Analysis

がん/超変異:DNAミスマッチ修復はヒトがんにおいてAPOBEC3が仲介する広範な超変異(diffuse hypermutation)を促進する

Nature Genetics 52, 9 doi: 10.1038/s41588-020-0674-6

APOBEC3(A3)シトシンデアミナーゼ酵素などの特定の変異原は、単一の事象で多数の遺伝的変化を引き起こすことができる。A3の活性によって、顕著な「変異シャワー」がDNA切断点の近くに生じる。しかし、A3による変異の大部分の原因となる機構についてはよく分かっていない。本論文では、腫瘍ゲノムにクラスターとして生じる変異の多様なパターンを分類し、これによってA3による新しい変異パターンである非反復性で広範な超変異、omikliを特定した。この機構は、既知の局所的な超変異(カタエギス)とは独立に起こり、A3が必要とする一本鎖DNA基質を供給できるDNAミスマッチ修復経路の活性に関連していて、A3によるゲノム規模の変異のかなりの割合に関与している。ミスマッチ修復は、早期に複製する、遺伝子が豊富な染色体ドメインに向けられているため、A3による変異誘発は、影響の大きい変異を生じる傾向が高く、タバコの煙や紫外線曝露などの他の一般的な発がん物質の変異の影響を上回るものである。細胞はより重要なゲノム領域にDNA修復能を向けるので、そのDNA修復を破壊する発がん物質は非常に強力な影響を与える可能性がある。

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