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薬剤抵抗性:拮抗的多面性を利用して、がんにおける薬剤抵抗性を標的とした化学療法誘導性の進化的トラップを設計する

Nature Genetics 52, 4 doi: 10.1038/s41588-020-0590-9

局所的な適応によって正の選択を受けた形質が獲得されると、集団は、環境特異的な適応度の最大値を示す方向に進む。しかし、環境変化が急速な場合、適応を不適応へ変える隠れた適応度トレードオフが存在することがあり、進化的トラップと呼ばれる結果がもたらされ得る。がんは薬剤抵抗性を獲得しやすい疾患であり、原理的にはこのようなトラップの影響を受けやすい。そこで我々は、さまざまな化学療法が行われた急性骨髄性白血病(AML)細胞において、プールしたCRISPR–Cas9ノックアウトスクリーニングを行い、適応度トレードオフに関する薬剤依存的な遺伝学的基盤のマッピングを行った。この適応度トレードオフは、拮抗的多面性(AP)として知られる概念である。我々は、PRC2–NSD2/3を介したMYC調節軸が、薬剤により誘導されるAP経路であることを見いだした。この経路は、ブロモドメイン阻害剤に対する抵抗性とBCL-2阻害剤への感受性を付与することができ、進化的トラップの枠組みを形成し得る。我々は、さまざまなAML細胞株や患者由来異種移植片モデルを用いた解析により、この経路を介したブロモドメイン阻害剤への抵抗性の獲得は、同時にBCL-2阻害に対する過感受性を生じさせることを見いだした。このように、薬剤によって誘導されるAPを利用すれば、がんにおける薬剤抵抗性を選択的に標的とする進化的トラップを設計できる。

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