Perspective

エピジェネティクス:転写調節におけるヒストン修飾酵素とそれらに伴うクロマチン修飾の役割の再評価

Nature Genetics 52, 12 doi: 10.1038/s41588-020-00736-4

ヒストン修飾酵素は、遺伝子発現をはじめとする、DNAを鋳型とする多様な過程の制御に関与する。今回我々は、ヒストン修飾およびそれらと関連する酵素について、歴史的な考え方と現在の考え方の違いを概説する。主に相関性に基づく証拠に基礎を置く現在の観点の1つでは、ヒストン修飾は転写調節に対して指示的な役割を持ち、エピジェネティック「コード」を意味するとする。しかし最近の研究では、このモデルに対する疑問が提示されており、これまでは活性型の遺伝子と関連するとされていたヒストン標識が、転写活性化に直接的には結び付かないことが示唆されている。また、多くのヒストン修飾タンパク質は、酵素としての活性だけでなく、非触媒的機能も持っている。これらのタンパク質の機能に不明な点がまだ多いことを考えると、この分野の研究で機能喪失表現型を解釈する際には注意が必要であり、細胞や発生の状況についても考慮する必要がある。このPerspectiveでは、Trithorax–COMPASS複合体、ポリコーム抑制複合体、Clr4/Suv39ヒストン修飾機構について、触媒的機能と非触媒的機能に関する最近の進展に焦点を合わせる。

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