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自閉症:自閉スペクトラム症における劣性遺伝子破壊

Nature Genetics 51, 7 doi: 10.1038/s41588-019-0433-8

自閉スペクトラム症(ASD)の発症率は、59人中1人に上る。ゲノムワイド関連解析や大規模な塩基配列解読研究は、ありふれたバリアントと、まれなde novoバリアントの両方がASDに関与することを強く示唆している。他に、劣性(潜性)変異の関与も考えられているものの、その実際についてはあまり分かっていない。今回我々は、ASDの大規模コホートにおいて、両対立遺伝子機能喪失変異や遺伝子機能を損傷するミスセンス変異が過多に見られ、全症例に対する関与率は約5%であることを明らかにした。女性に限ると10%になり、これは女性における保護効果の知見と合致する結果である。神経発達に関わる既知と新規の劣性遺伝子(CA2DDHD1NSUN2PAHRARBROGDISLC1A1USH2A)の両対立遺伝子破壊に加えて、セロトニン作動性回路の主要調節因子であるFEV(ETSファミリーメンバーのFEV転写因子)をはじめとする、これまでにASDへの関与が知られていなかった遺伝子についても明らかになった。我々のデータは、ASDに対する劣性変異の関与についての推定の精度を改善し、この疾患の原因となる、これまで不明だった生物学的経路の解明につながる新たな道筋を示唆している。

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