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心疾患:ADAMTS19の喪失は進行性の無症候性心臓弁膜症の原因となる

Nature Genetics 52, 1 doi: 10.1038/s41588-019-0536-2

心臓弁膜症は人口の約2%に認められる。多くの場合、診断時の病変は限局的であるが(例えば、大動脈弁または僧帽弁)、通常はその他の弁にも病変が波及し、手術が必要となることが多い。その有病率の高さにもかかわらず、これまでに心臓弁膜症の単一原因遺伝子として同定されたものはわずかである。本研究では、進行性の心臓弁膜症の診断を幼少期に受けた罹患者をそれぞれ2人ずつ含む、2組の近親婚家族について検討を行った。全エキソーム塩基配列決定により、4人の罹患者全員がADAMTS19の短縮型ナンセンス対立遺伝子をホモ接合で有していることが判明した。そこで、Adamts19のホモ接合型ノックアウトマウスを作製したところ、ヒトでの表現型と類似の大動脈弁機能不全を呈することが確認された。さらに、lacZレポーターを使用した発現解析および1細胞RNA-seq解析により、Adamts19を弁間質細胞の新規マーカーとして利用できることが示された。弁間質細胞における遺伝子調節ネットワーク解析の結果、Adamts19は、Wntシグナル伝達経路の下流転写因子であるリンパ系エンハンサー結合因子1によって駆動される、特定のネットワークに位置していることが分かった。Adamts19ノックアウトマウスの心内膜では、Krüppel様因子2の発現亢進が認められた。これは血行動態的変化に先行する現象であり、弁の正常な成熟と維持のためにはWnt–Adamts19–Klf2軸の厳密なバランスが必要であることが示された。

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