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エピジェネティクス:NSD1により蓄積したH3K36me2は雄マウスの生殖細胞系列でde novoメチル化を指示し、ポリコームに関連したサイレンシングを打ち消す

Nature Genetics 52, 10 doi: 10.1038/s41588-020-0689-z

哺乳類の生殖細胞におけるde novoのDNAメチル化(DNAme)は、DNMT3AとDNMT3Lに依存している。しかし、卵母細胞と精子ではDNAmeのパターンが異なる。マウス卵母細胞でのde novoのDNAmeには、リシンメチルトランスフェラーゼ(KMTアーゼ)であるSETD2が必要であり、SETD2はH3K36me3を蓄積させる。今回我々は、雄の生殖細胞系列でのde novoのDNAmeには、SETD2が必要とされないことを示す。その代わりに、H3K36me2をユークロマチン領域に広く蓄積させるリシンメチルトランスフェラーゼNSD1が、前精原細胞においてインプリンティングされた遺伝子などで、de novoのDNAmeに必須の役割を担っていることが分かった。しかし、生殖細胞系列でNSD1を欠損した雄では、Dnmt3l−/−の雄よりも精子形成に重篤な異常が見られた。DNMT3Lとは異なり、NSD1はH3K27me3関連の転写サイレンシングから遺伝子サブセットを保護していることが明らかになった。一方、卵母細胞でのH3K36me2は、SETD2に主に依存し、H3K36me3と共存する。また、NSD1を欠損した卵母細胞を持つ雌には妊性があった。すなわち、成熟したマウスの配偶子における性的二型パターンは、H3K36メチル化の異なるプロファイルにより調整されている。

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