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乳がん:ARID1Aは管腔のアイデンティティーとエストロゲン受容体陽性乳がんにおける治療応答を決定する

Nature Genetics 52, 2 doi: 10.1038/s41588-019-0554-0

SWI/SNFクロマチンリモデリング複合体のサブユニットであるARID1Aの変異は、エストロゲン受容体陽性(ER+)の乳がんで最も多く見られるSWI/SNF複合体の変異である。今回我々は、ARID1A不活性化変異が、進行した内分泌抵抗性ER+乳がんにおいて高頻度に存在することを明らかにした。エピゲノムCRISPR–CAS9ノックアウト(KO)スクリーニングによって、ER分解薬フルベストラントへの抵抗性に及ぼすノックアウトの影響を調べると、ARID1Aが最上位候補に位置することが分かった。ARID1Aが不活性化した細胞や患者では、ER依存的な管腔細胞からER非依存的な基底細胞様細胞への転換が促進され、ER分解薬に対する抵抗性が生じる。細胞の可塑性は、管腔細胞系譜を決定する転写因子〔ER、FOXA1(forkhead box protein A1)、GATA3(GATA-binding factor 3)〕のゲノム部位への、ARID1A依存的なSWI/SNF複合体の標的化が失われるために起こる。ARID1Aはまた、ゲノム規模でER–FOXA1クロマチン相互作用とER依存的転写も調節する。以上の結果は、管腔細胞のアイデンティティーの維持と、ER+乳がんの内分泌療法応答に対して、ARID1Aが果たす重要な役割を明らかにしている。

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