Analysis

放射線治療:放射線治療は、がん患者の予後不良に関連した欠失シグネチャーをもたらす

Nature Genetics 53, 7 doi: 10.1038/s41588-021-00874-3

DNAに損傷を生じさせる電離放射線は、がん治療の柱となっているが、そのゲノムへの影響については十分に理解されていない。本研究では、グリオーマ縦断的解析コンソーシアム(Glioma Longitudinal Analysis Consortium)のグリオーマ190例(原発時および治療後再発時が対応するデータ)、ならびにHartwig医療財団(Hartwig Medical Foundation)の治療後転移性腫瘍3693例を対象として、放射線治療後に見られる変異のパターンを解析した。その結果、放射線治療により小規模な欠失(5~15 bp)と大規模な欠失(20 bp以上~染色体腕全体)の量が有意に増加することが明らかになった。放射線治療による小規模な欠失は、既存の欠失や放射線照射を受けていない腫瘍での欠失と比較して、サイズが少し大きく、切断点付近の短い相同塩基配列を欠き、ゲノム上でより分散して存在しているという特徴を持っていた。放射線治療後の変異シグネチャーの解析から、古典的非相同末端結合を介したDNA損傷修復およびAPOBECによる変異誘発の関与が考えられた。放射線照射に伴う欠失の量の増加は、臨床転帰の不良と関連しており、放射線によって生じたDNA損傷の効率的な修復が行われることが、患者の生存率に有害な影響を及ぼしていることが示唆される。これらの結果は、再発がんの放射線治療に対する感受性を予測するために利用できる可能性がある。

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