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感染症:TMEM106BがSARS-CoV-2に対するプロウイルス宿主因子であることがゲノムワイドCRISPRスクリーニングから明らかになった

Nature Genetics 53, 4 doi: 10.1038/s41588-021-00805-2

現在進行中の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック(世界的大流行)は、経済と健康に対する世界的な危機を引き起こしている。コロナウイルス感染に不可欠な宿主因子を見つけるために、我々は重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)とヒトコロナウイルス229Eを用いて、ゲノムワイドの機能遺伝学スクリーニングを行った。これらのスクリーニングにより、ウイルス固有の宿主因子に加えて、TMEM41BやクラスIII型PI3Kなどの、ウイルス間に共通する宿主因子が見つかった。さらに我々は、SARS-CoV-2がヒトの細胞株や初代肺細胞に感染するには、リソソームタンパク質TMEM106Bが必要であることを明らかにした。TMEM106Bの過剰発現は、SARS-CoV-2の感染だけでなく、偽ウイルスの感染をも亢進したため、TMEM106Bはウイルスの侵入に役割を担っていると考えられる。また、COVID-19患者の気道細胞の単一細胞RNA塩基配列決定法では、TMEM106Bの発現はSARS-CoV-2感染と相関することも分かった。本研究によって、コロナウイルスに対する一連の宿主因子が明らかになり、これらはSARS-CoV-2の感染や、人獣共通感染するコロナウイルスによる将来的なアウトブレイク(集団発生)に対する薬剤開発に利用できる可能性がある。

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