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がん種横断的全ゲノム解析:ヒトがんのウイルスとの関連性の全体像

Nature Genetics 52, 3 doi: 10.1038/s41588-019-0558-9

本論文では、がん種横断的全ゲノム解析(PCAWG:Pan-Cancer Analysis of Whole Genomes)コンソーシアムの一環として、38種類の腫瘍にわたる2658例のがんの全ゲノムおよび(その一部についての)全トランスクリプトームの塩基配列決定データを集約し、3つの独立したパイプラインを統合したコンセンサス法を用いて、ウイルス病原体の候補を体系的に調べた。その結果、382のゲノムと68のトランスクリプトームのデータセットにウイルスが検出された。ウイルスとしては、エプスタイン・バーウイルス(EBV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、ヒトパピローマウイルス(HPV、例えばHPV16あるいはHPV18)などの既知の腫瘍関連ウイルスの保有率が高いことが分かった。この研究から、頭頸部がんにおいてはHPVとドライバー変異の間に有意な排他性が見られること、またHPVとAPOBEC変異シグネチャーとの間に関連があることが明らかになった。これは、抗ウイルス防御の障害が、子宮頸がん、膀胱がん、頭頸部がんの発がんを促進する要因の1つであることを示唆している。HBV、HPV16、HPV18、アデノ随伴ウイルス-2(AAV2)では、ウイルスの組込みはゲノムコピー数の局所的変動と関連があった。TERTプロモーターでの組込みは、テロメラーゼの高発現と関連していて、明らかにこの発がん過程を活性化する。内因性レトロウイルス(ERV1)の高レベル発現は、腎がん患者の生存転帰の不良と関連していた。

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