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クロマチン構造:ショウジョウバエの初期発生過程では、シス調節性のクロマチンループは、TADおよび遺伝子活性化の前に生じ、細胞運命には非依存的である

Nature Genetics 53, 4 doi: 10.1038/s41588-021-00816-z

細胞運命の決定は、例えば、エンハンサーと標的プロモーターなど、離れたシス調節性モジュール(CRM)の特異的な相互作用に依存すると考えられている。しかし、クロマチン構造と遺伝子発現との間の詳細な相互作用については、特に発生中の多細胞生物では、いまだ明らかになっていない。今回我々は、単一細胞空間ゲノミクス手法であるHi-Mを用いて、ショウジョウバエ(Drosophila)の初期発生過程において、トポロジカルドメイン(TAD)内で見られるCRM–プロモーターのループ形成に基づく相互作用の検出を行った。別のタイプの細胞におけるシス調節性ループと比較すると、物理的な近さが必ずしも転写状態を指示するわけではないことが分かった。また、多元的な解析により、複数のCRMが空間的に集まってハブを形成していることが明らかになった。ループとCRMハブは、発生過程の初期に、TADが出現するよりも以前に確立される。さらに、CRMハブの形成には、パイオニア転写因子Zeldaの作用がある程度関与すること、その形成は転写活性化より先に生じることが分かった。我々の手法によって、転写状態に加え、異なる細胞タイプの決定におけるCRM–プロモーターの相互作用の役割についての理解が深まった。

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