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エピジェネティクス:原腸形成のエピゲノム解析から明らかにされたプライム型多能性に特有なクロマチン状態

Nature Genetics 52, 1 doi: 10.1038/s41588-019-0545-1

着床前後の時期には、胚盤葉上層(Epi)がナイーブ型からプライム型の多能性に移行して、その後に3つの胚葉が生じる。この発生期間中にクロマチンが再構成される仕組みはほとんど解明されていない。本論文では、この期間中のクロマチンの全体像を知るため、ゲノムワイドな調査を行った。その結果、外胚葉におけるエンハンサーは、Epi細胞がプライム型多能性状態に入る6.5日齢胚(E6.5)Epiで既に接近可能になっていることが判明した。意外なことに、E6.5 Epiの発生遺伝子のプロモーターにおいては、ヒストンH3リシン4のトリメチル化(H3K4me3)が強く見られ、これはH3K27me3と正に相関することから、バイバレント修飾が確立されていたことになる。また、これらの遺伝子では空間的相互作用の増強も見られた。このような強力なバイバレント修飾と空間的クラスターはともに、着床前胚ではほとんど存在せず、また、運命拘束された細胞系譜では顕著に低下している。さらに、E6.5におけるバイバレントなH3K4me3の確立にはKMT2Bが不可欠であるが、後には部分的に不必要になることが分かった。Kmt2bの欠損は、発生遺伝子の活性化障害と、それに続く胚致死につながった。従って、我々のデータから、細胞系譜特異的なクロマチン再構成と、プライム型多能性に見られる独特なクロマチン状態の特徴が明らかになった。

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