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胃がん:エプスタイン・バーウイルス陽性胃がんにおける種間クロマチン相互作用が誘導する転写再構成

Nature Genetics 52, 9 doi: 10.1038/s41588-020-0665-7

エプスタイン・バーウイルス(EBV)は、胃がんの8~10%をはじめいくつかのヒト悪性腫瘍と関連することが知られる。本研究では、胃がん細胞株、臨床胃がん組織検体、正常胃細胞における三次元クロマチン形態のゲノムワイド解析を行い、ヘテロクロマチンからユークロマチンへの転換と、ヒトゲノム–EBVエピソーム間での長距離相互作用を呈する、EBV陽性胃がんに特徴的なクロマチン領域を同定した。in vitroでの胃細胞へのEBV感染実験により、EBVと相互作用する宿主ゲノム領域のクロマチンの形態と機能は再現され、すなわちH3K9me3+状態のヘテロクロマチンはH3K4me1+/H3K27ac+の二価の活性化状態に転換し、ヘテロクロマチン内で休眠していたエンハンサーが開放されることで近傍の胃がん関連遺伝子群(例えばTGFBR2MZT1など)が活性化されることが確認された。このように、EBV陽性胃がんの高次エピゲノム構造の解析により、宿主ゲノムに組み込まれていないウイルスゲノムが宿主ゲノムのエピゲノム状態を直接変化させてがん原遺伝子の活性化と腫瘍形成を促進する、という新しい発がん様式(「エンハンサー侵襲」)が示された。

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