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コヒーシン:WAPLはコヒーシンのローディングサイクルを維持して、細胞タイプ特異的な遠位遺伝子調節を保つ

Nature Genetics 53, 1 doi: 10.1038/s41588-020-00744-4

コヒーシン複合体は、ゲノムの高次構造を維持する上で必須の役割を担っている。しかし、遺伝子調節におけるこの複合体の役割はほとんど分かっていない。今回我々は、コヒーシン解離因子WAPLが、コヒーシンターンオーバーとして知られる過程で遊離コヒーシンのプールを作り出し、それを細胞タイプ特異的な結合部位に再ローディングすることを報告する。しかし逆説的に、WAPL除去後のコヒーシン結合の安定化は、これらの細胞特異的領域からのコヒーシンの枯渇、遺伝子発現の欠失、分化を引き起こした。3C(chromosome conformation capture)実験を行ったところ、プロモーター–エンハンサーループを維持するためにコヒーシンのターンオーバーが重要であることが明らかになった。細胞特異的部位へのコヒーシンの結合は、パイオニア転写因子OCT4(POU5F1)とSOX2に依存するが、NANOGには依存しない。我々は、転写制御におけるコヒーシンターンオーバーの重要性を示し、コヒーシンの静的な結合状態ではなく、コヒーシンローディングのオンオフサイクルが、遺伝子調節に重要なプロモーターとエンハンサーの相互作用を仲介していると提唱する。

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