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サイレンサー:クロマチン相互作用解析で明らかになった、マウス発生におけるPRC2結合サイレンサーの役割

Nature Genetics 52, 3 doi: 10.1038/s41588-020-0581-x

動物の発生では、細胞系譜特異的な遺伝子発現が転写の活性化と抑制のバランスによって調整されている。エンハンサーを中心とした転写活性化に関しては、かなり進んだ知見が得られているが、サイレンサーやそれらの正常発生における役割については、まだあまり分かっていない。今回我々は、遺伝子の転写サイレンシングの主要誘導因子であるポリコーム抑制複合体2(PRC2)に対するクロマチン相互作用解析を行い、サイレンサーや、それらの分子的アイデンティティー、関連するクロマチンの接続性を明らかにした。シス調節サイレンサー配列の体系的解析から、それらのクロマチン特性と遺伝子標的化特異性が明らかになった。マウスで特定のPRC2結合サイレンサーを欠失させると、それらと相互作用する遺伝子の転写の脱抑制が起こり、胚致死を含む多面的な発生表現型を示した。一部のPRC2結合配列は多能性細胞においてサイレンサーとして機能しているが、発生の間に活性型の組織特異的なエンハンサーに移行することが可能であり、それらの調節性が持つ多用途性が浮き彫りになった。我々の研究は、サイレンサーの分子的プロファイルとそれに伴うクロマチン構造が持つ特性を明らかにし、エピジェネティックなサイレンシングを受ける遺伝子を標的化して再活性化する可能性をも示唆している。

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