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トポロジカルドメイン:1細胞全ゲノムでのDNA複製プロファイリングから発生過程における染色体構造の時空間的な動態が明らかになる

Nature Genetics 51, 9 doi: 10.1038/s41588-019-0474-z

哺乳類細胞の染色体は、TAD(topologically associating domain:トポロジカルドメイン)と呼ばれるメガベース(100万塩基対)サイズのドメインに区分されている。TADは、A(活性型)かB(不活性型)いずれかの核内コンパートメントに存在しうる。Aコンパートメントは複製タイミング(RT)が早い領域であり、BコンパートメントはRTが遅い領域である。本論文ではまず、マウス胚性幹細胞(mESC)の分化過程において、A/Bコンパートメントが、ゲノム全域にわたってRT変化に合わせて協調的に変化していることを示した。AからBへのコンパートメント変化とS期前半から後半へのRT変化は時間的に分離できなかった一方、BからAへのコンパートメント変化は、S期後半から前半へのRT変化および転写活性化に明らかに先行して起きていた。コンパートメント変化は主に境界の移行によって生じており、A/Bコンパートメントの境界に面しているTADのコンパートメント分布を変化させた。このような変化の様式は、体細胞リプログラミング(初期化)の際にも保存されており、個々の細胞においても同様であることがscRepli-seq(single-cell DNA Replication sequencing)法により確認された。また、分化中のmESCは徐々に、しかし一様にscRepli-seqプロファイルを変化させており、一過的に胚盤葉上層由来幹細胞(EpiSC)のRTプロファイルに類似したことから、A/Bコンパートメントも、徐々に、しかし一様にプライム型多能性状態に向かって変化する可能性が考えられた。これらの結果は、分化過程の個々の細胞で、染色体構造がメガベース規模でどのように変化するかについての洞察をもたらすものである。

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