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がん免疫:患者モデルにおけるマルチモーダルなPerturb-CITE-seqプール型スクリーニングからがんの免疫回避機構が明らかになる

Nature Genetics 53, 3 doi: 10.1038/s41588-021-00779-1

免疫チェックポイント阻害剤(ICI)に対する抵抗性は、がん治療において解決しなければならない重要な課題である。この原因となる機構を解明するために、我々はPerturb-CITE配列決定法(Perturb-CITE-seq)を開発し、それにより、プール型CRISPR(clustered regularly interspaced short palindromic repeat)–Cas9かく乱の下で、単一細胞でのトランスクリプトームやタンパク質の読み出しを行うことを可能にした。我々は、患者由来の黒色腫細胞と自家の腫瘍浸潤リンパ球(TIL)の共培養において、がん細胞に固有のICI抵抗性(ICR)に関連する約750のかく乱の下で、約21万8000個の細胞のトランスクリプトームと20のタンパク質のプロファイリングを行った。我々は、RNA、タンパク質、かく乱空間におけるインターフェロンγ(IFN-γ)–JAK/STAT経路や抗原提示経路の異常などの既知の抵抗性機構と、CD58の喪失/発現低下などの新しい機構を復元した。CD58の喪失によって、複数の共培養モデルでは免疫回避が引き起こされ、ICRの黒色腫患者の腫瘍ではCD58の発現低下が引き起こされた。CD58タンパク質の発現はIFN-γシグナル伝達では誘導されず、CD58の喪失は主要組織適合遺伝子複合体(MHC)の発現を低下させることなく免疫回避を引き起こしたことから、新たに見いだされた機構はICRの既知の機構と直交して機能することが示唆された。この研究は、マルチモーダルな、単一細胞での読み出しを用いる大規模なかく乱スクリーニングによって複雑な機構を解読するための枠組みとなり、また、臨床に関係し得る免疫回避機構を見いだすものである。

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