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膵腺がん:膵腺がんの転写表現型は腫瘍進化の際のゲノム事象によって引き起こされる

Nature Genetics 52, 2 doi: 10.1038/s41588-019-0566-9

膵腺がんは極めて進行の速いがんで、患者における治療応答性などは多様性を示す。膵腺がんは、腫瘍細胞充実度が乏しく、広範なゲノム不安定性を示すために、その不均一性の基盤は解明が難しいことが分かっている。解明に取り組むために、原発腫瘍および転移腫瘍の腫瘍上皮を単離することで、全ゲノムおよび全トランスクリプトームのデータセットを作成した。トランスクリプトーム解析により、分子サブタイプが、腫瘍内に亜細胞集団が混在することで引き起こされる、連続的な遺伝子発現の結果であることが実証され、一細胞解析により確認された。統合全ゲノム解析から、分子サブタイプがKRAS変異体やGATA6などの遺伝子の特定のコピー数異常に結び付くことが明らかになった。腫瘍の遺伝学的履歴をマッピングすることで、四倍体化がこれらの事象の背景となる重要な変異過程であることが分かった。総合的にこれらのデータは、腫瘍に含まれるゲノム異常の集合が分子サブタイプを引き起こし、また、プログレッションの際に進行中のゲノム不安定性によって、腫瘍の不均一性が生じるという仮定を裏付けている。

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