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白血病:T細胞性急性リンパ芽球性白血病におけるクロマチン三次元構造の全体像

Nature Genetics 52, 4 doi: 10.1038/s41588-020-0602-9

クロマチンの三次元(3D)構造の差異は、TAD(topologically associating domain)の完全性に影響を与えることがあり、それにより特定のエンハンサー–プロモーター相互作用の経路が再配線され、遺伝子発現に影響を及ぼしてヒト疾患をもたらすようになる。本論文では、ヒトの原発性白血病標本を用いた解析により、T細胞性急性リンパ芽球性白血病(T-ALL)におけるクロマチンの3D構造を明らかにし、この構造の薬剤に対する動的応答を調べたので報告する。in situ Hi-C、RNA-seq、CTCF ChIP-seqの対応するデータセットを体系的にまとめて、T-ALLではTAD内クロマチン相互作用やTAD境界のインスレーター作用が正常なT細胞とは広範囲にわたって異なっていることを明らかにした。我々はさらに、CTCFによるインスレーター作用の欠如を伴うTAD「融合」事象を同定し、これによってMYCプロモーターと遠位のスーパーエンハンサー間の直接的な相互作用が可能になることを見いだした。さらに、我々のデータから、発がん性シグナル伝達あるいはエピジェネティックな調節のいずれかを標的とする低分子阻害剤が、白血病に見られる特定の3D相互作用を変化させ得ることを実証した。まとめると、ヒト急性白血病におけるクロマチンの3D構造の影響、複雑性、動的な性質が本研究により明らかになった。

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