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ハンチントン病:スリップしたCAGを標的とするDNA結合低分子はin vivoにおいて3塩基リピートの短縮を誘導する

Nature Genetics 52, 2 doi: 10.1038/s41588-019-0575-8

ハンチントン病(HD)などのリピート病の多くでは、罹患組織で反復配列(リピート)の伸長が進むことが病気の発症、進行、重症度に関わっている。外因性に伸長した反復配列の短縮を誘導することは、いまだ可能ではない。従来の手法では、反復配列伸長変異を引き起こすタンパク質が標的とされていた。本論文では、これまで考慮されていなかった標的であり、伸長変異の原因となるCAGスリップDNA構造に特異的に結合する化合物、ナフチリジン-アザキノロン(NA)を報告する。NAは、HD患者細胞における反復配列短縮を効果的に誘導するだけでなく、HDマウス脳線条体の中型有棘ニューロンにおける異常伸長反復配列を全体的に短縮した。反復配列の短縮は変異遺伝子に特異的に誘導され、DNA複製過程には依存せず、CAG反復配列の転写とその過程で生じるCAGスリップDNA構造の修復を抑制することに起因する。NAによって誘導される反復配列の短縮は、MutSβによって引き起こされる活発なリピート長変動機構に依存していた。HDマウス脳線条体へのNA注入により、HDの病因および重症度のバイオマーカーである、変異型HTTタンパク質凝集体が減少した。反復配列がとるDNA構造に特異的に結合する、NAのようなリガンドは、伸長した反復配列を短縮させる新しい手段となる。

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