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赤カビ病:ヒスチジンリッチカルシウム結合タンパク質の変異がコムギに赤カビ病耐性を付与する

Nature Genetics 51, 7 doi: 10.1038/s41588-019-0426-7

赤カビ病は主にフザリウム属(Fusarium)の菌類により発生し、ほぼ全ての主要栽培穀物(特にコムギ)に対し壊滅的な被害を与え、甚大な経済的損害を発生させるとともに、ヒトにも家畜にも健康被害を生じさせる可能性がある。これに対して、高度な耐性を有する栽培品種の育種はまだ満足のいく結果が得られていない。本論文で我々は、コムギへの赤カビ病耐性の付与に対する主効果QTL(量的形質座位)であるQfhs.njau-3Bを単離し、この座位がすでに命名されている座位Fhb1と同じものであることを示した。Fhb1は、3BS染色体に座乗するヒスチジンリッチカルシウム結合タンパク質遺伝子の3′側エクソンを含む領域のまれな欠失により生じたものである。Fhb1配列を用いて形質転換したコムギやArabidopsisは、共にフザリウム菌Fusarium graminearum感染の広がりに対する抵抗性の上昇を示した。この遺伝子のホモログの翻訳産物はさまざまな植物間でよく保存されており、植物の成長に必須である可能性がある。Fhb1は栽培穀物での赤カビ病の発生の抑制に有用であるばかりでなく、フザリウム属の菌類に対する抵抗性が低い他の植物の品種改良にも役立つであろう。

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