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エピジェネティクス:BAFの急激なかく乱によりクロマチン接近可能性の速やかな変化が引き起こされる

Nature Genetics 53, 3 doi: 10.1038/s41588-021-00777-3

BAF(BRG1/BRM-associated factor)クロマチンリモデリング複合体サブユニットをコードする遺伝子で、がんに関連した機能喪失変異が起こると、クロマチン接近可能性の劇的な変化が引き起こされることが多く、重要な調節領域で特に顕著である。しかし、これらの変化が時間経過(例えば、速やかな効果や長期的な適応)とともに確立される仕組みや、それらが複合体内合成致死の原因となるかどうか、また、BAF複合体の形成や活性を阻害するかどうかは不明である。本研究で我々は、dTAGシステムを用いてBAFサブユニットの急激な分解を誘導し、クロマチン変化が1回の細胞周期の長さよりも速く確立されることを明らかにした。我々は、BAF複合体のATPアーゼサブユニットに対する薬理学的阻害剤や化学的分解誘導剤を用いることにより、ゲノム接近可能性の維持には、持続的なATP依存的リモデリングが必要であることを示す。パラログを欠損させた遺伝的背景で、合成致死サブユニットの急激な分解によりBAF複合体機能を完全に消失させると、BAFが制御する部位で(特にスーパーエンハンサーにおいて)クロマチン接近可能性がほぼ完全に失われたことから、複合体内合成致死が起こる機構が明らかになった。

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