenopus)では、CIROPは左側のみに必要であり、左方向への流れの下流で作用するが、左側の最初の非対称性発現遺伝子であるDAND5に対しては、その上流で作用する。さらに、CIROPの機能喪失変異を持つ21人のヒトが劣性(潜性)の内臓位置異常を示すことが確認された。我々の知見から、脊椎動物の進化の過程で2回消失したが、ヒトにおける左右の区別に不可欠である、祖先から受け継いだ遺伝的モジュールの存在が仮定された。

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