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スプライシング:マイナーイントロンの残存はクローン性造血障害と多様ながんの原因となる

Nature Genetics 53, 5 doi: 10.1038/s41588-021-00828-9

ほとんどの真核生物は、2つの異なるpre-mRNAスプライシング機構を備えている。すなわち、99%以上のイントロンを除去するメジャースプライソソームと、進化的に保存されたまれなイントロンを除去するマイナースプライソソームである。マイナースプライソソームは重要な調節機能を担っていると考えられているが、その生理学的役割についてはよく分かっていない。例えば、マイナースプライソソームの構成因子であるZRSR2には、白血病に関連する変異が高頻度に認められるが、マイナーイントロン、造血、がんの間の機能的な関連については不明である。今回我々は、ZRSR2の喪失によってpre-mRNAからマイナーイントロンが除去できないと、造血幹細胞の自己複製が亢進することを見いだした。マイナーイントロンを含有するmRNAのナンセンス変異依存分解機構を模倣したCRISPRスクリーニングの結果、RAS関連GTPaseを負に制御するLZTR1を重要な標的遺伝子として同定した。LZTR1のマイナーイントロンの残存は、スプライシング異常を惹起するイントロン変異に起因する代表的なRAS病の1つであるヌーナン症候群や、さまざまな固形腫瘍でも検出された。これらのデータは、マイナーイントロンの正確な識別が造血調節因子となることや、マイナーイントロン内の非コード領域の変異が潜在的な発がん誘導因子となることを示しており、ZRSR2変異とLZTR1の制御、白血病の関連を証明するものである。

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