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クロマチン:BAF変異の体系的な特性解析によって明らかになったヒトがんにおける複合体内合成致死についての知見

Nature Genetics 51, 9 doi: 10.1038/s41588-019-0477-9

BAF(BRG1/BRM associated factor)クロマチンリモデリング複合体のサブユニットをコードする遺伝子の異常は、ヒトがんにおいて非常によく見られる。大部分は機能喪失型であるこれらの変異が、どのようにがんの発生に関与するのか、またそれらがどのような治療標的になり得るのかは、これまでのところ明らかになっていない。特定のサブユニットの変異発生パターンががんタイプ特異的に見られることから、BAF複合体の機能にサブユニット特異的な影響が起こったことが示唆され、その結果、異常な複合体が形成されたのではないかと考えられる。今回我々は、BAFサブユニット22種類について、サブユニットを1つずつ欠失させたノックアウト細胞株のパネルを作り、複合体構成やクロマチン接近性、遺伝子発現に対する各サブユニット喪失の影響を体系的に調べた。サブユニットの喪失により、標的サブユニットに依存した強力かつ特異的な変化が観察されたが、変化は一様でないこともあり、これらはSMARCA4–ARID2、SMARCA4–ACTB、SMARCC1–SMARCC2の合成致死相互作用をはじめとする複合体内の共依存関係の存在を示していることを明らかにする。これらのデータは、ゲノム規模のクロマチン構造に対するBAFのいろいろなサブユニットの影響についての知見をもたらし、BAF変異がんを治療標的とするための戦略を示唆するものである。

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