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がん:生殖細胞系列の病因性は腫瘍形成に状況特異的な役割を持つ

Nature Genetics 53, 11 doi: 10.1038/s41588-021-00949-1

ヒトのがんは、環境の要因、遺伝的に受け継いだ要因、体細胞性の要因によって生じるが、これらの要因が腫瘍形成においてどのように相互作用するかはほとんど分かっていない。本論文では、がん患者1万7152人の塩基配列を前向きに解析することで、がんの素因遺伝子において生殖細胞系列の病的バリアントを特定するとともに、付随する腫瘍において生殖細胞系列バリアントの接合性、および同時に生じている体細胞変化を調べた。その結果、腫瘍形成に向かう主要な2つの道筋が明らかになった。生殖細胞系列の病的バリアントが浸透率の高い遺伝子(全体の5.1%)に存在する患者の場合、細胞系譜依存性の両対立遺伝子不活化パターンにより、腫瘍は機構特異的な体細胞表現型を示し、体細胞性発がんドライバーがさらに存在することは少なかった。しかし、これらの患者のがんの27%と、生殖細胞系列の病的バリアントが浸透率の低い遺伝子に存在する患者の腫瘍のほとんどでは、生殖細胞系列対立遺伝子に関連する腫瘍形成の特徴は特に見つからなかった。生殖細胞系列の病的バリアントへの腫瘍の依存性はさまざまであり、浸透率と細胞系譜の両方によって決定されることが多く、本研究の知見は臨床管理に役立つものである。

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